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48、アルフォンスの絶対負けられない戦い
しおりを挟む辺りと見渡すと湖が見える。見た感じは割と大きな湖だ。水は綺麗か?
人間の体を冷やせるぐらいの水量があるのか?
近くまで駆け寄って確認すると深い所ではアルフォンスの胸元近くまでは有りそうだ。これならどうにかしたら冷やせるか?
アニエスを抱き上げ湖のほとりへ連れてきた。
まだ意識は戻らない。頬の傷も痛々しい。
とてもじゃ無いが今は人の目など気にしてられない。一刻も早く体を冷やさなければ。
自分の制服を脱ぎ下着になると、アニエスの制服も脱がせ肌着にさせた。この時だけはなるべく余計な事は考えない様にした。
再び抱き上げ足元に気をつけながらゆっくりと湖へ入って行った。
湖の水温は結構な冷たさだが、アニエスの体温が中々下がらない。急激な体温低下を防ぐ為、アニエスの体を抱え抱きしめながら水へと浸かる。
「頼むから目を覚ましてくれ。これ以上俺の理性を試すな。」とアニエスの顔を見ながらボヤく。
時間が経つのも忘れた頃、「うぅ。」とアニエスがうめいた。
「おいっ、おいっ、目を覚ましてくれ。」と必死にアニエスに呼び掛ける。
その声に反応したのか薄らと目を開けた。もう目の色はアルフォンスが以前からよく知っているいつもの碧眼に戻っていた。
「えっ、きゃ、きゃあ!」驚きから体勢を崩すと途端に水の中へ倒れ込むアニエス。
アルフォンスは水中に落ちてしまったアニエスの手を素早く引っ張り上げ、再び抱きしめ直した。
頭上からアルフォンスの声が聞こえる。
「頼むから落ち着いて聞いてくれ。
お前、戦った後倒れたんだ。覚えてるか?」
「あぁ、意識が無くなったのは覚えている。」
「急いで介抱したが、お前の体が異常に熱くて。何か冷やせる物が有れば良かったんだが、これぐらいしか思い浮かばなかった。すまない。」
恥ずかしくて顔を上げられない。ちょうどアルフォンスの素肌の胸元にアニエスの頬があたる。アニエスを抱きしめているその腕は、普段は制服で隠れているが筋肉質の逞しい腕だ。
「ちょっともう少し浅瀬に移動する。体は大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫だと思う。」と顔を伏せたまま返事をした。きっと顔が真っ赤だ。恥ずかしい。
浅瀬に移ると足元を確認しながらゆっくりとアルフォンスから離れた。
「アルフォンスありがとう。私はもう少し体を冷やしてから上がる。向こう向いてるから先に上がってて。」とアルフォンスに背中を向けて話した。
「あぁ分かった。でも無理はするなよ。」とアニエスにひと声かけると岸へと上がって行った。
アニエスは体を水に浸しながら恥ずかしさに耐えていた。恥ずかしい。恥ずかしすぎる。
私は一体どれぐらい意識が無かったの?よりに寄ってアルフォンスなんて。
しばらくすると
「おーいアニエス大丈夫か?俺はあちらへ行っている。その間に上がってこい。」と制服に身を包んだアルフォンスが岸から叫んでいた。
アニエスは後ろ向きのまま右手を上げて合図した。
アニエスはパシャっと湖の水で顔を洗うと、ゆっくり岸へと上がって行った。
ひと気が無いのを何度も確認して、素早く肌着を脱ぎ絞った。再び肌着を身に付けると
制服があったのでポケットからハンカチを出し体を拭き始めた。面積足りないけど仕方ない。
何度もハンカチを絞りながら体を拭き続け、何とか制服を着られるぐらいには渇いた。
良い天気だったのも功を奏した。でも下着も濡れてしまっているのでやはり気持ち悪い。
気怠い体を叱責し、制服がなんとか着れたのでアルフォンスの方へ歩いて行くと、自分達が乗って来た馬を連れていた。
「乗れるか?アニエス。無理なら言ってくれ。馬車をこちらまで回させる。」
「大丈夫だ。問題ないよ。みんなの所へとりあえず戻ろう。」
嘘だ、本当は疲労から立ってるのがやっとだ。意識も朦朧としている。でもそんな事は死んでも口にしたく無いので歯を食いしばる。
やっとアンソニー達と合流した時はホッとした。暴動は無事に終息したとの事だった。帰りの馬車は情け無いが爆睡だった。
眠りから覚めると知らない天井が見えた。制服も着替えさせてあった。ここはどこだ?
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