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3章 ルルの故郷と恋〜主人公無双が止まらない〜
43.恋の糸は複雑に
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さて、決心したからには行動で示さなくてはならないだろう。
ルルに怖い思いをさせたはずだから安心させる意味でも、ここらで一旦本気で魔物を駆除する様を見てもらおう。
悪いがここにいる残りの雑魚には見世物になってもらう。
ルル、見ていてくれ俺の本気を。
俺は無言で歩き出す。
しかし、ルルはこれから俺が何をするのかが分かっただろう。
それもそのはずだ。
いま俺は魔力を全力で解放している。
圧倒的な魔力が魔物達にのしかかる。
俺は身体から湧き出るような、ただならぬ黒いオーラに身を包んだ。
これは触れるだけで魔力酔いを起こすほどの高濃度の純粋な魔力だ。
魔力は本当なら無色透明なので目には見えないのだが、俺が魔物達を威圧するために解放しているため、害意に染まって黒くなっている。
当たり前だが、俺は魔力を完璧にコントロールしているので、ルルに威圧の影響は出ていない。
俺はすでに戦意を失った魔物達に、魔剣を手に持ちながらゆっくりと近づく。
俺は歩きながら魔物達に語りかける。
「よく覚えとけ、俺に牙を剥くということは死を意味すると」
俺はそう言いながら俺は軽く魔剣を横一閃に振り抜いた。
すると、一拍遅れてあたり一帯にいた全ての魔物が音を立てて地面へと倒れた。
攻撃の原理は単純で斬撃を飛ばしただけだ。
ただ、周りの木々が倒れないのは魔剣を使ったことに理由がある。
実は魔剣には魔法攻撃と物理攻撃の2つの相反する特徴を、自由に持たせることが出来るという特権のようなものが存在する。
これを利用すると、木々のような魔力を持たない生物や無機物を斬らずに、魔力を持つ魔物だけを斬るなんて離れ業を、いとも簡単に再現できてしまうのだ。
「すごいです!!さっすがラウトさんです」
そんな様子を見つめていたルルが、跳ねるような元気な声で話しかけて来た。
「あれ?大丈夫なの?」
俺はあんな事があったので、ルルが血の気の引いた表情をしているのではないかと、勝手に想像していたので、普段より元気そうなルルの様子を不思議に思った。
「へ?大丈夫ですよ?ラウトさんが助けてくれたので、何処も怪我してませんよ」
「そっか、それなら良かった」
まあ、そう言う意味で聞いたのではなく、精神的な面を聞いたのだが、この様子を見ると大丈夫そうなので、ひとまず安心だ。
「それより、ラウトさんって強いとは思ってましたけど、本当にすごい強いですね!!私、ラウトさんの戦う所を見てるとドキドキしちゃいました」
ルルは言葉のレパートリーが少ない話し方ながらも、ジェスチャーをしたりして一生懸命に自分の感情を表現していた。
俺はそれを相槌を返しながら聞いた。
「それに助けてくれた時なんか、胸が締めつけられるようにキュッと苦しくなって、戸惑っちゃいました」
「ん?」
ルルは胸の辺りを抑えながら嬉々として語った。
そして若干、頬が赤い。
俺はルルの言葉が思わぬ方向に進んで行きそうになって、声を漏らした。
「なんか、ラウトさんのこと考えると頭がグルグルして分かんなくなって、自然とラウトさんを目で追っちゃうんです!私、こんな事初めてなんですけど、ラウトさんはこれが何か分かりますか?」
「えっ?う、うーん・・・」
俺は考え込んだ。
いや、分からないのではない。
分かりたくないのだ。
確かにルルにとっては窮地を救った人という事になるのだろう。
俺の失態であの状況が生まれたことを、ルルは知らない。
その瞬間の吊り橋効果と、俺が見せた本気の強さに惹かれて・・・
というのは十分に考えられる。
だとすると、ルルは俺に恋をした事になる。
しかも、様子から察するにこれはルルの初恋であり、そもそも恋愛というものに触れた事がない様子だ。
俺はそういった事を説明できるほど、人の感情に詳しくないので、保留にしておきたい。
「まだ分からないけど、悪い状態ではないと思うから、それが収まるのを待つのが良いと思うよ」
俺は結論を逃げるような言葉を返した。
まだ、そこまで強く意識していないと思い、あわよくば幻滅してもらおうという魂胆である。
何度も言うが、俺は心に決めた人がいるのだ。
まあ、察しはついているだろうが、穂花のことだ。
昔、まだ俺たちが小学生だった時、俺と穂花はお互いに異性として好意を持っていた。
しかし、ある事件をきっかけに俺と穂花の関係は終わりを告げた。
俺は穂花から俺を好きだった記憶と感情を奪ったのだ。
詳しい事を言うと長くなるので、ここまでにしておくが、それがあってからも俺は穂花を好きだった。
でも、伝える事は許されないような気がして言えずにいる。
だけど、いつか伝えたいこの気持ちは決して揺らがない。
だから、ルルの気持ちに応える事はできない。
「・・・わかりました」
ルルは少し表情を曇らせ不安げだ。
しかし、すぐに顔を上げ元気を取り戻した。
「ラウトさんがいれば、安心です!!」
ルルは今日一番の笑顔でそう言った。
これは手遅れかもしれない、と俺は胸を痛めることしか出来なかった。
俺はケルビラにいる2人の幼なじみにどう説明したものかと、頭を悩ませた。
