99 / 117
6章 ゲドラ獣王国編
98.並ぶ列間違えた‥‥‥
しおりを挟む
海での遊びに満足した頃、日は傾き始め、船がくる時間がきた。
「おぉ!!デケェな・・・!!」
暎斗が港に向かってくる船を見て言う。
近づいてくると、その大きさがより際立つ。
船も大きいが、それよりも俺たちの視線は船を引っ張っているものーーー水竜に注がれた。
人を丸呑みできそうな太く長い首とヒレのように胴体に4本の腕がくっついている。
「水竜は初めて見るな、前乗った時はクジラみたいな魔物が動かしてたっけ」
「水竜さんカッコいいです」
暎斗もルルも水竜の登場にテンションが上がっている。
そしてこの水竜は船の動力になるだけでなく、魔物除けとしても効果抜群だ。
人間が使役できるくらいに気性は穏やかでも、ドラゴン種だけあって弱い魔物は近寄ってこないのだ。
俺たちは船に乗り込んでデッキに腰を落ち着ける。
ここは中継地らしく先客もいた。
水竜の首が少し下がったかと思うと、船が動き出した。
速度は3、40キロくらいで風が気持ち良い。
しばらく潮風を感じながらリラックスしていたが、向かいに座っている穂花の様子が気になった。
船の旅を満喫している暎斗とルルに対し、穂花は船に乗る前くらいからずっと憂鬱そうな雰囲気だ。
「穂花。どうしたの?」
「ハルくん・・・。私船酔いするタイプなの」
「そっか。大丈夫?」
「まだ平気・・・でも前乗った時は気持ち悪くて寝れなかった」
「調子悪くなったらすぐ言ってね。回復魔法で治せるから」
「ありがとう」
「ちょっと肌寒いから中に入ろうか」
「うん」
夜になって気温が下がってきたので、船内に入る。
船内にはフェリーのように二段ベッドが並んでいる。
4人でベッドに腰掛けて軽食を口にした。
バーベキューで余った肉や野菜を使って作ったものだ。
食事を終えるとみんな遊び疲れたのか、すぐに眠りについた。
深夜、俺は何かの物音で目を覚ます。
音の出所を探ると、穂花がベッドの上で辛そうな寝息を上げていた。
船が速度を落としているからか、波による揺れが感じられる。
穂花が船酔いしてしまうのも無理はない。
俺が回復魔法を掛けてあげると穏やかな寝息に変わった。
ただ、回復魔法には酔い止めの効果はない。
またしばらくしたら元に戻るだろう。
結局、俺は朝まで起きて定期的に回復魔法を掛けてあげた。
幸い、ダンジョン生活のおかげで一日寝なかったくらいで支障は出ない。
「ハルくん、今回は気分悪くなって目が覚めたりしなかった」
穂花はそう言って嬉しそうにしていた。
この姿が見れただけで、慊焉せずにいれた。
そして船は昼前にゲドラ獣王国の港街ーーージルオンに着港した。
ジルオンはこの世界で最大の港街として有名で、絶えず船が出入りしている。
もちろん、出入りしているのは船だけではない。人も、物も集まってくる。
そして最も特筆すべきは街の中心にある巨大な闘技場だろう。
港街にある異色の建造物で、黒い外壁に囲まれたドームは空から見ると大きな目のように見える。
ここでは毎年、冒険者による大規模なトーナメントが行われ、世界中からこのイベントを見るために人が集まる。
そのイベントを間近に控え、人がごった返している。
「人が多いなぁ」
「多いですね」
暎斗とルルが人混みにうんざりしたように言う。
長旅の疲れもあるのだろう。
「ギルドまでもう少しだから頑張って」
そう、目的地であるギルドの本部はこの街にあるのだ。
冒険者トーナメントが開催されることもあってこの街に本部が移された。
トーナメントで良い成果を残すと冒険者のランクアップが認められることもあるので、その手続きを速やかにするためだ。
ただ本部と言っても、Sランクの試験が受けられること以外は他の街のギルドと変わらない。
普通にクエストや依頼も受注できる。
閑話休題。
そんな冒険者ギルドに俺たちは到着したが、暎斗やルルは更に絶望する光景があった。
ギルドの入り口から延びる長蛇の列。
その先頭は受付にある。
これに並ぶのは骨が折れる。
「ここに用があるの俺だけだし、みんなは宿を探してきたら?これだけの人だと宿を取るのも一苦労かも」
「そうだなぁ」
「あれ?ルルも推薦書貰ってなかった?」
「ルルのは本部じゃなくても良いから、最悪ここじゃなくて良いんだよ」
俺がそう言うと3人は宿を探しに行った。
俺は最後尾に並び、大人しく自分の番を待った。
1時間以上も待ち続け、ようやく俺の順番になった。
そして、受付嬢が口にした言葉に耳を疑う。
「お待たせしました。トーナメントの参加登録でよろしいですか?」
見ると立て札に冒険者トーナメントの参加登録受付と書いてあった。
「すいません、推薦書を貰ってきたのですが・・・」
「それは向こうの受付で対応しております」
まさかと思いながら、隣を見るとガラ空きの受付があり、そこの受付嬢に推薦書を見せるとすぐに対応してくれた。
現実を受け入れるのにしばらく時間が掛かったのは言うまでもない。
「おぉ!!デケェな・・・!!」
暎斗が港に向かってくる船を見て言う。
近づいてくると、その大きさがより際立つ。
船も大きいが、それよりも俺たちの視線は船を引っ張っているものーーー水竜に注がれた。
人を丸呑みできそうな太く長い首とヒレのように胴体に4本の腕がくっついている。
「水竜は初めて見るな、前乗った時はクジラみたいな魔物が動かしてたっけ」
「水竜さんカッコいいです」
暎斗もルルも水竜の登場にテンションが上がっている。
