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53、カノン再び

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無事に船に乗り、コーヒースタンドで1杯のコーヒーを貰う。甲板に出てゆっくりとコーヒーを飲みながら

ここらではっきりさせておこうか?

と考えていた。

ずっとつけて来ている男が居る。たぶん1人。敵意は無さそうなので放って置いてるが。

船の上は不味い。乗客がいる。下船した時にやってみるか?


相手の気配を感じながら船上で過ごし、とうとうアトランティスへ着いた。港に入港するとアニエスは早々に下船準備を始めた。
船のタラップが下がると、さっさと下船するアニエス。お手洗いの方へ向かうと急に物陰に姿を消した。

目的を見失い焦る男。

その男の後ろからナイフを突きつけ「私はここですが何か御用ですか?」と聞いてみた。しばらくの沈黙の後

「すまない。私は雇われてここにいる。」
「誰に雇われたの?言いなさい!!」
「ああ、こうなった事を見越して依頼主を明かす許可は得ている。オーチャード家だ。」
「やっぱりね。アルフォンスに伝えて置いて。こそこそしないでって。」
「ああ、分かった」

その男とその場で別れ馬車を予約しに行った。程なく馬車も捕まりミリアン先生の住所を告げると港からはそう遠くない場所だった。
1時間ほどで着くと言う。これは助かった。

ミリアン先生の住所は診療所の住所だった。

ドアを開け診療所へ入ると女性スタッフの方が「こんにちは。今日はどう言った症状でした?」と聞いて来た。

「すいません、こちらをミリアン先生にお渡し下さい。」とエミリアさんから預かった手紙を渡した。

「分かりました。すいませんがしばらくこちらでお待ちください。」と待合の椅子を勧められた。

数分ほどたつと、白衣を着たミリアン先生が現れた。
「アニエス久しぶり。カノンの時はお世話になりました。手紙読んだわ。あと少しで診察が終わるからそのままそこで待っててくれる?」と早口で話すと再び診察室へ消えた。


お待たせアニエス。と現れたミリアン先生は私服だった。
「カノンの所はここからそんなにかからないわ。歩いて行きましょう。」と言われたのでゆっくりと歩き出した。

ミリアン先生は歩きながらしげしげと顔のガーゼを見て「まあアニエス派手にやった物ね。親御さんカンカンだったでしょう?」と話し出した。
「ええ、母親は卒倒してました。父親には二度と騎士団に帰さないとまで言われてしまいました。」

「そりゃそうよね。所であのイケメンの団長さんとはどうなったの?」

「えっ、どうしてですか?そんな、、、何もないですよ。以前もそう言ったじゃないですか。」

「どうして?だって彼いつも貴女を見ていたわよ?たぶん気が付いてないの貴女だけじゃない?彼かわいそうに。」・・・・何それ。そんなの全然知らない。

「そろそろカノンの家よ。カノン、家にいると良いけど。」とミリアン先生の目線の向こうに小さな一軒家が見えて来た。
よく見ると外で子供が遊んでいる。あれはカノンかしら?

「カノンー!!アニエスが遊びに来てくれたわよ~。」とミリアン先生が叫びだした。あっ、こっちを向いたわ。

「ホントだ!!アニエスお姉ちゃんー!!」と手を振っている。

うわあ、カノン大きくなった。凄い。あの時の面影が無くなってる。

「こんにちはカノン、お母さんはお元気?」と聞くと「うん、お家にいるよ。」とニコニコ笑った。やっぱり可愛いな。和むわ。

カノンの家の玄関まで着くとカノンはドアを開け「お母さん、ミリアン先生とアニエスお姉ちゃんが来たよ~。」家に向かって叫んでいた。もう、か弱さの欠片もないわね。本来はこれぐらい元気で当たり前だもの。


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