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60、セント・ホーリィ島

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次の日の朝。セント・ホーリィ島に着いた。

とても小さな島だ。人口も精々50名程度だと言う。今はオフシーズンだが、海水浴シーズンになると多くのバカンスを楽しむ人々が押しかけその時期は島が賑わうと港の観光客用のパンフレットに書いてあった。

アルフォンスと共に下船し、近くのカフェで朝ごはんを食べた。この人と両想いになったのが今でも信じられない。私、かつてこの人の事嫌いだったのに。今は何だかくすぐったい。

「ここを見てアニエス。」とアルフォンスがカフェのテーブルに地図を出してある場所を指差した。

「聖人伝説と教会」と書いてある。

「1番にここへ行って見ないか?ヒントがあるかも知れない。ここからなら馬車で15分も有れば行けると思う。」と聞いて来た。

「わかったわ。まずそこへ行って見ましょうか?」と同意すると、港の事務所で馬車を頼み、まずそこの教会を目指した。

この島は比較的坂が多い。ゆっくりと馬車が小高い山の中腹に上がって行く。

教会の近くまで来たら馬車から降りた。辺りを見渡すとここからだと港が一望出来る。海の蒼色がとても美しい。たくさんの海鳥が飛んでいて、キラキラと海面が光っているのが見える。

アルフォンスが、30分ほど経っても我々がここへ戻って来なかったら帰っても良いと御者に伝えていた。

しばらく歩くと教会が見えて来た。割と大きな教会だ。周りを歩いて見たが花ひとつ無い殺風景な教会に思える。

教会の前で1人の中年男性が掃除をしていた。その男性に「すいませんがここの責任者の方にお会いしたいのですが?」と話しかけた。

その男性はアニエスの方をチラっと見ながら「呼んで参ります。しばらくお待ち下さい。」と箒を片付けて教会の中へ入って行った。

中々責任者が出て来なかった。

しばらく待っていたが出て来る気配が無かったので、アルフォンスと共に「失礼します。」と断り礼拝堂の中へ入って行った。

中を見渡すと中央の石像と椅子以外はがらんとしていたが、何となくアニエスは血が騒ぐ様な自分の体に違和感を感じた。

次の瞬間、アニエスの家宝の剣を収めているホルダーから家宝の剣が飛び出して、礼拝堂の奥へ消えて行ったのだ。

「えっ、どうして?何故?」と礼拝堂の奥へ走って行き、その場所を覗き込もうとするが剣が消えた辺りには何も無かった。

「どうして?大切な剣なのに!!」と消えた辺りを見ながら困惑していた。

その時だった。「すいません、お待たせしました。私がここの責任者であり神官です。」と礼拝堂の傍から1人の男性が出てきた。

色が非常に白く金色の長い髪を持つとても美しい男性だった。下手をすれば女性の様にも見える。

アルフォンスやオスカーと比べてみても比べるなんて出来ない。

でも不思議な物で、美しい顔だと思うのにどんな顔かと聞かれると何の特徴も思い浮かばない。そんな顔だ。

この人が神官?

なんて人間離れしたオーラなの?とアニエスは感じていた。隣のアルフォンスを見ると同じ事を思っていたみたいで私を見て頷いている。

「久しぶりですね。勇ましいお嬢さん。」と話し出した。この言葉はアニエスをびっくりさせた。隣でアルフォンスがアニエスを凝視している。

「どうして?私は初対面のはずですが?」

「いえ、一度会ってますよ。あまり治安は良くない場所ですけど。」とにっこり笑った。

「これに覚えは無いですか?」と懐から仮面を取り出し、うつむくとその仮面を嵌めて顔を上げた。

確かに。確かに出会ってるわ。
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