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5章 冒険者らしい活動もしようよ!!
83.得たものと失ったもの
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魔物騒動から数週間が経ち、街はすっかり元の賑やかさを取り戻していた。
少し前にピエールは街の近くで見るも無惨な姿で発見され死亡の噂は街を飛び出て世界中に広まった。
そのせいもあり、ピエールを退けた街として話題になり、むしろ前よりも活気が増した気すらする。
街を離れていた人は戻って来たし、新たにこの街にやって来た人もいるようだ。
一応、ピエールは事故死という事になっているが、死因について色んな噂が飛び交っているのが現状だ。
その真相を知るのは世界で俺とヒアの2人だけなので、噂は噂のままになるだろう。
☆
「これとこれの受注をお願いします」
「はい、鉱石採掘と討伐クエストですね」
俺はルルと冒険者ギルドに来ていた。
今日は穂花と暎斗はいない。
冒険者ランクがAである穂花達とEランクの俺たちが一緒に受けれるクエストは限られているので、そろそろ本格的にランク上げをしようと言うことになった。
俺もルルも実力は申し分ないので、すぐに上げられるだろうが、ちょっと問題があった。
それは先の魔物騒動のせいで、周辺に魔物が居なくなってしまった事である。
なので、今回は転移魔法で遠出して魔物を討伐する必要がある。
「受注完了しました。お気をつけて」
手続きを終えて街を出る。
「じゃあルル、行くよ」
「はい!お願いします」
俺はルルを抱きかかえるが、事前に説明していたのでビックリされる事もない。
転移魔法を発動して一気に目的地に移動する。
目的地に着いてルルを地面に下ろし、目の前にあるものを見る。
「ここか・・・」
俺はそれを見て呟く。
そこには石の隙間のような場所があり、先は真っ暗で何も見えない。
実はこの先は異空間に繋がっている。
今回の目的地は俺にはあまり良い思い出がない場所ーーそう、ダンジョンなのだ。
ここは俺たちがいるガドラス王国に7つあるダンジョンのうちの一つで、貴重な鉱石が採掘できることで有名な場所だ。
しかし、場所が場所なので来る人はほとんどいない。
なにせ4000メートル級の山脈に囲まれた盆地にあるのだ。
誰も来たがらないのも納得だ。
「入ろうか」
「はい!」
俺はルルに声をかけて、ダンジョンに入るための魔法を発動する。
すると、独特な浮遊感の後に景色が変わる。
懐かしい感覚だ。
中は光の入り込む場所がないにも関わらず、真っ暗ではない。
その理由はダンジョンの壁や床などに埋まった鉱石が光を放っているからだ。
鉱石により出す光の色が違うので幻想的だ。
「綺麗ですね、ラウトさん」
「そうだね」
「この辺の鉱石から採掘するんですか?」
「いや、もっと下層にある貴重な鉱石を採掘するつもり。下層の方が魔物も多いしね」
今回は鉱石採掘と討伐クエストの2つを受注しているので、下層に行った方が効率も成果も上がる。
ルルは「了解です!」と元気よく答える。
魔力探知のおかげで、地図がなくても迷うこともなく進める。
途中で何体かモンスターと出会ったが、ルルが一撃で倒した。
ダンジョンに潜るのが初めてのルルはモンスターを倒しても死体が残らず、アイテムがドロップする事に驚いていた。
その後、最短で下層に辿り着いた俺たちは早速、鉱石採掘を始める。
モンスターを探して歩き回るのではなく、採掘をしながらモンスターが通り掛かるのを待つ作戦だ。
俺はコツコツと壁に埋まった鉱石の周りの土を削って、鉱石を傷つけないように気をつけながら慎重に掘り進める。
そんな作業をしていると、
ーードゴーンッ!!
