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1章 幼女な神様との出会いと過去

1.自称神様の幼女がいたんだが

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魔法。
それは人々を救うものである。

それが最も一般的な人々の認識だった。

しかし、オレの認識は真逆だ。
魔法は人を傷つけ苦しめるものだと思っている。

オレが過去に魔法を使ったのはたった一度だけ。
でも確信している。
魔法は恐ろしい力だと。

そしてオレにはひとつ心に決めた事があった。

それは『決して魔法を使わないこと』。







オレーーディランは森の中に住む、ただの人間だ。

人々はオレが住むこの森を『深淵の森』やら『帰らずの森』なんて呼ぶ。
非常に強い魔物が跋扈し、濃い魔力の瘴気で方向感覚が狂うだけの普通の森なのだが。


「ん?塩がもうないのか……」


森で仕留めてきた動物の肉に味付けをしようとして塩がない事に気づく。


「久しぶりに街に行かないとダメだな」


オレは近くの木に立て掛けておいた黒く透き通ったショートソードを手に、おもむろに街のある方向へ歩き出す。


最寄りの街までは10キロくらい離れている。
歩いて行けば半日くらいかかるが、森のお散歩だ。
時々、魔物が襲ってくるだけのな。



いくらか歩いて、もうすぐ森を抜けようとしていたある時、オレは目を疑うものを見た。


「……人……か?」


遠くて確証はないが、地面に人らしき物体が転がっているのが見えた。
近づいて確認してみるとやはり人であった。

しかも常人離れした容姿の幼女だ。
シルクのように艶やかな銀髪で、肌も降ったばかりの雪のように白い。


「何故こんなところに幼女が……?」


一瞬、死んでいるのかと疑ったが、息をしている。
生きているのは間違いない。

周りを見回すが他に誰もいない。
ただ見上げると、真上の木の枝だけが折れて光が差し込んでいた。


「落ちて来たのか?」


あり得ないとは思うが、あるとすれば魔物か何かがここまで運んできた可能性。
考えられるのはそれ位だった。
でもそれだと、怪我をしていないのはおかしい。

そんな事を考えていると、幼女が「……うーん」と声を漏らした。
意識が覚醒しようとしているらしい。

オレは幼女の頭を少し持ち上げて肩を揺する。
すると、幼女はパッチリとした目を見開いた。

エメラルド色の綺麗な瞳がオレを捉える。


「人がいる……」


意識もはっきりしているのか、オレを認識して言葉を発した。


「痛いところはないか?」


「なんでこんな所に人がいるのだ!」


幼女はおもむろに起き上がると、仁王立ちでオレを指差す。


「それはこっちのセリフだ。幼女がこんな所にいる方がおかしい」


「我は幼女ではないのだ!神様なのだ!」


「……大丈夫か?頭をぶつけたんじゃないか?」


「えぇい!やめるのだ!」


オレが心配して頭に伸ばした手を幼女は払って、頑として認めない。
明らかに変な事を口走っているので、頭を打ったのかと思ったが、目立った外傷はない。
もしかして、生まれつき変な子なのか?


「変な子って言うな!」


「いや、思うだろ……って何で心が読めた!?」


「だから神様だと言ってるだろう。我にとって心を読むのなんて朝飯前なのだ」


フンッと胸を張って自慢げに言う。
態度はどこからどう見てもただの幼女だな。


「それよりもお主、ここが『深淵の森』だと知っているのか?」


「知ってるぞ」


確か街の人がそう呼んでるのを聞いたことがある。


「なぜ知っててこんな所にいる!」


「なぜって住んでるからな」


「何!?自殺願望があるのか?」


「ねぇよ、そんなもん!」


「まさかこんな変な奴がいるとは……折角、人のいない地に降りてきたと言うのに……」


ブツブツと呟く幼女が何を言っているか分からないが、話が進まないので話題を変える。


「それでお前は何でここにいる?」


「探し物なのだ。それ以上はお主が知る必要はない」


「こんな場所で探し物か?」


「もう話す事はないと言っているだろう!さらばなのだ!」


幼女はそう言ってどこかへ行こうとする。


「危ないぞ」


「我は神様なのだ。魔物など恐るるに足らぬ」


しかし、幼女はオレの制止も聞かず歩いていってしまった。


「はぁ……助けてやる義理もねぇけど、死なれたら寝覚めも悪いし様子を見るか……」


オレはそう呟いて、幼女の後を追った。
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