上 下
28 / 67

27、進む時間

しおりを挟む



その頃、アトランティス国でとある出来事が騎士団の話題を浚っていた。

「オスカー団長、もう聞かれましたでしょうか?」と部下のゲイルが執務室まで訪ねてきた。こいつは我が忠臣と言っても過言ではない。私がこの世界に転生をしてからと言うもの公私共々ずっと世話になりっぱなしだ。

「何の事だ?」と言ってはみるが薄々見当は付いている。

「レンブラント騎士団が自国の湾岸警備隊と連携してハノイ国の船を拿捕したそうですよ。こちらにも情報が回ってきています。」

「ああその事か。詳細を読ませてもらったよ。
さすが我がライバル、レンブラント騎士団だな。」と話しながらレンブラント騎士団に所属する、自分が惹かれて止まない、恐ろしく腕っぷしの強い赤髪の女性騎士を思い出す。

・・・・殴られたのは痛かったなあ。今度はもっと上手くやろう。

「その中の情報でオーロラ殿下の事が触れられていましたよね。その件について王が対策チームを設けよ。とおっしゃっています。」

まあそうだろうな。あんな話聞かされて平常心ではいられないな。自分の娘が既婚の中年男に懸想されているなんて。

「オーロラ殿下の婚約を急ぐように既に進言はしてある。オーロラ殿下はレンブラントの第1王子に思いを積のらせていらっしゃるよ。」と肩をすくめてゲイルに話した。

「そうなんですが、ちょっとここだけの話をしたいと思います。」と言い出したので椅子から立ち上がり部屋のドアを開け周囲に人がいないかどうか確かめた。

「大丈夫だとは思います。念のため人払いはしてきました。」

「話を聞こうか。何だ?」

「・・・・ディアッカの奴です。」とオスカーに目線を寄越した。

「ああ、今も臨時休暇を取っているな。あいつが何かあるのか?」

「・・・・我々は王家の人間を直接警備する近衛騎士です。入団する時に厳しい調査が行われますし、入団後も抜き打ちで素行も見ています。もちろんその家族も調査対象者です。」

「そうだな、もちろんそれはわかっているよ。」

「はい、私が異常に気が付いたのは半年前ぐらいですね。」

「ディアッカは確か平民上がりです。別に実力があるのでそれは気にしません。ただ。。」

「ただ、どうしたんだ?」

「我々は常に危険に晒されていますので、文官や宰相に比べると給与もそれなりに頂いています。」

「ディアッカは父親に早くに死なれ、母親と妹の3人暮らしです。今は寮に入っていますがね。」

「恐らくですがディアッカの給料で生活している状況だと思われます。つまりディアッカの一馬力で、ほぼ生計を立てていると。」

「だから何だ?まどろっこしいぞ。」

「いやあ、以前医務局の奴に言われたんですよ。騎士団ってこんなに給料がいいのかって?」

「ん?なぜだ?」

「ディアッカの妹が半年ほどで高額医療を3回受けています。国指定の難病患者ですからね。治療費が一部助成がでます。ですから使われると直ぐに、国に報告が上がってきます。」

ゲイルはどう思う?と言った表情を私に向けて来た。


「しばらく泳がせるか・・・」

「そうされると良いのではないかと。オーロラ殿下の婚礼が整うまでは、ディアッカを外す方向で行きましょう。」

「そうだな、ディアッカの調査は増員しろ。こちらのオーロラ殿下の情報も流されている可能性がある。そしてゲイル、オーロラ殿下付きの近衛騎士の再編を命じる。」

「分かりました。直ちに行います。」


ここまで話すとオスカーに一礼し、ゲイルが部屋から出て行った。

さて、どうするか?

ディアッカが嚙んでるとしたら、かなり厄介だ。何としてでも早急に突き止めなければ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

今宵、薔薇の園で

天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。 しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。 彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。 キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。 そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。 彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。

さあ 離婚しましょう、はじめましょう

美希みなみ
恋愛
約束の日、私は大好きな人と離婚した。 そして始まった新しい関係。 離婚……しましたよね? なのに、どうしてそんなに私を気にかけてくれるの? 会社の同僚四人の恋物語です。

光の王太子殿下は愛したい

葵川真衣
恋愛
王太子アドレーには、婚約者がいる。公爵令嬢のクリスティンだ。 わがままな婚約者に、アドレーは元々関心をもっていなかった。 だが、彼女はあるときを境に変わる。 アドレーはそんなクリスティンに惹かれていくのだった。しかし彼女は変わりはじめたときから、よそよそしい。 どうやら、他の少女にアドレーが惹かれると思い込んでいるようである。 目移りなどしないのに。 果たしてアドレーは、乙女ゲームの悪役令嬢に転生している婚約者を、振り向かせることができるのか……!? ラブラブを望む王太子と、未来を恐れる悪役令嬢の攻防のラブ(?)コメディ。 ☆完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

処理中です...