21 / 117
二章 やっと始まるラウトの旅
20.待ってるくらいなら、こっちから行ってやるわ
しおりを挟む
====side???====
暗く広い洞窟のような空間に1人の女が寝ている。
そこに、どこかから足音が近づいて来る。
その音に女は目を開け、起き上がる。
そして、何もない暗闇を睨みつけた。
「いるのは分かってるわ。出てきなさい」
女は強く凛とした声で言う。
すると、その暗闇から人影が現れる。
そいつは漆黒の外套にピエロのような仮面をつけた怪しい人だった。
「気分はどうかな?美玲ちゃん」
口を開いたその声は中性的で、男か女かの判断はつかない。
『美玲』と呼ばれた女は、問いに答えない。
その代わりにピエロの仮面を貫くような眼差しで見つめた。
「元気そうだねー。それではここで、重大なお知らせがありまーす。美玲ちゃんは、生け贄第一号に選ばれましたー。おめでとうございまーす!!」
ピエロは女が言葉を返さないため、喋り続ける。
「美玲ちゃんは、この世界の終焉を救うために生け贄になってもらいまーす。美玲ちゃんの生きられる時間は、あと1年弱ってところかなー。どう?どう?嬉しい?」
ピエロの問いかけへと返答はない。
女はずっとピエロを睨みつけている。
「そう警戒しないで欲しいなー。まあいいや。でねでね、美玲ちゃんはあと少ししか生きられないから、特別に願いを叶えてあげまーす。どんな願いでもいいよー。あっでも、生け贄にしないでってのはダメだからねー」
そこで、女は初めてピエロの言葉に反応を示した。
「外に出たいわ。ここは異世界なのでしょう?死ぬまでここで待機なんて御免だもの」
「なるほど、なるほど、いいでしょう。でも1つ条件がありまーす」
「条件ですって?」
女は訝しげな顔になる。
「そう、それは地球で関わりのあった人物に接触しない事でーす」
「どう言う事かしら、もしかしてここに来ているのは私だけじゃないの?」
「ご名答ー。ここには美玲ちゃんのお知り合いがたくさん来てますよー。まあ、私が連れてきたんですが。その中には弟さんもいまーす」
「春輝が!?」
女は身を乗り出してピエロに問い詰める。
「こっちでは、ラウトって名乗ってるし、容姿も変わってるけど、弟さんも美玲ちゃんを追ってきてるよー」
「そんな・・・」
女は言葉が出ないと言う様子で、へたり込む。
「どうするー?それでも外に出ますかー?」
「・・・出たいわ・・・外に出たいわ!!」
女は意を決したとばかりに、大声で言った。
「そっか、分かったー。じゃあ外に出してあげるー。異世界の説明書も持ってってー。分からない事はだいたい全部そこに載ってるからー」
「ゲームでも始める気分だわ・・・」
メモ帳ほどの分厚と大きさの本を渡された女は呟く。
「開くと欲しい情報が分かるようになってるからー。自由に使ってー。それから、条件を破ったらその時点で、ここに強制的に戻されるから、気をつけてー。でも、死ぬ前に一度だけお別れを言うために会わせてあげるから、それまで我慢してねー。じゃあ、異世界ライフを満喫してねー」
「死ぬ前に絶対に会わせなさいよ」
ピエロが女の要求に「分かった」と頷くと同時に女は光に包まれ、そこから跡形もなく消えてしまった。
辺りの景色が辛うじて見える暗い森の中、女ーー美玲は立っていた。
「どこに飛ばされたのかしら・・・?」
その疑問に答えてくれる者はいない。
しかし、代わりにポケットがぼんやりと光っていた。
「これを使えってことなの?」
美玲はポケットから先ほどピエロから貰った、異世界の説明書などというハンドブックみたいな、一冊の薄い本を取り出して開きながら呟く。
《現在地 リートア帝国南部の森。
最寄りの居住区 北西に1キロ。》
説明書を開くと日本語の文章が現れた。
「本当に欲しい情報が分かるのね。これは助かるわ。じゃあ、北西に向かいましょう」
美玲はそう言うと南東に向けて歩き出した。
ーーブーッ!ブーッ!
