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10、薔薇園

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レストランでのお兄様との楽しいひとときから1週間が過ぎた。

結局、あれからレオン王子からも招待状を貰い、薔薇園に行くことになった。

薔薇にはそこまで鑑賞する興味は無いが、ちょっと別の事で興味があったのだ。

当日はまたお兄様が寮まで迎えに来てくれた。
(やはり素敵、眼福)と頭から声がする。真紀ちゃん、本当お兄様のお顔が好きなのね。

「学校生活はどうだい?友達は出来たかい?」と聞かれたが上手く答えられなかった。まだボッチです。
なんて言えなかった。ましてや原因が第4王子のせいなんて。

その後は授業でわからない所を教えて貰ったり、お兄様の仕事のこぼれ話などを聞いたりした。

王宮に着くと、既に貴族の立派な馬車がたくさん停められていた。家紋から幅広い階層の人が来ているのがわかる。

見物客も少なからずおり、それぞれが談笑しながら一様に薔薇園のゲートへと向かって歩いていた。


「お兄様、本当ですね。色々な方々が来られているようですね。」と話すと

「あぁ、王都だけではなく、辺境の方からも宿を取って来ている家もある。」と話しながら歩いていると、レンガと真鍮で出来たエレガントな薔薇園のゲートが見えてきた。

そこにはレオン王子が他の側近の方と出迎えてくれていた。

・・・何だろう、真紀ちゃんのテンションが上がっている気がする。 


「レオン殿下並びに皆さま、本日はご招待頂きありがとうございました。ここから見ているだけでも見事な薔薇園ですね。担当の庭師様の腕が良いのだと思います。」と、まずご挨拶をした。

「お久しぶりです。オフェーリア嬢。クローデイ領での食事は今でも夢に見るよ。あの時はありがとう。」と舞い上がってしまうような言葉を頂いた。


レオン殿下は薔薇園の入り口を指差すと

「ではゲートをくぐって行こう。」と手を取られた。お兄様の前で恥ずかしい。。。

ゲートをくぐった瞬間、左右に広がる色とりどりの薔薇、そこから広がる高貴な芳香。

「凄い、凄いです。殿下。」と思わずレオン殿下に笑って話しかける。
パチクリと瞬きをした殿下はにっこり笑うと「それは良かった。興味がなかったらどうしようかと思っていましたから。。。」とはにかみながら笑った。

この薔薇園は、この国の建国の時からあって初代の皇后さまが『皆の者が楽しめるように』と造園を命じられ、作らせた物らしい。

時が流れ王族が1人増え2人増えると、その人物になぞらえて新しい薔薇が植樹されるんだそう。薔薇の花を一つとっても八重だったり一重だったりした。色も本当に様々だ。

レオン殿下と共にじっくりと薔薇園を見て歩いたが、数名の庭師さんが視界に入った。花がらつみをされている。

急に真紀ちゃんが(オフェーリアちゃんちょっと。。。)と薔薇の花についてお願いをされた。

レオン殿下に少しいいですか?と断り庭師さんたちの方へ歩いて行くと、

「お忙しいところすいません。ちょっといいですか?。」と一番年配の方に話しかけた。

「私は、オフェーリアと言います。美しい薔薇園をお世話していただきありがとうございます。質問なんですが薔薇の花がらは日中いつも摘まれているのですか?」と聞いてみた。

すると庭師さんは「日中は気を付けて早めに摘むようにしています。あまり萎びたり、咲き終わった状態でおくと病気や虫がつく原因になったりしますので。」と答えた。

「よく分かりました。あまり花が開ききった状態では置かないのですね。ありがとうございました。」とお礼を伝えレオン殿下の元へ戻った。

「お待たせいたしました。レオン殿下。」

「何か薔薇の生育環境で気が付かれた事が?」
「いえ、薔薇の事はわかりませんがお手入れのやり方を少し。。。」と答えて引き続き薔薇園を見て回った。

とある薔薇の近くへ来たときに(へえ、やっぱりあったか・・・)と真紀ちゃんの声が響いてきた。

声に出さないように「どうしたの?真紀ちゃん」と聞いてみた。

(あのピンクの花びらが多い薔薇あるやろ?あの薔薇、茎はいらんで花だけちょっと貰ってくれへん?)

「何で?やっぱりアレ作るの?」(まあ貰ってよ。貰えたら言うたるわ)「うん、わかった」

レオン殿下にはじーっと考え事をしているように見えたのだろう「大丈夫ですか?どこか具合がよくないですか?」
と真顔で心配されてしまった。

「いえいえ、薔薇の香りに魅せられてしまっていたようですわ。」とやや使い古された?表現をしておいた。

それより。。。と話を続け、真ら紀ちゃんが指摘した薔薇を差し、

じーっとレオン殿下の目を見て「あの薔薇の花を幾つか今日の記念に戴けませんか?」と上目遣いでお願いしてみた。

なぜか顔を赤らめさっと目をそらすと「大丈夫だと思います。帰り際でいいですか?」と色よい返事が貰えたので
にっこり笑って「ありがとうございます。レオン殿下。」とオフェーリアがお礼を言うと

「普通に”レオン”と呼んで下さい。貴女にはそう呼ばれたい。」

と逆にお願いされたので「レオン様、でいいのでしょうか?」と聞いてみると「はい!」と返ってきた。

一通り薔薇園を見終わるとレオン殿下に「そろそろ別室にお茶の用意が出来ていると思います。一服しませんか?」
と誘われた。

「はい、のどが渇きましたね。」と返事をすると近くの瀟洒なティールームへと案内された。

(さすが王宮)と真紀ちゃんの呟きを聞きながらレオン殿下と昼下がりのひと時を楽しんだ。

お兄様が薔薇の花束を持って、ティールームまで迎えに来てくれたので(ぎゃー萌!萌!)と真紀ちゃんが訳の分からない言葉を叫んでいた。

「レオン様、本日は楽しいひと時をありがとうございました。」と恭しくお礼を述べるとお兄様と共に早々に王宮をお暇した。

帰りの馬車でお兄様に「いつから名前呼びになったの?」と詰め寄られた。
目が怖いですお兄様。

その質問は適当にかわし寮の前まで着くとお兄様に馬車から下ろしてもらった。

再び乗車したお兄様に向かって
「お兄様どうかお体お気をつけて。」と声を掛けお見送りした。



「真紀ちゃん、寮まで帰ってきたよ。この薔薇どうするの?まさか飾るの?」

と聞くと(まさか~。この薔薇持って台所借りて)と言ってきた。

台所まで着くと真紀ちゃんが(オフェーリアちゃんチェンジや!)と要求してきたので「いいよ。楽しみにしてる」とチェンジした。




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