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21、掌中の敵

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牢屋に入れられてしばらくたつと目が慣れてきた。牢屋の見張りは、時々仲間に誘われていなくなる。賭け事に興じているのか時々隣の部屋から歓声が聞こえてくる。

見張りがいなくなるのを確認して、周りにいる人に話しかけて見た。

まだ15歳ぐらいの女性だ。名前はキャサリンと言うらしい。目鼻立ちの整った綺麗な子だ。どことなくアトランティスのオーロラ王女を思い出させる。

「私はこの近くに住むキャサリンと言います。昨日、買い物途中にあのマリィと呼ばれている女の子に連れてこられました。しかしまさかあんな小さな子があんな力を持っているとは思わず。。。。。」

「私にはまだ幼い弟がいます。両親も心配していると思います。早く、早く帰りたい。」と涙ながらに話してくれた。
その泣き声に釣られるかのように周りの子供たちも泣き始めた。

「みんなちょっとこちらへ。」とアニエスのそばに寄せた。

「私はアニエスと言います。この国レンブラントの騎士団に所属しています。今回こちらのハーゲンの要請で今回の調査をしています。申し訳ないですが私に協力をお願いしたいのです。」と落ち着いて説明したを始めた。

「この船が出港するまでが勝負だと思っています、既に騎士団の仲間にはこの船の事は情報が行っています。」

「特に今後事態が急変することが予想されます。その時に私の指示に従ってください。」と話し終わった瞬間見張りが戻ってきた。

怪しまれないようにゆっくり皆から離れる。


転機が訪れたのはその数時間後だった。

「おい、新入りだぞ。またこいつはえらく別嬪だな。」と牢屋に放り込まれたのは何と、美しく着飾ったタチアナだった。

タチアナは見張りの隙を突き話しかけてきた。「上手に変装しているわね、アニエス。また教えてよ。」と普段の様に声をかけてきた。

次の瞬間顔つきをガラッと変え、任務中の顔に変わった。

「アニエス、お兄様からの指示を伝えるわね。これから約一時間後の18時に一斉に騎士団が捜査に入る。そのタイミングで騒ぎを起こすように。方法は任せると言ってたわ。」

「こちらで把握した敵の人数は大体14~15名って所。」

時計を見ると約40分後だ。どうしてやろうか。子供を使う卑怯なやり方が凄く気に入らない。

「みんな聞いて。隅っこに集まって。」と声をかけた。ゆっくりとだが寄ってきてくれた。「タチアナは見張りをみてて。」と監視を頼んでおく。

「これからだいたい30分後に騎士団の一斉捜査が入ります。こちらからは今来てくれたあちらの捜査官と一緒に騒ぎを起こし、皆さんをここから出せるようにします。」

「注意して欲しいのは、我々の指示に従って貰う事もありますが、ここへ連れてきたあのマリィと呼ばれる少女には絶対に近寄らないでください。そして絶対に自分の体に触らせないように。」と念を押して伝えた。

「あと子供が何人かいるので逃亡する際はまずあちらの捜査官、次に子供たち、そして皆さん最後に私が付きます。混乱を避けるために順番を守ってください。よろしくお願いします。」

質問はありますか?と聞いてみたがシンと静まり返っている。

時計を見てみる。あと10分か。タチアナと打ち合わせだ。

「タチアナ、これから作戦を伝えるわね。まずタチアナは仮病を起こして貰う。目的は見張りをこの中に入れること。一芝居打つの。
わかるわね?上手く見張りが入ってきたら後は私に任せて。」と力こぶを作ってみせた。


「分かった。アニエス。お互い上手くやりましょう。」とうなづくとどちら方ともなく拳を「コツ」と合わせた。
勿論そのタチアナの拳にもギフト避けの指輪が嵌められていた。

ふうっと深呼吸するタチアナ。
「痛いっ、あいったたー!!」と大声を出し始めた。なかなかやるじゃんタチアナ。

私もよし乗ったろ!

「貴方、大丈夫ですか。!!どうして、!さっきまで何ともなかったのに。誰か、誰かいませんか!!!」と半ばやけくそのように大声で負けじと叫ぶ。

タチアナ、バレるから笑っちゃダメ。

「何だ何だ!どうした一体?」と見張りがやって来た。しめしめ「さっきまでは普通にしていたのに。。。」と更に話しを盛り込んでいく。

ガチャ、と鍵を開けて閉めてからタチアナに覗き込む見張りの男。
一瞬で背後に回り三角閉めで相手の意識を落とした。目でタチアナに合図すると見張りの腰から鍵を取り素早く門のカギを開けた。

「焦らなくて大丈夫だから。」と皆を牢屋から出した。

念のため見張りに猿轡を噛まし、手足を縛り牢屋に鍵をかけた。

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