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3、カルスとカレン。ファースト家の双子
しおりを挟む時が流れファースト家が赤ん坊を預かってから十五年がたった。
ケインとリリアナの子どもは女児だった。
しかしデニーロの赤ん坊と一緒にされたデニーロの赤ん坊は「カルス」と名付けられた。ちなみに女児の方は「カレン」と名付けられた。
幸いカレンもカルスもどことなく顔が似ており、祖父母たちも大して疑うことなく時が過ぎていった。
しかし夫婦だけの胸に秘めておくのは無理だと判断し、カレンが13歳の頃『カルスは訳があって我が家で預かっている女の子なの。もうすぐカルスは遠い寄宿舎に入れるから、それまではバレないように協力してね。』と話しておいた。
カレンは話がわかる賢い女の子だったので、
『大丈夫よ心配しないでお母さん。カルスはイタズラ好きな立派な男の子だし、第一カルスには私がついてるわ。安心して?』と話した。
【私たちは個人のプライベート空間を尊重します。】と立派な謳い文句の寄宿舎をリリアナが探して見つけてきた。
『えー、僕ここが良いよ~家から出たくないよ!!』とブーたれるカルスを説得したケイン夫妻は、16歳になるとこの国の貴族の子息がマナーや社会性を学ぶための専門の学校に入学するのに対し、カルスは専門学校には入らずその寄宿舎に入った。カレンは専門の学校だ。
カルスの入ったその寄宿舎は【ディードリッヒ学園】という宗教系の学校である。
この学校でしっかりとカルスは男性として過ごしている。
◇
「何だとぉこのやろう。一度表にでろ!!」
「あぁ、何度でも言ってやる。豚野郎。お前に食わせる飯なんてない!!」
首都ドーランから少し離れたドミニカだ。
学校の授業は午前中に終わってしまい、カルスは友人のアラジンと街へ繰り出していた。「おい。アラジン~あそこにいる女の子って可愛いよな~。胸もデカくて俺好みだ。おい、声かけに行かないか?」
「おいおいカルス。お前本当に巨乳好きだよな。俺はこう、もっと、なんだ、ささやかな胸の方がいいんだよなぁ~」
「嘘だろ?やっぱ女は巨乳に限るよ。チッ、夢もロマンもない奴め。」
「うるさいカルス。お前この前も2人連れにアタックして粉砕してただろ?もう忘れちまったのか?」
「あぁ~~。忘れた忘れた。俺は現実に生きる男なんでね。」そんなことを話しつつ、街角で立ってるいい匂いのお姉さんたちと軽~い会話を楽しんだり、最近よく街角に立ってる通称【猫オヤジ】に話しかけたりした。
この猫オヤジはいつも猫を抱っこしていて、街中の子供達にどれだけ話しかけられても『にゃ~、にゃにゃ』としか答えないのだ。もちろんオヤジと呼ばれるからには小太りした立派なオヤジである。
このオヤジをからかって遊ぶのがカルスの最近のお気に入りの遊びの一つである。さんざんからかって遊んだあと、笑いすぎで涙を流しているアラジンに「おい、そろそろあっち行こうぜ?」と裏通りの方へ誘った。裏どおりにはカルスたちが学生と分かっていても、ちょっとだけタバコを流してくれる気のいいお兄さん達がいたりするのだ。しかしこの日出会ったのはタバコのお兄さんではなかった。
「・・・・・・やめてください。ここを通してください。友人が待ってるんです。」と裏通りから少し入った路地裏で女性の話し声が聞こえた。
「おいカルス。あれ見てみろ。ユーニスの奴だ。女の子に食事を誘って絡んでるぞ?かわいそうにな。ユーニスってしつこくて有名だからなぁ。っておい、カルスちょっと待てよ!!」ユーニスはカルスたちより1つ上の先輩だ。ぶくぶくに太ったボディがトレードマークだった。
「おい、豚野郎。女の子が困ってるじゃん。お前のその汚い手離せよ。女の子が脂っぽくなるじゃねぇか??」
「ふん!誰かと思ったら男女のカルスか。こんなところで油うってないでドレスでも着て女らしく刺繍でもしてたらどうだ?」ユーニスはそう話すとガハハと大笑いした。
その瞬間「ぶっ!!」その顔面に素早くカルスのパンチが入った。
「何しやがる!!」
「うるせえよ豚野郎。ブーブー鳴くな。笑えるじゃないか」カルスはとにかく三度の飯より喧嘩好きな男の子に育った。襲いかかってくるユーニスの鳩尾に一発入れるとユーニスは意識を失った。
カルスは絡まれた女性の方を向くと「おい、お姉さん。ここは危ないよ。連れがいるなら早く行けよ。そしてこんなとこ二度と入ってくるな。」と言ってアラジンが待つ方向に向かって足早に歩き出した。
「おい!カルス。待てよ置いてくなよ!!」
「あぁ、行くぞアラジン。」そう話すとカルスはアラジンを連れ足早にこの路地裏を去った。
カルス達が立ち去るその後ろ姿をじっと見つめる小柄な男性の姿があった。
「・・・・・・ははっ。これは思わぬ逸材だな。金の卵に巡り合ったな。そう思わないか?シフォン?」
「もう、あなたがさっさと来てくれてたらこんなところで絡まれずに済んだのに。でも体の線は細いのにすごく強い子だったわね。」
「生まれついての格闘センスのものが違う。もう一度巡り会えたら口説いてもみてもいい。」
「まぁ。リカルド、あなたが人を褒めるって珍しいこともあるものね。貴方は世界最強と呼ばれている剣聖よ。それも今は無くなったとされている流派の師範代でもあるしね。」
「今の子だったら私の後を継げるかもしれない。それぐらいしなやかな足腰と相手との間合いを図れるセンスがある。」そう話しながら先ほどカルスが助けた女性と一緒に街中に消えて行った。
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