(はあ、異世界に来て最大のピンチだなぁ)
こうして世界最強の冒険者は、魔物に圧勝し、恋に苦戦する結果となった。
ルルに怖い思いをさせたはずだから安心させる意味でも、ここらで一旦本気で魔物を駆除する様を見てもらおう。
悪いがここにいる残りの雑魚には見世物になってもらう。
ルル、見ていてくれ俺の本気を。
俺は無言で歩き出す。
しかし、ルルはこれから俺が何をするのかが分かっただろう。
それもそのはずだ。
いま俺は魔力を全力で解放している。
圧倒的な魔力が魔物達にのしかかる。
俺は身体から湧き出るような、ただならぬ黒いオーラに身を包んだ。
これは触れるだけで魔力酔いを起こすほどの高濃度の純粋な魔力だ。
魔力は本当なら無色透明なので目には見えないのだが、俺が魔物達を威圧するために解放しているため、害意に染まって黒くなっている。
当たり前だが、俺は魔力を完璧にコントロールしているので、ルルに威圧の影響は出ていない。
俺はすでに戦意を失った魔物達に、魔剣を手に持ちながらゆっくりと近づく。
俺は歩きながら魔物達に語りかける。
「よく覚えとけ、俺に牙を剥くということは死を意味すると」
俺はそう言いながら俺は軽く魔剣を横一閃に振り抜いた。
すると、一拍遅れてあたり一帯にいた全ての魔物が音を立てて地面へと倒れた。
攻撃の原理は単純で斬撃を飛ばしただけだ。
ただ、周りの木々が倒れないのは魔剣を使ったことに理由がある。
実は魔剣には魔法攻撃と物理攻撃の2つの相反する特徴を、自由に持たせることが出来るという特権のようなものが存在する。
これを利用すると、木々のような魔力を持たない生物や無機物を斬らずに、魔力を持つ魔物だけを斬るなんて離れ業を、いとも簡単に再現できてしまうのだ。
「すごいです!!さっすがラウトさんです」
そんな様子を見つめていたルルが、跳ねるような元気な声で話しかけて来た。
「あれ?大丈夫なの?」
俺はあんな事があったので、ルルが血の気の引いた表情をしているのではないかと、勝手に想像していたので、普段より元気そうなルルの様子を不思議に思った。
「へ?大丈夫ですよ?ラウトさんが助けてくれたので、何処も怪我してませんよ」
「そっか、それなら良かった」
まあ、そう言う意味で聞いたのではなく、精神的な面を聞いたのだが、この様子を見ると大丈夫そうなので、ひとまず安心だ。
「それより、ラウトさんって強いとは思ってましたけど、本当にすごい強いですね!!私、ラウトさんの戦う所を見てるとドキドキしちゃいました」
ルルは言葉のレパートリーが少ない話し方ながらも、ジェスチャーをしたりして一生懸命に自分の感情を表現していた。
俺はそれを相槌を返しながら聞いた。
「それに助けてくれた時なんか、胸が締めつけられるようにキュッと苦しくなって、戸惑っちゃいました」
「ん?」
ルルは胸の辺りを抑えながら嬉々として語った。
そして若干、頬が赤い。
俺はルルの言葉が思わぬ方向に進んで行きそうになって、声を漏らした。
「なんか、ラウトさんのこと考えると頭がグルグルして分かんなくなって、自然とラウトさんを目で追っちゃうんです!私、こんな事初めてなんですけど、ラウトさんはこれが何か分かりますか?」
「えっ?う、うーん・・・」
俺は考え込んだ。
いや、分からないのではない。
分かりたくないのだ。
確かにルルにとっては窮地を救った人という事になるのだろう。
俺の失態であの状況が生まれたことを、ルルは知らない。
その瞬間の吊り橋効果と、俺が見せた本気の強さに惹かれて・・・
というのは十分に考えられる。
だとすると、ルルは俺に恋をした事になる。
しかも、様子から察するにこれはルルの初恋であり、そもそも恋愛というものに触れた事がない様子だ。
俺はそういった事を説明できるほど、人の感情に詳しくないので、保留にしておきたい。
「まだ分からないけど、悪い状態ではないと思うから、それが収まるのを待つのが良いと思うよ」
俺は結論を逃げるような言葉を返した。
まだ、そこまで強く意識していないと思い、あわよくば幻滅してもらおうという魂胆である。
何度も言うが、俺は心に決めた人がいるのだ。
まあ、察しはついているだろうが、穂花のことだ。
昔、まだ俺たちが小学生だった時、俺と穂花はお互いに異性として好意を持っていた。
しかし、ある事件をきっかけに俺と穂花の関係は終わりを告げた。
俺は穂花から俺を好きだった記憶と感情を奪ったのだ。
詳しい事を言うと長くなるので、ここまでにしておくが、それがあってからも俺は穂花を好きだった。
でも、伝える事は許されないような気がして言えずにいる。
だけど、いつか伝えたいこの気持ちは決して揺らがない。
だから、ルルの気持ちに応える事はできない。
「・・・わかりました」
ルルは少し表情を曇らせ不安げだ。
しかし、すぐに顔を上げ元気を取り戻した。
「ラウトさんがいれば、安心です!!」
ルルは今日一番の笑顔でそう言った。
これは手遅れかもしれない、と俺は胸を痛めることしか出来なかった。
俺はケルビラにいる2人の幼なじみにどう説明したものかと、頭を悩ませた。
(はあ、異世界に来て最大のピンチだなぁ)
こうして世界最強の冒険者は、魔物に圧勝し、恋に苦戦する結果となった。
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