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㊴更けゆく夜。トラブルを越えて
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シリアス展開ですが最後はギャグ風味
騎士団に連行されるスチュアートを見送った。
お互い愛情が無かったとは言え幼い頃からの婚約者だった男だ。こんな結果になるのは本当に残念だった。
クラリスは振り向くといつの間にか2人の女性の騎士団員に両腕を取られ捕まっているエスメラルダを見た。
彼女の顔は憔悴しきっていて、その表情にはいつもの華やかさのかけらも無かった。まぁ、これは当たり前だろう。
「・・・・・・お姉様。」エスメラルダがクラリスをじっと見つめていた。クラリスはエスメラルダの近くへ寄ると口を開いた。
「エスメラルダ、ひとつだけ教えて?貴方は本当にスチュアート様を想っていたの?」
エスメラルダはその問いかけの意味が分からなかったようだ。
「・・・分からない。分からないわ。そんなこと考えた事無かったもの。・・・ただ私はお姉様のようになりたかったの。お姉様の婚約者だったからスチュアート様の事も良く見えていたのかも知れない。」
俯いてそう話すと涙をポロリと流した。
「私は小さい時からいつも笑っている事だけ望まれたの。ただ馬鹿みたいにヘラヘラ笑っているだけ。子供の頃ならそれでも良かった。でも・・・。」
「大人になってくるとそうも行かなくなった。中にはお父様の仕事にかこつけて私に愛人にならないか?と言ってくる男性もいた。」
「私の様子で薄々勘づいたんでしょうね?ある日を境にお父様達が私を連れて歩かなくなったの・・・・。」
「・・・屋敷の自分の部屋で私は容姿以外でパルマ家のために何が出来るかって考えた時、私は何も出来ないと気がついたわ。・・・でもお姉様は違った。自分で考え、自分の力で人生を切り開いて行った。私にはそんなお姉様が眩しかった。」
そう話すとエスメラルダは取られていた腕を振り払いひざまづき頭を下げた。
「ごめんなさいお姉様。私はお姉様にもパルマ家にも泥をぬったわ。私が罰を受けるのは当たり前だと思う。」
クラリスはしゃがみ込むと自分の目線にエスメラルダの目線を合わせた。そしてエスメラルダの両肩を力強くグッと掴んだ。
「エスメラルダ!!しっかりしなさい。貴女が心から反省したら必ず見ている人が現れます。それまでどんなに辛くても歯を食いしばって自分の人生を生きなさい。」そうクラリスが檄を飛ばすとエスメラルダが「うっ、うっ」と嗚咽を堪えながらぼろぼろと泣き出した。
「・・・そろそろ行きます。クラリス様。」と女性の騎士団員がエスメラルダを立たせて連れて歩き出した。
その後ろ姿に「・・・忘れないでエスメラルダ。お互いがどんな立場になっても貴女と私は姉妹である事は一生変わらない。」そう呟いた。
・・・果たしてその声が本人に届いたかどうかはわからない・・・
そのクラリスの肩をそっとケニーが抱いた。
「お疲れ様クラリス。よく頑張ったな。来客はほぼ全て帰ったよ。フランツに任せておいたから大丈夫だ。」
「ふふっ、ケニーもフランツ様もお疲れ様。ねぇ?この後時間ある?」クラリスがケニーを見上げイタズラっぽく笑った。
「ん?どうした?クラリス?」
「うん、飲みに行かない?何だか気が抜けちゃって、お酒でも飲みたい気分よ?私たちパーティでは何にも食べられなかったしね?」
「そりゃそうだ!よし、飲みに行くか?パーっと飲もう。」
「そうと決まれば行こう!」とクラリスも笑った。
「あっ!!でも、・・・私たち大丈夫なの?有名人なのよね?」とがっくり肩を落とした。
「・・・そうだな。じゃあ王宮の中のバーで飲もうか?」
「えっ、王宮にバーがあるの?」
「もちろんあるよ!!来客用だ。俺たち警備の都合上ホイホイと外へ出られないからな。」
「それもそうだね!じゃあ行こう!」手を繋ぎ楽しそうに歩き出す2人。
