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55、オスカー団長のギフト
しおりを挟む「いい加減放してくれないか?」と絶対零度の表情のアニエス。
「まぁ、そんな事言わずにさぁ。ちょっとどこかでご飯でも食べようよ。もちろん奢るよ。」
ここは帰りの馬車を捕まえに来た街中だ。
無駄な美形のコイツのお陰で目立って仕方ない。腕を先ほどから掴まれて居るがこんな所で大立ち回りもしたく無いしな。
「どうして私がここに居るのがわかったのか教えてくれたら付き合うよ。」と言うと
「アニエス、アトランティスの諜報を舐めるんじゃ無いぞ。毎日朝一番に乗船名簿が届く様になっている。アルフォンスから君が家から出た事は聞いて分かってた。」
あんのお喋り野郎。
「それにアニエス、君に個人的に聞きたい事がある。」とまで話すと耳元で小さな声で「セガールとの戦いの事だ。」と言った。
「アルフォンスからも聞いている。でも君の口から直接聞きたい。」と熱っぽく口説かれた。
仕方が無いのでオスカーの馬車に乗る。そう言えば私も聞いてみたい事が1つだけあったな。
「ねぇ、オスカー私も1度聞いてみたかったんだけど。」と話しかけた。
「何だいアニエス。何でも聞いてくれ。」と何が嬉しいのかにこにこしている。
「貴方は私の知る限り、私以外のたった1人の転生者よ。ギフトは無かったの?」
それまで笑っていた表情を一変させ「あるよ。」とあっさり言った。
「えっ、何なの?教えなさいよ。」と言うと
「それがあんまり役に立たないんだよな。いやそんな事はないか。。。」とどうにもはっきりしない。
「私のだけ知ってるなんてずるいわよ。教えなさいよ。」と言うと
「うーん、じゃあアニエス、キスしてくれる?」とのたまった。
「貴方この世に未練はないのね。」と握り拳を掲げて話すと、夜這いの時に2階から放り出された事を思い出したのか、
「そっ、そんな事は無い。。。。私は人の心が読めるんだ。」と言った。
何と奴は精神感応系だったか。これは意外。
「でも限定的な所が有って、まずギフト能力者の心は読めない。」
「もう1つ、読めるのは初対面の人の初めの1分間だけ。なっ、使えないだろ?よほどきみの能力の方が使えるよ。」と苦笑いしていた。
オスカーは苦笑いしているが、本来ならギフト能力はそんな物だ。セガールみたいなのが可笑しいのだ。本当にあり得ない。
「でも間者は防げるな。」と慰め?の声をかけて置いた。
「さぁ、アニエス着いたぞここだ。中々美味いぞ。アトランティスにかなり来てくれて居るのにアトランティス料理を1度も食べたこと無いだろう。」と得意げにオスカーが話した。
なかなか高そうだ。と言うか私のこの格好では無理だ。
オスカーと馬車を降りると、いきなり抱き上げられた。
「何をするんだ。降ろせオスカー!!」
「じっとしててアニエス。悪いようにはしないから。」とレストランに隣接するブティックへ連れ込まれた。
「まぁ、綺麗な子ねぇ、そして何てバランスの取れた綺麗な体。」と声が聞こえて来た。
オスカーは「マダムこの人を頼むよ。」と言うとアニエスを降ろしてさっさと部屋から出て行った。
「まぁ、こんな綺麗な子を、更に見栄え良くするのね。腕がなるわ。」と声のする方へ顔を向けると豊満なマダムが微笑んでいた。
「貴女、肌の色が白いのね。じゃあこんなお色はどうかしら?」と持って来たのは淡いブルーのドレスだった。少しボディーコンシャス気味だが決していやらしくない。
肩が露出するのでシフォンのスカーフをかけて貰った。
靴は同色のヒールを合わせ、メイクを施され髪はハーフアップに結い上げられた。
服に合った上品なアクセサリーを付けると「さぁ、お嬢さん如何かしら?」と鏡の前へ立たされた。
「こんな物でどう?オスカー?」とマダムが話すと物陰からオスカーが出て来た。
「なんて美しい。アニエス。」とアニエスのドレスと同色のチーフを指したフォーマルなスーツを着こなしたオスカーがそこに居た。
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