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4章 商人ピエールの訪れ
57.帰還と予感
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ケルビラに戻って来た俺とルルは屋敷に戻る前にギルドに寄る。
帰りに遭遇した魔物を倒して来たので、素材を買い取ってもらうためだ。
買取り受付の列に並んでいると冒険者達が話している声が聞こえて来た。
「ピエールがエートルまで来てるって噂だぜ。どうする?拠点を変えるなら今だぞ」
「確かにな。そろそろここでの活動も飽きてきたし、王都にでも行くか・・・」
聞き取れた会話に出てきたエートルというのは隣の街の名前だ。
ただピエールというのは何か分からない。
(人の名前のようだけど、移動を考えるような事態でも起こるのか?)
そんな事に考えを巡らせているうちに俺たちの順番になった。
「本日はどのようなご用件ですか?」
「素材の買取りをお願いします」
「ブラックウルフの爪と皮ですね。代価のお渡しは今すぐにしますか?」
「後日で大丈夫です」
職員は俺が素材を差し出すとすぐになんの素材かを言い当てた。
ほぼ原型がないので素直に感心した。
ちなみに買取りは素材ごとに決められた金額を貰うタイプと、素材の状態をみて査定し、後日代価を受け取るタイプがある。
基本的には後者の方が多くお金が貰えるので待った方がお得だが、金銭に余裕のない冒険者は前者を利用することも多い。
俺たち、というか俺は金銭に余裕があるので、後者を利用する。
あまりお金に余裕がないルルも、結果的に貰えるお金が増えるならと了承している。
手続きを終えてギルドから出て屋敷へと向かう。
「そんなに長い間離れてたわけじゃないけど、久しぶりに感じるな」
「そうですね。人がたくさんいるのも違和感があります」
この街の生活もさして長いわけではないが、この賑やかな感じが『帰ったきた』という気にさせてくれる。
久しぶりの帰り道を通って屋敷に到着した。
庭で暎斗が剣を振っているのが見えたので俺とルルは声をかける。
「「ただいま(です)」」
「おっ、おかえり!はやく穂花に顔みせてやれ、毎晩寂しがってたぞ」
「わかった」
暎斗はそういうと、屋敷の方を指差す。
その先を見ると屋敷の外から穂花が夜ご飯の準備してくれているのが見えた。
俺は穂花が窓際まで来たタイミングで手を振った。
穂花は俺たちに気づくとパッと表情を明るくして飛び出してきた。
「おかえり!」
「ただいま」
「もうすぐご飯できるから2人ともお風呂でも入って待ってて!」
「了解、ありがとう」
俺とルルは穂花に促されるまま屋敷の中に入る。
風呂はルルに先に入って貰って、俺は魔法で手早く汗や汚れを落として穂花の料理を手伝う。
3年もダンジョンで生活していたので、大抵の料理はできる自信があった。
しかし、穂花の料理スキルは想像以上に凄かった。
見たことのない調味料やどこで習ったのかと思うテクニックで、どんどんと料理が完成していく。
結局のところ、手伝えたのは盛り付けと片付けだけだった。
「そいつの料理スキルはスゲェだろ。日本にいた頃からずっと練習してたんだぞ。ラウトに食べて貰えるようにってな」
いつの間にか剣の素振りから帰ってきていた暎斗がそんな事を言ってきた。
その言葉に穂花は顔を赤くさせて暎斗の口を押さえた。
「なんで言うの!?」
必死に隠そうとする穂花の姿に俺は懐かしさを覚えた。
昔から穂花は影で努力するタイプだった。
それを知られると恥ずかしがるのも変わらない。
「ありがとう」
俺は色んな意味を込めてそう言った。
それに穂花は顔を俯けながら頷くのだった。
帰りに遭遇した魔物を倒して来たので、素材を買い取ってもらうためだ。
買取り受付の列に並んでいると冒険者達が話している声が聞こえて来た。
「ピエールがエートルまで来てるって噂だぜ。どうする?拠点を変えるなら今だぞ」
「確かにな。そろそろここでの活動も飽きてきたし、王都にでも行くか・・・」
聞き取れた会話に出てきたエートルというのは隣の街の名前だ。
ただピエールというのは何か分からない。
(人の名前のようだけど、移動を考えるような事態でも起こるのか?)
そんな事に考えを巡らせているうちに俺たちの順番になった。
「本日はどのようなご用件ですか?」
「素材の買取りをお願いします」
「ブラックウルフの爪と皮ですね。代価のお渡しは今すぐにしますか?」
「後日で大丈夫です」
職員は俺が素材を差し出すとすぐになんの素材かを言い当てた。
ほぼ原型がないので素直に感心した。
ちなみに買取りは素材ごとに決められた金額を貰うタイプと、素材の状態をみて査定し、後日代価を受け取るタイプがある。
基本的には後者の方が多くお金が貰えるので待った方がお得だが、金銭に余裕のない冒険者は前者を利用することも多い。
俺たち、というか俺は金銭に余裕があるので、後者を利用する。
あまりお金に余裕がないルルも、結果的に貰えるお金が増えるならと了承している。
手続きを終えてギルドから出て屋敷へと向かう。
「そんなに長い間離れてたわけじゃないけど、久しぶりに感じるな」
「そうですね。人がたくさんいるのも違和感があります」
この街の生活もさして長いわけではないが、この賑やかな感じが『帰ったきた』という気にさせてくれる。
久しぶりの帰り道を通って屋敷に到着した。
庭で暎斗が剣を振っているのが見えたので俺とルルは声をかける。
「「ただいま(です)」」
「おっ、おかえり!はやく穂花に顔みせてやれ、毎晩寂しがってたぞ」
「わかった」
暎斗はそういうと、屋敷の方を指差す。
その先を見ると屋敷の外から穂花が夜ご飯の準備してくれているのが見えた。
俺は穂花が窓際まで来たタイミングで手を振った。
穂花は俺たちに気づくとパッと表情を明るくして飛び出してきた。
「おかえり!」
「ただいま」
「もうすぐご飯できるから2人ともお風呂でも入って待ってて!」
「了解、ありがとう」
俺とルルは穂花に促されるまま屋敷の中に入る。
風呂はルルに先に入って貰って、俺は魔法で手早く汗や汚れを落として穂花の料理を手伝う。
3年もダンジョンで生活していたので、大抵の料理はできる自信があった。
しかし、穂花の料理スキルは想像以上に凄かった。
見たことのない調味料やどこで習ったのかと思うテクニックで、どんどんと料理が完成していく。
結局のところ、手伝えたのは盛り付けと片付けだけだった。
「そいつの料理スキルはスゲェだろ。日本にいた頃からずっと練習してたんだぞ。ラウトに食べて貰えるようにってな」
いつの間にか剣の素振りから帰ってきていた暎斗がそんな事を言ってきた。
その言葉に穂花は顔を赤くさせて暎斗の口を押さえた。
「なんで言うの!?」
必死に隠そうとする穂花の姿に俺は懐かしさを覚えた。
昔から穂花は影で努力するタイプだった。
それを知られると恥ずかしがるのも変わらない。
「ありがとう」
俺は色んな意味を込めてそう言った。
それに穂花は顔を俯けながら頷くのだった。
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