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54、カノンの呪文

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「まあ、アニエスさん、ミリアン先生ようこそいらっしゃいました。」とソファーに座って早々にお茶を出された。

アニエスはハーゲンの港の売店で慌てて買っておいた手土産を渡した。
カノンのお母さんは手土産を受け取りながら


「アニエスさん、それ凄いですね。お家の方に怒られたでしょう?」やはり皆さん同じ事をおっしゃる。皆さんそう思うのか?

「カノンは普段はギフトを使わないんですよ。でも月に1度から2度ほど王宮の研究室で力を研究しています。その時だけ力を使っているんですよ。」とおっしゃってました。

「お姉ちゃん痛かった?それ痛かった?」と無邪気に聞いてくるカノン。

「とおっても痛かった。本当に痛かった。あっ、カノン、レンブラント騎士団に可愛いお手紙ありがとう。騎士団の前の大きな廊下に張り出してね、騎士団全員で読ませてもらった。上手に書けてたね。」と褒めると照れるのか体をくねらせながら「へへへ~。」と笑ってた。


「お姉ちゃん、じっとしててね。カノンが治してあげる。目もつぶってて。」

「こう?カノン?」と目をつぶると

「痛いの痛いの飛んで行け~。」とカノンの可愛らしいギフトを使う時のおまじない?の声がする。心なしか患部がふわりと温かくなるような気がした。

「アニエスお姉ちゃん治ったよ。」とカノンが言うと

「アニエス、私が確認しよう。」とミリアン先生が席を立ってくれた。

ゆっくりガーゼを外すミリアン先生。何だかドキドキするわね。ガーゼを外すとうんうんと頷きながら

「よかったわね。アニエス。すっかりきれいに治ってるよ。」と話すとカノンのお母さんが気を聞かせて鏡を持って来てくれた。

「本当だ。」と思わず鏡で確認しながら手で触って見た。「ありがとうカノン。」とカノンの方へ向かって礼を言うと「お姉ちゃんもカノンを直してくれたからお相子だよ。」と笑っていた。

それから少しカノンの普段の話を聞いて、お家をお暇した。

ミリアン先生と帰り道で、アトランティスでギフト研究が始まり、カノンを始めギフト能力者が国から給付金を受けられるようになったと聞いた。なのでカノンの家もお母さんが働いてはいるが無理をするような事はなく、生活も安定するようになったらしい。

ディアッカの事は箝口令が引かれ、貴族はもちろん一般の人も知らない事になっている。

「それよりアニエス王宮には寄って行くの?我が国の騎士団長には、全然チャンスはないわけ?」とニヤっと笑いながら聞いて来た。

「もう、ミリアン先生止めて下さいよ。
そんなのないですよ。有る訳ないじゃないですか~。」とそこの所はキチンと否定しておいた。

「そうなの?面白そうだったのに。」って人の事で遊ばないでよ。

2人で話をしながらミリアン先生の診察所へ戻る途中、突然何を思ったのか

「ねぇ、アニエス。貴女大変ね。」と話した。
「ほら、見てみなさい。」とミリアン先生の目線の先にオスカー団長が居た。

なぜ?どうして?今回はお忍びよ。どうしてわかったの?

「やぁ、アニエス水臭いぞ。ひとこと言ってくれたらここまで案内ぐらいしたのに。」と手を挙げて爽やかな笑顔で話しかけて来た。

アホな。自分に夜這いをかけようとした男なぞ誰が頼れるか。

「じゃあ、ミリアン先生ありがとうございました。」とその男の事はまるっと無視し、ミリアン先生とはその場で別れ馬車を拾いに街の方へ歩き出した。












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