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37、それから

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あれからアニエスは素の顔に戻るまでの2~3日、王宮の離れに閉じ込められていた。まぁ、当たり前だ。このまま外に出たら大騒ぎになってしまう。

そんなアニエスの元にせっせとオスカー団長が通っていた。

「アニエス、好きなんだ。お願いだ。ここに残って貰えないか?私と共に生きてくれ。」と熱心に幾度となく口説いていた。


そして何を血迷ったかある夜、とうとう夜這いをかけた。


「グワッ」叫び声が上がるのと同時に「バリンッ」と窓ガラスが粉々に割れ外にぶっ飛ぶオスカー団長。

落ちて行きながら「ここ2階~!」と叫んでいた。


アニエスは「ガチャ。」とドアを開けて部屋から出ると、何事も無かったかのようにすたすた歩いて騎士団の寮へ帰って行った。


次の日の朝、食堂で右頬を赤紫に染め上げ、試合帰りのボクサーの様になったオスカー団長が優雅に朝ごはんを食べていた。




あの後、すぐさまハノイ騎士団がクーデターを起こし臨時の行政がひかれた。

マリィの母親をはじめ捕らえられていた人々がハノイ騎士団の保護の元それぞれの国へ帰って行った。

アダム王、リネカー、王妃と王子は誘拐を示唆したとして牢で繋がれた。またこれとは別に王妃には公庫の使い込みの疑惑がかけられている。近く裁判が行われるそうだ。

神殿には新しい神官長が迎えられ、亡くなった人々に祈りを捧げる事も日常的に行われている。


ただあの時、リネカーの手足となって働いていたギフト能力者達は、ノイリを初めセガールはもちろん、声を使う能力者も脱走し見つかってはいない。

特にギフト能力を強化するギフトの持ち主とは?ここら辺は事情聴取に期待するしか無いな。



そして、アニエスの顔が元に戻りアルフォンス、アニエスが両名がレンブラントに帰る日。


馬車に乗り込もうとする2人に

「アルフォンス団長、アニエス殿、今回の件では本当にお2人には世話になった。」とオスカー団長が謝意を述べて来た。

アルフォンスが「いえいえ、事件が解決して本当に良かったです。我々もレンブラント国民もこれで一安心です。」答えていた。

オスカー団長は続けて「これからオーロラ王女を宜しくお願いします。」とおじぎをした。

「わかりました。任せて下さい。」と笑いながらアルフォンスが答える。

「では失礼します。」と一礼し、アルフォンスが御者に声を掛けると馬車が走り出した。




◇◇◇◇◇◇◇



そして今日、レンブラントではマーク王子とオーロラ王女が華燭の典をあげていた。

国中を挙げてお祝いムード一色だ。
花火が上がり、仕事は休みになり、恩赦も実行された。

街中では号外が出され無料のアルコールが所々で振る舞われている。もちろん子供はおやつだ。至る所で花々が飾られ公園では芸人たちがパフォーマンスに興じていた。

レンブラント王宮から幸せな2人のパレードが出発した。

先頭は装飾を施されたアルフォンスとアニエスの馬だ。もちろんレンブラント騎士団の団服着用である。

幸せな2人が乗る馬車を追随するのはケリーとフェリスの馬だ。

この日はレンブラント国全体が和やかなお祝いムードに包まれて幸せに過ごした。



マーク王子とオーロラ王女の華燭の典から1週間後、アニエスはエミリアの元を訪ねていた。
どうしても気がかりな事があったのだ。

そうディアッカの妹の事だ。もしかしてと考えている事がある。


「エミリアさん、ギフト避けの時はありがとうございました。ギフト避けがとても良かったので今日はお礼に伺いました。」と感謝の言葉を伝えながらアトランティスで買ったお土産を手渡した。

エミリアは「そんな、御礼なんていいのに。」と笑っていた。

「所でエミリアさん、ちょっとお聞きしたいのですが、ギフト能力って発現する時にうーん、上手く言えないんですが、体にトラブルを起こしたりってします?」と聞いてみた。

「あっ、あぁ~たまにあるよ。ここレンブラントではまだ周知してないけどね?それがどうした?」

「エミリアさん、それが子供だとしたらどうなります?」

「良くあるパターンさ。要は力の出しどころがうまく行かないんだよ。体内に力が回ってしまい食欲を減退させてる事が多いなぁ。誰かいたのか?」

「はい、その子と一度も会った事が無いので詳しくはわかりませんが、その子のお兄さんがギフト能力者でした。その子をここに連れて来ても良いですか?他国に住んでいるのでちょっとすぐには無理なんですが。見てやって貰えます?」と頼んで見た。

「あぁ、そんな事はお安い御用さ。本人も家族も苦しんでいるだろうから、もし可能なら早めに連れて来ておやり。」とアニエスにお茶を手渡しながら答えてくれた。
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