この夜はこの2人だけでなくフランツやたまたま残っていたノーチラス商会のニューロン、ナリスも引っ張り込まれた。
招待客用プレイルームのあと片付けで残っていたのだ。
ただ、1人カーネルだけは「私はもうそんなに飲めませんから若い人たちで楽しんで下さい。」と笑っていた。
この夜の酒の肴はフランツの愚痴だった。
「皆さん聞いてください!ひどいんですよケニー様!!私がこんなに尽くしているのに扱いが酷いんです、雑いんです!!」と飲んでクダを巻くフランツに、
「そりゃいけないっすよ!そこんとこは我らが会長に何とかして貰わないといけないっす。」とフランツの肩を抱き慰めるニューロン。
(・・・フランツあの野郎とうとう遠慮が無くなったな。明日は覚えとけよ。)
「凄い・・・イケメンを見た。」と奥でひっそりと飲んでいるエバンジェスタ公の側にはナリスが陣取っていた。
「こんな時ぐらいしかお近づきになれませんからー!」と酒瓶片手にヘラヘラ笑っていた。
「あぁ~~眼福眼福。神様仏様クラリス様ありがとうございまぁす。」と涙目だ。明らかに飲み過ぎているナリス。
「フランツ様、今度よかったらうちの展示会に来ませんか?・・・まぁどうせケニー様と来られるでしょう??フランツ様もどうぞご一緒に。ふふっ、商会総力上げておもてなし致しますよ。」とニューロンが酔った勢いでフランツを懐柔しようとしている。
「良いですねぇ。良いお酒飲めそうですか?」とフランツもまんざらでも無い様子。・・・いやそれはダメだろう。彼の公務とは??
そんな感じでデール国王宮直営のバー「いいとも!」の夜は明るく楽しく?更けて行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この作品楽しんで頂いてますでしょうか?またお気づきの点や良かった所、好きなキャラクターなど教えて頂けたら幸いです。
あと今行われている『恋愛小説大賞』の中で【この作品面白かったよ!】【この作品お勧めします!】など有りましたら教えて下さい。勉強を兼ねてこっそり見に行きますので^_^
たぬき( ^ω^ )
騎士団に連行されるスチュアートを見送った。
お互い愛情が無かったとは言え幼い頃からの婚約者だった男だ。こんな結果になるのは本当に残念だった。
クラリスは振り向くといつの間にか2人の女性の騎士団員に両腕を取られ捕まっているエスメラルダを見た。
彼女の顔は憔悴しきっていて、その表情にはいつもの華やかさのかけらも無かった。まぁ、これは当たり前だろう。
「・・・・・・お姉様。」エスメラルダがクラリスをじっと見つめていた。クラリスはエスメラルダの近くへ寄ると口を開いた。
「エスメラルダ、ひとつだけ教えて?貴方は本当にスチュアート様を想っていたの?」
エスメラルダはその問いかけの意味が分からなかったようだ。
「・・・分からない。分からないわ。そんなこと考えた事無かったもの。・・・ただ私はお姉様のようになりたかったの。お姉様の婚約者だったからスチュアート様の事も良く見えていたのかも知れない。」
俯いてそう話すと涙をポロリと流した。
「私は小さい時からいつも笑っている事だけ望まれたの。ただ馬鹿みたいにヘラヘラ笑っているだけ。子供の頃ならそれでも良かった。でも・・・。」
「大人になってくるとそうも行かなくなった。中にはお父様の仕事にかこつけて私に愛人にならないか?と言ってくる男性もいた。」
「私の様子で薄々勘づいたんでしょうね?ある日を境にお父様達が私を連れて歩かなくなったの・・・・。」
「・・・屋敷の自分の部屋で私は容姿以外でパルマ家のために何が出来るかって考えた時、私は何も出来ないと気がついたわ。・・・でもお姉様は違った。自分で考え、自分の力で人生を切り開いて行った。私にはそんなお姉様が眩しかった。」
そう話すとエスメラルダは取られていた腕を振り払いひざまづき頭を下げた。
「ごめんなさいお姉様。私はお姉様にもパルマ家にも泥をぬったわ。私が罰を受けるのは当たり前だと思う。」
クラリスはしゃがみ込むと自分の目線にエスメラルダの目線を合わせた。そしてエスメラルダの両肩を力強くグッと掴んだ。
「エスメラルダ!!しっかりしなさい。貴女が心から反省したら必ず見ている人が現れます。それまでどんなに辛くても歯を食いしばって自分の人生を生きなさい。」そうクラリスが檄を飛ばすとエスメラルダが「うっ、うっ」と嗚咽を堪えながらぼろぼろと泣き出した。
「・・・そろそろ行きます。クラリス様。」と女性の騎士団員がエスメラルダを立たせて連れて歩き出した。
その後ろ姿に「・・・忘れないでエスメラルダ。お互いがどんな立場になっても貴女と私は姉妹である事は一生変わらない。」そう呟いた。
・・・果たしてその声が本人に届いたかどうかはわからない・・・
そのクラリスの肩をそっとケニーが抱いた。
「お疲れ様クラリス。よく頑張ったな。来客はほぼ全て帰ったよ。フランツに任せておいたから大丈夫だ。」
「ふふっ、ケニーもフランツ様もお疲れ様。ねぇ?この後時間ある?」クラリスがケニーを見上げイタズラっぽく笑った。
「ん?どうした?クラリス?」
「うん、飲みに行かない?何だか気が抜けちゃって、お酒でも飲みたい気分よ?私たちパーティでは何にも食べられなかったしね?」
「そりゃそうだ!よし、飲みに行くか?パーっと飲もう。」
「そうと決まれば行こう!」とクラリスも笑った。
「あっ!!でも、・・・私たち大丈夫なの?有名人なのよね?」とがっくり肩を落とした。
「・・・そうだな。じゃあ王宮の中のバーで飲もうか?」
「えっ、王宮にバーがあるの?」
「もちろんあるよ!!来客用だ。俺たち警備の都合上ホイホイと外へ出られないからな。」
「それもそうだね!じゃあ行こう!」手を繋ぎ楽しそうに歩き出す2人。
この夜はこの2人だけでなくフランツやたまたま残っていたノーチラス商会のニューロン、ナリスも引っ張り込まれた。
招待客用プレイルームのあと片付けで残っていたのだ。
ただ、1人カーネルだけは「私はもうそんなに飲めませんから若い人たちで楽しんで下さい。」と笑っていた。
この夜の酒の肴はフランツの愚痴だった。
「皆さん聞いてください!ひどいんですよケニー様!!私がこんなに尽くしているのに扱いが酷いんです、雑いんです!!」と飲んでクダを巻くフランツに、
「そりゃいけないっすよ!そこんとこは我らが会長に何とかして貰わないといけないっす。」とフランツの肩を抱き慰めるニューロン。
(・・・フランツあの野郎とうとう遠慮が無くなったな。明日は覚えとけよ。)
「凄い・・・イケメンを見た。」と奥でひっそりと飲んでいるエバンジェスタ公の側にはナリスが陣取っていた。
「こんな時ぐらいしかお近づきになれませんからー!」と酒瓶片手にヘラヘラ笑っていた。
「あぁ~~眼福眼福。神様仏様クラリス様ありがとうございまぁす。」と涙目だ。明らかに飲み過ぎているナリス。
「フランツ様、今度よかったらうちの展示会に来ませんか?・・・まぁどうせケニー様と来られるでしょう??フランツ様もどうぞご一緒に。ふふっ、商会総力上げておもてなし致しますよ。」とニューロンが酔った勢いでフランツを懐柔しようとしている。
「良いですねぇ。良いお酒飲めそうですか?」とフランツもまんざらでも無い様子。・・・いやそれはダメだろう。彼の公務とは??
そんな感じでデール国王宮直営のバー「いいとも!」の夜は明るく楽しく?更けて行った。
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この作品楽しんで頂いてますでしょうか?またお気づきの点や良かった所、好きなキャラクターなど教えて頂けたら幸いです。
あと今行われている『恋愛小説大賞』の中で【この作品面白かったよ!】【この作品お勧めします!】など有りましたら教えて下さい。勉強を兼ねてこっそり見に行きますので^_^
たぬき( ^ω^ )
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