近くで物凄い音がした。
慌ててそっちを見ると壁に大きな窪みができていた。
そして、その前でルルが屈んで何かを探すように崩れた土の塊を探っている。
すると何かを見つけて駆け寄ってきた。
「見てください!綺麗に採れました!!」
ルルは水色の綺麗な鉱石を手に乗せて見せてくれた。
確かに綺麗に採れている。
だが、俺は頭を抱える。
ルルがさっき探っていた場所にはキラキラとした粒のような物がたくさん光っている。
おそらく粉々になった鉱石だろう。
「ねぇ、ルル。壁を思いっきりパンチしたの?」
「はい!成功です!!」
ルルは自信満々にそう言う。
だけどねルル、得た鉱石より失った鉱石の方が多いんだ。
でも嬉しそうなルルにそれを指摘するのも気が引けて、あえて言ったりはしない。
苦笑いで「良かったね」と返す。
まあ、鉱石採掘としては失敗だが、ある意味成功ではあった。
なぜならさっきの音でモンスターが集まってきていたのだ。
俺はルルの採った鉱石をアイテムボックスに仕舞って、モンスターが来ることをルルに伝えた。
少し前にピエールは街の近くで見るも無惨な姿で発見され死亡の噂は街を飛び出て世界中に広まった。
そのせいもあり、ピエールを退けた街として話題になり、むしろ前よりも活気が増した気すらする。
街を離れていた人は戻って来たし、新たにこの街にやって来た人もいるようだ。
一応、ピエールは事故死という事になっているが、死因について色んな噂が飛び交っているのが現状だ。
その真相を知るのは世界で俺とヒアの2人だけなので、噂は噂のままになるだろう。
☆
「これとこれの受注をお願いします」
「はい、鉱石採掘と討伐クエストですね」
俺はルルと冒険者ギルドに来ていた。
今日は穂花と暎斗はいない。
冒険者ランクがAである穂花達とEランクの俺たちが一緒に受けれるクエストは限られているので、そろそろ本格的にランク上げをしようと言うことになった。
俺もルルも実力は申し分ないので、すぐに上げられるだろうが、ちょっと問題があった。
それは先の魔物騒動のせいで、周辺に魔物が居なくなってしまった事である。
なので、今回は転移魔法で遠出して魔物を討伐する必要がある。
「受注完了しました。お気をつけて」
手続きを終えて街を出る。
「じゃあルル、行くよ」
「はい!お願いします」
俺はルルを抱きかかえるが、事前に説明していたのでビックリされる事もない。
転移魔法を発動して一気に目的地に移動する。
目的地に着いてルルを地面に下ろし、目の前にあるものを見る。
「ここか・・・」
俺はそれを見て呟く。
そこには石の隙間のような場所があり、先は真っ暗で何も見えない。
実はこの先は異空間に繋がっている。
今回の目的地は俺にはあまり良い思い出がない場所ーーそう、ダンジョンなのだ。
ここは俺たちがいるガドラス王国に7つあるダンジョンのうちの一つで、貴重な鉱石が採掘できることで有名な場所だ。
しかし、場所が場所なので来る人はほとんどいない。
なにせ4000メートル級の山脈に囲まれた盆地にあるのだ。
誰も来たがらないのも納得だ。
「入ろうか」
「はい!」
俺はルルに声をかけて、ダンジョンに入るための魔法を発動する。
すると、独特な浮遊感の後に景色が変わる。
懐かしい感覚だ。
中は光の入り込む場所がないにも関わらず、真っ暗ではない。
その理由はダンジョンの壁や床などに埋まった鉱石が光を放っているからだ。
鉱石により出す光の色が違うので幻想的だ。
「綺麗ですね、ラウトさん」
「そうだね」
「この辺の鉱石から採掘するんですか?」
「いや、もっと下層にある貴重な鉱石を採掘するつもり。下層の方が魔物も多いしね」
今回は鉱石採掘と討伐クエストの2つを受注しているので、下層に行った方が効率も成果も上がる。
ルルは「了解です!」と元気よく答える。
魔力探知のおかげで、地図がなくても迷うこともなく進める。
途中で何体かモンスターと出会ったが、ルルが一撃で倒した。
ダンジョンに潜るのが初めてのルルはモンスターを倒しても死体が残らず、アイテムがドロップする事に驚いていた。
その後、最短で下層に辿り着いた俺たちは早速、鉱石採掘を始める。
モンスターを探して歩き回るのではなく、採掘をしながらモンスターが通り掛かるのを待つ作戦だ。
俺はコツコツと壁に埋まった鉱石の周りの土を削って、鉱石を傷つけないように気をつけながら慎重に掘り進める。
そんな作業をしていると、
ーードゴーンッ!!
近くで物凄い音がした。
慌ててそっちを見ると壁に大きな窪みができていた。
そして、その前でルルが屈んで何かを探すように崩れた土の塊を探っている。
すると何かを見つけて駆け寄ってきた。
「見てください!綺麗に採れました!!」
ルルは水色の綺麗な鉱石を手に乗せて見せてくれた。
確かに綺麗に採れている。
だが、俺は頭を抱える。
ルルがさっき探っていた場所にはキラキラとした粒のような物がたくさん光っている。
おそらく粉々になった鉱石だろう。
「ねぇ、ルル。壁を思いっきりパンチしたの?」
「はい!成功です!!」
ルルは自信満々にそう言う。
だけどねルル、得た鉱石より失った鉱石の方が多いんだ。
でも嬉しそうなルルにそれを指摘するのも気が引けて、あえて言ったりはしない。
苦笑いで「良かったね」と返す。
まあ、鉱石採掘としては失敗だが、ある意味成功ではあった。
なぜならさっきの音でモンスターが集まってきていたのだ。
俺はルルの採った鉱石をアイテムボックスに仕舞って、モンスターが来ることをルルに伝えた。
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