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2章 幼女な神様と2人旅
25.今日のところは撒いたんだが……
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「なに!?取り逃しただと!!何をしてるんだ!」
報告を受けた公爵は護衛達を問い詰める。
「人混みを抜けた瞬間に男が幼女を抱えて走り出したのですが、信じられない速度でした。誰も追いつくことが出来ず、見失いました……」
「護衛の中には、スピードに特化した奴もいたんじゃないのか?例えばハンネスは居なかったのか?」
名前を挙げられたハンネスは一歩前進して進言する。
「俺も全く追いつけませんでした。それに、あの男は身体強化をしていなかったと思われます……」
「「なんだと……!!」」
ハンネスの言葉に公爵だけでなく、護衛達も騒つく。
「つまり、お前たちは身体強化を施していない、生身の人間に追いつけなかったという事なのか?」
「恥ずかしながら……」
「だが、お前たちの能力は近衛隊隊長のお墨付きだ。あの愚民が只者ではなかったと言うことか……この会場にいた事も鑑みるに他国の間者である可能性もなくはない。一応、国中の貴族にその旨を通達して情報を集めろ」
「はっ!」
護衛の一人が命令を受けてその場を後にした。
「あの者が何者であっても、私をコケにした事は許されない……いつか必ず目にモノ見せてやるぞ……!」
そんな公爵の呟きは、近くにいた護衛たちにも届かなかった。
☆
追手を撒いた後、オレ達は『安らぎ荘』に戻ってきた。
抱えていたスヴィエートを地面に降ろして、建物に入る。
「お帰りなさい!」
入るとすぐに、レティシアが出迎えてくれた。
「帰ってくるタイミングバッチリですね!お食事がもうすぐ出来ますよ」
「そうなのか?結構、遅い時間になったつもりだったんだが」
そう言いながら時計を見ると、夕飯時はとっくに過ぎて、寝ている人がいてもおかしくない時間になっていた。
「うちの宿屋を利用する方は夜遅くまで外出してることが多いんですよ。商人さんとか……」
「確かに、宿をとるのはそういう奴が多そうだな」
「それよりも!!」
レティシアは腰に手を当てると、頬を膨らませてスヴィエートに顔を向けた。
「女の子がこんな遅くまで出歩くのは、良くありません!危ないです!」
「うむ、それは実感して来たのだ。さっき、面倒な奴に目を付けられたからな」
「えぇ!!」
レティシアは、まさか既に危ない目に遭っていたとは思わず、驚きの声を上げる。
「大丈夫だったの?」
「ディランがいたから大丈夫だったが、我一人だったら危なかったのだ」
「気をつけないとダメだよ!……あっ!鍋に火をかけてるんだった。ごめん、行くね」
「分かったのだ」
「引き止めて悪かったな」
そう言ってレティシアと別れた後、オレ達は部屋に入った。
報告を受けた公爵は護衛達を問い詰める。
「人混みを抜けた瞬間に男が幼女を抱えて走り出したのですが、信じられない速度でした。誰も追いつくことが出来ず、見失いました……」
「護衛の中には、スピードに特化した奴もいたんじゃないのか?例えばハンネスは居なかったのか?」
名前を挙げられたハンネスは一歩前進して進言する。
「俺も全く追いつけませんでした。それに、あの男は身体強化をしていなかったと思われます……」
「「なんだと……!!」」
ハンネスの言葉に公爵だけでなく、護衛達も騒つく。
「つまり、お前たちは身体強化を施していない、生身の人間に追いつけなかったという事なのか?」
「恥ずかしながら……」
「だが、お前たちの能力は近衛隊隊長のお墨付きだ。あの愚民が只者ではなかったと言うことか……この会場にいた事も鑑みるに他国の間者である可能性もなくはない。一応、国中の貴族にその旨を通達して情報を集めろ」
「はっ!」
護衛の一人が命令を受けてその場を後にした。
「あの者が何者であっても、私をコケにした事は許されない……いつか必ず目にモノ見せてやるぞ……!」
そんな公爵の呟きは、近くにいた護衛たちにも届かなかった。
☆
追手を撒いた後、オレ達は『安らぎ荘』に戻ってきた。
抱えていたスヴィエートを地面に降ろして、建物に入る。
「お帰りなさい!」
入るとすぐに、レティシアが出迎えてくれた。
「帰ってくるタイミングバッチリですね!お食事がもうすぐ出来ますよ」
「そうなのか?結構、遅い時間になったつもりだったんだが」
そう言いながら時計を見ると、夕飯時はとっくに過ぎて、寝ている人がいてもおかしくない時間になっていた。
「うちの宿屋を利用する方は夜遅くまで外出してることが多いんですよ。商人さんとか……」
「確かに、宿をとるのはそういう奴が多そうだな」
「それよりも!!」
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「ディランがいたから大丈夫だったが、我一人だったら危なかったのだ」
「気をつけないとダメだよ!……あっ!鍋に火をかけてるんだった。ごめん、行くね」
「分かったのだ」
「引き止めて悪かったな」
そう言ってレティシアと別れた後、オレ達は部屋に入った。
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