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⑥ドケチ秘書のフランキー登場!

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「ルクソール王、私の褒美はいつ頂けるんで?」と言いながらオズワルドがニヤリと笑った。今はルクソール王のプライベート空間で酒を飲んでいる。ここにはもう1人ルクソールと幼馴染である教皇リンカーンの姿もあった。

たまには気軽に飲もうとリンカーンが誘ったものでここはオズワルドもリンカーンもよく知っている場所だ。


「ルクソール、オズワルドの望みって何です?彼はあまり物に執着しない男でしょう?」とリンカーンがルクソールに尋ねていた。

「ははっ、リンカーン。私は国王に先日の遠征の勝利の褒美に幻の酒を望んでいるんだ。だがしかし、どうした事かまだ私の喉は褒美の酒が通ってはおらぬのだ。」と言って笑った。

「ルクソール、ダメじゃないか。・・・褒美はすぐに与えないと騎士団の士気が下がってしまうよ?」優雅な手付きで酒を口に運びながらリンカーンが話す。

「もし今からモルジアニの奴らが攻めてきたらどうするんだい?私はあんな野蛮な国の住人になるのはまっぴらごめんだよ。いくら同じアルカディア神を祀っていると言っても。」と隣国モルジアニを引き合いに出してオズワルドに褒美を出すようにけしかけた。



真剣に話しているようだがリンカーンも大概酔っている。



そんな様子を見てオズワルドが話し出した。

「まぁ、まぁ2人とも。俺に考えがあるんだ。聞いてもらえるかい?今は俺も酔っている。話半分に聞いて貰ってもいい。」と言いつつ目の前の2人に酒を注いだ。


注がれた酒を飲みながら先にルクソールがオズワルドに尋ねた。


「いい考えって何だよ?話の内容に寄ったら考えてやらん事はない。まぁ言ってみろ。」


「そうですよオズワルド。貴方は働きすぎです。ここらで少し休みを貰ったらどうです?」


「ははっ、2人ともそう急かさないでくれよ。俺の考えは・・・・ルクソール、自分で褒美を探しに行こうかと思ってる。」と言って笑った。

「・・・・自分で探すって??本気で言ってるのか?そんなの下の者にさせればいいだけの話じゃないのか?」と、これにはリンカーンも食いついた。



「まぁそうは言っても自分で探すのが今回の褒美の醍醐味だ。自分で探して自分で飲む。だから来週からしばらく休みを貰うよ。」と言ってグイッと酒を飲んだ。

そんなオズワルドを残りの2人は何とも言えない表情で見ている。

この男は繊細な外見と中味は正反対の男だ。豪胆で一度決めたら人の話を聞かない所がある。幼い頃から付き合いが有るからこそよく分かっていた。



「あぁ~~。ちょど良い酔い加減だ。そろそろ失礼するよ。ルクソール、リンカーン。悪いがしばらく休む。騎士団はチャーチルの奴に任せる。何かあったら奴に言え。」と言ってほろ酔い加減でルクソールの屋敷から出て行った。





次の日アルカディア十字軍の騎士団の詰所にオズワルドの姿があった。例の褒美の休暇の件である。

目の前にいる男はアルカディア十字軍切ってのドケチ男と呼ばれるオズワルドの秘書である。


「オズワルド様、そうは言っても貴方はこの十字軍にとって唯一無二の方。あんまりな事は困ります。」表情を曇らせて話していた。


「オズワルド様、貴方は大変優れた男ですがたまに無鉄砲な所がお有りです。私が心配しているのはそこなのです。この前の遠征でも・・・。」とつらつらと話そうとする所を遮り「とにかく俺は少し休む。業務はチャーチルに話してある。まぁ何かあったらチャーチルの奴に言ってくれ。」と言ってその場を離れた。



フランキーはそんなオズワルドの後を追うと「待ってください。せめて休みの間はどこにいるのか教えておいて貰えませんか?騎士団に何かあったら困るのです。」と食い下がった。

「ったく、お前も大概しつこいな。旅だよ。旅に出るんだ。とは言っても俺だって自分の立場は弁えているつもりだ。この国を回ろうと思っている。」そう言ってフランキーを振り払おうとした。その時フランキーがオズワルドの上着の袖をグイッと引っ張った。



「おい!今度は何だ?」そう話してフランキーを見ると彼は何か考え事をしていた。そして眼鏡をそっと押し上げると口を開いた。

「いえね、実は私も休暇が溜まってるんです。良かったらおつきあいさせて下さいよ。迷惑はかけませんから。それに私は地方は詳しいですよ。いつも騎士団の乗り物や宿泊の手配は私がやっていますからね。名産や特産にも詳しいですよ。」と言った。

「・・・それは確かに魅力だな。良いよ一緒に行こう。それよりお前に相談があるのだがお前【幻の酒】って知ってるか?」

「あぁ、聞いた事はありますよ。私はあまり飲めないので興味がなかったんですが。・・・もしかしてそれをお求めに?」

「あぁ、飲めないとなったら飲んでみたくないか?興味がおこらないか?実はそれが今回の旅の目的だ。」とオズワルドが言った。

「・・・そう言われれば確かにそうですね。少しお時間ください。まず方向だけでも何とか探してみましょう。とりあえず出発はいつですか?」

「いや、そこまで急いではないんだ。お前の調査次第にしようか?お前の方で旅の日程を組んで見てくれ。」

「分かりました。ではこれから調べてみます。今日はこれからお屋敷へお戻りになるんですね?明日にでも何か話す事ができると思います。明日の夕食を一緒に摂りませんか?」

「あぁ良いぞ。近くの飯屋で良いか?」

「あぁ、夕凪亭ですね。では19時に行きます。それでは失礼します。」と言ってフランキーは去っていった。

オズワルドは「まぁ、気軽な一人旅と思っていたが連れがいるのも良いかもしれん。」と言いながら自分の屋敷に戻って行った。その後ろ姿をある男が物陰からじっと見つめていたのも気づかずに。
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