そしてこの水竜は船の動力になるだけでなく、魔物除けとしても効果抜群だ。
人間が使役できるくらいに気性は穏やかでも、ドラゴン種だけあって弱い魔物は近寄ってこないのだ。
俺たちは船に乗り込んでデッキに腰を落ち着ける。
ここは中継地らしく先客もいた。
水竜の首が少し下がったかと思うと、船が動き出した。
速度は3、40キロくらいで風が気持ち良い。
しばらく潮風を感じながらリラックスしていたが、向かいに座っている穂花の様子が気になった。
船の旅を満喫している暎斗とルルに対し、穂花は船に乗る前くらいからずっと憂鬱そうな雰囲気だ。
「穂花。どうしたの?」
「ハルくん・・・。私船酔いするタイプなの」
「そっか。大丈夫?」
「まだ平気・・・でも前乗った時は気持ち悪くて寝れなかった」
「調子悪くなったらすぐ言ってね。回復魔法で治せるから」
「ありがとう」
「ちょっと肌寒いから中に入ろうか」
「うん」
夜になって気温が下がってきたので、船内に入る。
船内にはフェリーのように二段ベッドが並んでいる。
4人でベッドに腰掛けて軽食を口にした。
バーベキューで余った肉や野菜を使って作ったものだ。
食事を終えるとみんな遊び疲れたのか、すぐに眠りについた。
深夜、俺は何かの物音で目を覚ます。
音の出所を探ると、穂花がベッドの上で辛そうな寝息を上げていた。
船が速度を落としているからか、波による揺れが感じられる。
穂花が船酔いしてしまうのも無理はない。
俺が回復魔法を掛けてあげると穏やかな寝息に変わった。
ただ、回復魔法には酔い止めの効果はない。
またしばらくしたら元に戻るだろう。
結局、俺は朝まで起きて定期的に回復魔法を掛けてあげた。
幸い、ダンジョン生活のおかげで一日寝なかったくらいで支障は出ない。
「ハルくん、今回は気分悪くなって目が覚めたりしなかった」
穂花はそう言って嬉しそうにしていた。
この姿が見れただけで、慊焉せずにいれた。
そして船は昼前にゲドラ獣王国の港街ーーージルオンに着港した。
ジルオンはこの世界で最大の港街として有名で、絶えず船が出入りしている。
もちろん、出入りしているのは船だけではない。人も、物も集まってくる。
そして最も特筆すべきは街の中心にある巨大な闘技場だろう。
港街にある異色の建造物で、黒い外壁に囲まれたドームは空から見ると大きな目のように見える。
ここでは毎年、冒険者による大規模なトーナメントが行われ、世界中からこのイベントを見るために人が集まる。
そのイベントを間近に控え、人がごった返している。
「人が多いなぁ」
「多いですね」
暎斗とルルが人混みにうんざりしたように言う。
長旅の疲れもあるのだろう。
「ギルドまでもう少しだから頑張って」
そう、目的地であるギルドの本部はこの街にあるのだ。
冒険者トーナメントが開催されることもあってこの街に本部が移された。
トーナメントで良い成果を残すと冒険者のランクアップが認められることもあるので、その手続きを速やかにするためだ。
ただ本部と言っても、Sランクの試験が受けられること以外は他の街のギルドと変わらない。
普通にクエストや依頼も受注できる。
閑話休題。
そんな冒険者ギルドに俺たちは到着したが、暎斗やルルは更に絶望する光景があった。
ギルドの入り口から延びる長蛇の列。
その先頭は受付にある。
これに並ぶのは骨が折れる。
「ここに用があるの俺だけだし、みんなは宿を探してきたら?これだけの人だと宿を取るのも一苦労かも」
「そうだなぁ」
「あれ?ルルも推薦書貰ってなかった?」
「ルルのは本部じゃなくても良いから、最悪ここじゃなくて良いんだよ」
俺がそう言うと3人は宿を探しに行った。
俺は最後尾に並び、大人しく自分の番を待った。
1時間以上も待ち続け、ようやく俺の順番になった。
そして、受付嬢が口にした言葉に耳を疑う。
「お待たせしました。トーナメントの参加登録でよろしいですか?」
見ると立て札に冒険者トーナメントの参加登録受付と書いてあった。
「すいません、推薦書を貰ってきたのですが・・・」
「それは向こうの受付で対応しております」
まさかと思いながら、隣を見るとガラ空きの受付があり、そこの受付嬢に推薦書を見せるとすぐに対応してくれた。
現実を受け入れるのにしばらく時間が掛かったのは言うまでもない。
0
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ある日仕事帰りに神様の手違いがあったが無事に転移させて貰いました。
いくみ
ファンタジー
寝てたら起こされて目を開けたら知らない場所で神様??が、君は死んだと告げられる。そして神様が、管理する世界(マジョル)に転生か転移しないかと提案され、キターファンタジーとガッツポーズする。
成宮暁彦は独身、サラリーマンだった
アラサー間近パットしない容姿で、プチオタ、完全独り身爆走中。そんな暁彦が神様に願ったのは、あり得ない位のチートの数々、神様に無理難題を言い困らせ
スキルやらetcを貰い転移し、冒険しながらスローライフを目指して楽しく暮らす場を探すお話になると?思います。
なにぶん、素人が書くお話なので
疑問やら、文章が読みにくいかも知れませんが、暖かい目でお読み頂けたらと思います。
あと、とりあえずR15指定にさせて頂きます。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる