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27、進む時間
しおりを挟むその頃、アトランティス国でとある出来事が騎士団の話題を浚っていた。
「オスカー団長、もう聞かれましたでしょうか?」と部下のゲイルが執務室まで訪ねてきた。こいつは我が忠臣と言っても過言ではない。私がこの世界に転生をしてからと言うもの公私共々ずっと世話になりっぱなしだ。
「何の事だ?」と言ってはみるが薄々見当は付いている。
「レンブラント騎士団が自国の湾岸警備隊と連携してハノイ国の船を拿捕したそうですよ。こちらにも情報が回ってきています。」
「ああその事か。詳細を読ませてもらったよ。
さすが我がライバル、レンブラント騎士団だな。」と話しながらレンブラント騎士団に所属する、自分が惹かれて止まない、恐ろしく腕っぷしの強い赤髪の女性騎士を思い出す。
・・・・殴られたのは痛かったなあ。今度はもっと上手くやろう。
「その中の情報でオーロラ殿下の事が触れられていましたよね。その件について王が対策チームを設けよ。とおっしゃっています。」
まあそうだろうな。あんな話聞かされて平常心ではいられないな。自分の娘が既婚の中年男に懸想されているなんて。
「オーロラ殿下の婚約を急ぐように既に進言はしてある。オーロラ殿下はレンブラントの第1王子に思いを積のらせていらっしゃるよ。」と肩をすくめてゲイルに話した。
「そうなんですが、ちょっとここだけの話をしたいと思います。」と言い出したので椅子から立ち上がり部屋のドアを開け周囲に人がいないかどうか確かめた。
「大丈夫だとは思います。念のため人払いはしてきました。」
「話を聞こうか。何だ?」
「・・・・ディアッカの奴です。」とオスカーに目線を寄越した。
「ああ、今も臨時休暇を取っているな。あいつが何かあるのか?」
「・・・・我々は王家の人間を直接警備する近衛騎士です。入団する時に厳しい調査が行われますし、入団後も抜き打ちで素行も見ています。もちろんその家族も調査対象者です。」
「そうだな、もちろんそれはわかっているよ。」
「はい、私が異常に気が付いたのは半年前ぐらいですね。」
「ディアッカは確か平民上がりです。別に実力があるのでそれは気にしません。ただ。。」
「ただ、どうしたんだ?」
「我々は常に危険に晒されていますので、文官や宰相に比べると給与もそれなりに頂いています。」
「ディアッカは父親に早くに死なれ、母親と妹の3人暮らしです。今は寮に入っていますがね。」
「恐らくですがディアッカの給料で生活している状況だと思われます。つまりディアッカの一馬力で、ほぼ生計を立てていると。」
「だから何だ?まどろっこしいぞ。」
「いやあ、以前医務局の奴に言われたんですよ。騎士団ってこんなに給料がいいのかって?」
「ん?なぜだ?」
「ディアッカの妹が半年ほどで高額医療を3回受けています。国指定の難病患者ですからね。治療費が一部助成がでます。ですから使われると直ぐに、国に報告が上がってきます。」
ゲイルはどう思う?と言った表情を私に向けて来た。
「しばらく泳がせるか・・・」
「そうされると良いのではないかと。オーロラ殿下の婚礼が整うまでは、ディアッカを外す方向で行きましょう。」
「そうだな、ディアッカの調査は増員しろ。こちらのオーロラ殿下の情報も流されている可能性がある。そしてゲイル、オーロラ殿下付きの近衛騎士の再編を命じる。」
「分かりました。直ちに行います。」
ここまで話すとオスカーに一礼し、ゲイルが部屋から出て行った。
さて、どうするか?
ディアッカが嚙んでるとしたら、かなり厄介だ。何としてでも早急に突き止めなければ。
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