すると、すかさず説明書が赤く光りながら警告音を鳴らした。
そして、説明書は自動でページを開き、文章を出した。
《北西は逆だ、方向音痴》
「わ、分かってるわよ。説明書が方角を分かっているか試しただけだから!!」
と誰もいないにも関わらず、美玲は言い訳をした。
《嘘つけ》
説明書は音のない文章で冷ややかにツッコミを入れた。
ここから始まる本と美玲の旅。
その行く先々で起こる出来事は、ラウト達の旅にどんな影響を及ぼすのか・・・
その答えは神のみぞ知る。
暗く広い洞窟のような空間に1人の女が寝ている。
そこに、どこかから足音が近づいて来る。
その音に女は目を開け、起き上がる。
そして、何もない暗闇を睨みつけた。
「いるのは分かってるわ。出てきなさい」
女は強く凛とした声で言う。
すると、その暗闇から人影が現れる。
そいつは漆黒の外套にピエロのような仮面をつけた怪しい人だった。
「気分はどうかな?美玲ちゃん」
口を開いたその声は中性的で、男か女かの判断はつかない。
『美玲』と呼ばれた女は、問いに答えない。
その代わりにピエロの仮面を貫くような眼差しで見つめた。
「元気そうだねー。それではここで、重大なお知らせがありまーす。美玲ちゃんは、生け贄第一号に選ばれましたー。おめでとうございまーす!!」
ピエロは女が言葉を返さないため、喋り続ける。
「美玲ちゃんは、この世界の終焉を救うために生け贄になってもらいまーす。美玲ちゃんの生きられる時間は、あと1年弱ってところかなー。どう?どう?嬉しい?」
ピエロの問いかけへと返答はない。
女はずっとピエロを睨みつけている。
「そう警戒しないで欲しいなー。まあいいや。でねでね、美玲ちゃんはあと少ししか生きられないから、特別に願いを叶えてあげまーす。どんな願いでもいいよー。あっでも、生け贄にしないでってのはダメだからねー」
そこで、女は初めてピエロの言葉に反応を示した。
「外に出たいわ。ここは異世界なのでしょう?死ぬまでここで待機なんて御免だもの」
「なるほど、なるほど、いいでしょう。でも1つ条件がありまーす」
「条件ですって?」
女は訝しげな顔になる。
「そう、それは地球で関わりのあった人物に接触しない事でーす」
「どう言う事かしら、もしかしてここに来ているのは私だけじゃないの?」
「ご名答ー。ここには美玲ちゃんのお知り合いがたくさん来てますよー。まあ、私が連れてきたんですが。その中には弟さんもいまーす」
「春輝が!?」
女は身を乗り出してピエロに問い詰める。
「こっちでは、ラウトって名乗ってるし、容姿も変わってるけど、弟さんも美玲ちゃんを追ってきてるよー」
「そんな・・・」
女は言葉が出ないと言う様子で、へたり込む。
「どうするー?それでも外に出ますかー?」
「・・・出たいわ・・・外に出たいわ!!」
女は意を決したとばかりに、大声で言った。
「そっか、分かったー。じゃあ外に出してあげるー。異世界の説明書も持ってってー。分からない事はだいたい全部そこに載ってるからー」
「ゲームでも始める気分だわ・・・」
メモ帳ほどの分厚と大きさの本を渡された女は呟く。
「開くと欲しい情報が分かるようになってるからー。自由に使ってー。それから、条件を破ったらその時点で、ここに強制的に戻されるから、気をつけてー。でも、死ぬ前に一度だけお別れを言うために会わせてあげるから、それまで我慢してねー。じゃあ、異世界ライフを満喫してねー」
「死ぬ前に絶対に会わせなさいよ」
ピエロが女の要求に「分かった」と頷くと同時に女は光に包まれ、そこから跡形もなく消えてしまった。
辺りの景色が辛うじて見える暗い森の中、女ーー美玲は立っていた。
「どこに飛ばされたのかしら・・・?」
その疑問に答えてくれる者はいない。
しかし、代わりにポケットがぼんやりと光っていた。
「これを使えってことなの?」
美玲はポケットから先ほどピエロから貰った、異世界の説明書などというハンドブックみたいな、一冊の薄い本を取り出して開きながら呟く。
《現在地 リートア帝国南部の森。
最寄りの居住区 北西に1キロ。》
説明書を開くと日本語の文章が現れた。
「本当に欲しい情報が分かるのね。これは助かるわ。じゃあ、北西に向かいましょう」
美玲はそう言うと南東に向けて歩き出した。
ーーブーッ!ブーッ!
すると、すかさず説明書が赤く光りながら警告音を鳴らした。
そして、説明書は自動でページを開き、文章を出した。
《北西は逆だ、方向音痴》
「わ、分かってるわよ。説明書が方角を分かっているか試しただけだから!!」
と誰もいないにも関わらず、美玲は言い訳をした。
《嘘つけ》
説明書は音のない文章で冷ややかにツッコミを入れた。
ここから始まる本と美玲の旅。
その行く先々で起こる出来事は、ラウト達の旅にどんな影響を及ぼすのか・・・
その答えは神のみぞ知る。
0
お気に入りに追加
1,028
あなたにおすすめの小説
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる