上 下
1 / 43

プロローグ☆ひと時の婚約者だった貴方様へ

しおりを挟む
スチュワート・ベリッシモ様へ


この手紙を御覧になる頃には私は既にこの国には居ないと思います。また「運命を感じた方」とのご婚約が整ったとの事、誠におめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。

思えば政略的な婚約とは言えお互いたくさんの無駄な時間を過ごしてきました。

我が国の舞踏会の時に、スチュアート様から「――――お前のような心の卑しい上に何の能力もない女との婚約は破棄させて貰う。この時より、ここに居る貴様の妹のエスメラルダと婚約を結ぶ事にしよう。このエスメラルダこそ私の運命の女性なのだから。」とおっしゃってましたね。その通りだと今でも思います。なので私も自由に運命の方を探して生きて行こうと思いましたの。

スチュアート様は私の妹のエスメラルダと結婚をして、わが家の爵位を継がれるとお聞きしました。失礼ながら恐らくそれは難しいかと思われます。と言いますのは我が侯爵家は幅広い事業を展開し、多額の利益を得て今の地位になった物だからです。

その事業の権利は、私、クラリスがほとんど所持しておりますのよ?見栄っ張りな両親の事、スチュアート様には一言もその話は説明していないと思われます。ええ、本当に彼ら見栄っ張りですからね、今の贅沢な暮らしは到底辞められないでしょうね。もちろん彼らの中には、貴方の愛するエスメラルダも含まれておりますわ。当たり前でしょう。

スチュアート様、どうぞこれから頑張ってくださいまし。遠い異国の地で心より応援しております。ああ、私の事など一向にお気になさらないで下さいね。この地の王族の方々と商売を通じて仲良くなり、そのご縁で今の婚約者に巡り合えたのですから。私はここで幸せになりますね。どうかスチュアート様もお幸せに。

話は逸れますが、エスメラルダには何人かスチュアート様の言われる所の「運命の人」がおられるご様子。

まあ、同じ女性に惹かれるのですから、案外ほかの「運命の人」とスチュアート様も気が合うかもしれませんね。良かったですね。結婚と同時にたくさんのお友達がお出来になるのよ?


今だから話せますが、私、これ以上彼らの為に働くなんてまっぴらごめんです。

丁度スチュアート様から婚約を破棄して頂いた事で、えいっと思い切れましたのよ。もうスチュアート様には感謝しかありませんわ。

私の試算では、半年後から約6億ゼニ―の支払いが始まるかと思います。まずはその資金繰りからやって見て下さい。殆どの利権が私の手に有るので、そちらの領地の税収は月に約3億ゼニーあるかないかと言った事になるでしょうね。

「運命の人」と一緒になるのですからそれぐらいは出来ますよね?大丈夫ですわ。

「何の能力もない」と貴方に言われた私が出来たのですもの、スチュアート様でしたらお安い御用でしょう。貴方、昔からお口はお上手でしたよ。

長くなりましたわね。私ったら未練がましいわ。これからの毎日を思い浮かべると楽しくて楽しくてしょうがないのです。ではこの辺でごめんあそばせ。


クラリス・フォン・デ・パルマ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私、魔法使いになりたいって言ったよね?ハッピーな記憶を届ける魔法使いに。

釋圭峯
恋愛
ここは魔法が人々と共存する世界。とある村に一人の女の子がいた。 名前はブルックリン。茶色の髪を持つ勝ち気で明るい女の子だ。ある日魔法使いの旅芸人の見世物を見て魔法に憧れる。自分も使えるようになりたい。 ただブルックリンの家は一般市民なうえに5人も兄弟がいたのだった。元々の頭は悪くないので国立カーティス魔法学園の特待生試験を受け見事に合格するのだが、世の中はそんなに甘くはなく何と自分と同じ成績の生徒が居る事を知る。 相手の情けにより特待生の権利を貰う事に成功する。そして入学試験もまたしても同点で1位になるのだった。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

王子殿下の慕う人

夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。 しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──? 「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」 好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。 ※小説家になろうでも投稿してます

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

夢を現実にしないための正しいマニュアル

しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。 現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事? 処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。 婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。

【完結】今世も裏切られるのはごめんなので、最愛のあなたはもう要らない

曽根原ツタ
恋愛
隣国との戦時中に国王が病死し、王位継承権を持つ男子がひとりもいなかったため、若い王女エトワールは女王となった。だが── 「俺は彼女を愛している。彼女は俺の子を身篭った」 戦場から帰還した愛する夫の隣には、別の女性が立っていた。さらに彼は、王座を奪うために女王暗殺を企てる。 そして。夫に剣で胸を貫かれて死んだエトワールが次に目が覚めたとき、彼と出会った日に戻っていて……? ──二度目の人生、私を裏切ったあなたを絶対に愛しません。 ★小説家になろうさまでも公開中

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

処理中です...