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彼等からの提案

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「いったぁ~~~。」ぷつっと血玉が出来たのでハンカチを取り出して吸い込ませた。小さな傷だけど少し痛む。

「ちょっと、貴女ここまで刺繍苦手だったっけ?」と隣のキャサリンが話しながら訝しげにこちらを見た。今は裁縫の時間だ。「花」と言うテーマに沿ってハンカチに刺繍をしていた。

「いやぁ、ちょっと刺しただけじゃ無い、大袈裟な。」とりあえずはそう返しとく。

 そうなんだよね。。。。実は殆ど出来ない。そんな訓練は無かった。何よりリンダ本人も得意では無かった様だ。

 ちっ、バレない様に舌打ちをする。


 ナユタ君たちとやりあってから1週間が過ぎた。

 あれから校内ですれ違う事があっても特に挨拶する事もなく、たまに食堂であっても、話すことなど何もないので私からは話さない。ただノアやルーカス君はこちらを見て何か言いたそうにしている。

 そんなある日授業を受け終わり、キャサリンと別れ自分のロッカーに荷物を取りに行き、ロッカーを開けると、かつて見覚えのある封筒を見かけた。

(・・・以前これ見た事ある。見たらあかん奴)

 一瞬捨てようかと思ったが一応開いた。「明日の17時フォートナムの森でお待ちしています。」と書かれていた。

「ーーーー。」う~ん行かなくてはいけない義理は無い。でも今更何の用?

 全然ありがたくもないラブレターを、そっと自分のカバンに入れると迎えの馬車に乗って帰った。


 次の日、学校の帰りに呼び出された時刻に、フォートナムの森で奴らを待っていた。私の方がちょっと早かったみたいで数分後に奴らが来た。

「こんにちは、リンダさん。今日はお呼び立てして申し訳ないです。実は少しリンダさんにお話がありまして。決してリンダさんに悪い話ではないと思ったんです。」とルーカスくんがニコニコ笑って話し始めた。


「信用して貰うために、最初に僕たちの目的を話そうと思います。実は僕たち3人は同じ目的でグリーンベルト学園に入ったんです。」と話す様子を探っても彼に嘘をついている様子はなかった。

「リンダさん、魔晶石って知っていますよね?そして運搬事業で貴女のお家の事業も一枚噛んでいますよね?」と何だかちょっと大事じゃ無い?と突っ込みたくなる様な話をしている。

「ええ、そうよ。その話はこの国では知らない人は、ほとんどいないと思うんだけど。それがどうかして?」

「かつての貴女の婚約者であったエリック。彼の家の事業も魔晶石に噛んでいます。詳しくは分かりませんが、リンダさんのとの婚約も事業の兼ね合いで、取り決めされた物だとは安易に想像できますよね?」

「ええ、まさしくそうよ。まさかあんな結果になるとは夢にも思わなかった。私たちは幼い頃から決められていた婚約者だったのよ。」とここで少し気が落ちてしまった。

 いかんいかん、その様子をナユタ君が鋭い眼差しで見ている。何かを探るように。

「ここで本題に移りますね。はっきり言って僕たちの目的はリーベルト家にあります。リーベルト家にはここだけの話、独占販売禁止法に触れている可能性あるのと、これは女性相手に話しにくいんですが、売春法にも関係を取り沙汰されています。」とちょっと想像がつかない話をし始めた。

「リンダさん、奴らに一泡吹かせてやりませんか?」とにやりっと言うルーカス君が悪戯っぽく笑った。

(やはりこの方も顔立ちは良いのよねー。)

「僕たちは貴女に力を貸してほしい。そしてリンダさんと掴んだ証拠を、僕たちは生かしてリーベルト家を告発できる力があります。」

「どうでしょうか?僕たちなりにリンダさんの評判はお聞きしました。みな口を揃えて言いましたよ。リンダさん貴女には何の非も落ち度もないと。」

 とルーカス君が私を見ながら話を続けた。

「ここまで話してしまったのですから、何卒他言はご容赦願います。ですが悪い様にはしません。そして報酬を求めて頂いても結構です。金額はご相談には乗りますし、むしろその方向で忌憚ない意見を聞かせて貰う方がこちらも楽です。

 ルーカスがそう話しながらリンダの方へと近づいた。それを右手で制しながら、

「ーーちょっと待って。そんな直ぐには決められない。少し考えさせて欲しい。」と戸惑いながら3人を見つめてそう返した。








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