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8、初めての任務

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初めての合同訓練から1週間たった。
特にこれといって騎士団の雰囲気が変わるわけでも無く、平穏に過ぎている。

実際、私自身あの勝利はマグレだと思っている。



とりあえず本部から最初の指示が来た。

月末に隣国アトランティスから王女さまが来られる。

その為の警護だ。もちろんアトランティス側からも何名か警護担当者が付くだろう。
こちらも場内に臨時の警備本部を置き、交代で警備にあたる。

王女様は確か16歳と聞いている。ふふっ、ロビンと一緒なのね。元気にしてるかしら?

とりあえずは月末の王女様が来られるまで後2週間。明日は隣国の騎士達との打ち合わせだ。



◇◇◇◇



今回の打ち合わせは、アルフォンス、ルイス団長、アンソニー、私が参加し、相手国のアトランティスからは騎士団長、騎士団員3名(内女性2名)合計8名だ。

お互い自己紹介をし、スケジュールを伺った上で打ち合わせをする。

そして今回ご訪問される王室の王女様は「オーロラ王女」様だ。この方は稀に見る絶世の美姫らしい。(・・・・アンソニー談)


そしてアトランティスの騎士団長さんは
流れるような金髪の甘いマスクの男前だった。目元の泣きぼくろがとてもセクシーだ。さすがに上に立つ者はアルフォンスにしてもそうだけどひと味もふた味も違うのかしら?

もう1人の男性はこれと言った特徴はないが、普段でも隙の無い男性だった。

女性騎士2人は美人系のお互いがよく似た2人だ。


到着された日の夜は王宮でレセプションが行われる。こちらの招待客は侯爵家以上。
既に招待状は発送済み。

アトランティス側の今回の人数は王女を含め10名ほど。

2日目は王子達と共に学校や病院を慰問に回られる。

3日目は王宮内をご歓談の後、我が国主催のダンスパーティーだ。

4日目に帰国の途に着かれる。

王宮内は騎士団が出張ってるのでさほど心配は無いが、2日目の慰問が一番心配だ。
慰問にはアルフォンスやルイス団長が付くだろう。

学校や病院の周辺は前日から騎士団の者が警備に着く。

私は王宮内での警備になる。
王女と歳が近い事もあり、パーティは貴族に紛れる為ドレス着用との事。
あぁ~、ドレスは面倒。面倒。





◇◇◇



当日、お付きの者を連れて王女様が来られた。
光り輝く、と形容したくなる程美しい王女様だった。歳こそ16歳だが体つきなどは立派な大人だ。

今回はお忍びに近いので派手な演出はしない。

王子2人が迎えに出られる。
その側をアルフォンスがウィリアム総騎士団長と付いている。
目立たない様にしてはいるが周りにさりげなく騎士団員も配置している。
私もアンソニーと並んで注意深く見守っていた。

アトランティス側の騎士団長と目があったので軽く会釈をして置いた。やはり凄い存在感。

これから3時間後にレセプションが始まる。今日は私はここまでで、騎士団の詰所でフェリスと交代の引き継ぎをする。明日の朝までフェリスと交代だ。

ルイス団長はオーロラ王女様がそのまま部屋で休まれるまで張り付く事になっている。


「なぁ、アニエス。」と隣のアンソニーが小声で話しかけて来た。

「うるさいわね。今は仕事中でしょ。」
目の前の御仁達に集中しつつ、話しかけんなオーラを出す。

「この後飯行かねぇ?まだだろ?」
・・・お前の頭は小学生か?お父さんに言いつけるぞ。

ったく、うるさい。と思ってたら、王子達に付いているアルフォンスがこちらを見てる。目があったのでそっくりそのままアンソニーを見てやった。

アンソニーがアルフォンスに見られて居る事に気がついたらしく恐怖に固まっていた。

ザマァ。叱られろ。


アンソニーと話しながら臨時の警備本部へ歩いて行く。とりあえず引き継ぎを済ませたら、一旦明日の朝までは休憩なので、王宮の食堂で食事をとり、寮へ帰るつもりだ。

警備本部でフェリスに引き継ぎをして、控室へ着替えに行く。基本的に今は帯剣している。

「ご飯行こう~~。ご飯!」とアンソニーが煩いので付き合う事とする。

食堂はなかなかごった返していた。普段はもっと静かなのだが今回は王女様の警備の方々も利用しているからだ。

アンソニーと並んでプレートで食事を取る。空いてる席があったので2人で腰掛けた。

「アニエス、次は明日の朝から?」とアンソニーに聞かれたので「ええ、そうよ。」と答えておいた。アニエスの半分程の時間で、ペロリと食事を済ませると暇らしく話を振ってくる。

「しかし、美人なお姫様だなぁ。そう思うだろう?アニエス。」と同意を求めてくるが、私にどう言えと?そう思いつつ、食事をしながらアンソニーと話してると、周りから話し声が聞こえて来た。あれはアトランティスの連中だ。

「今回は無事に到着して良かったよな。」
「そうでもないぜ。途中怪しい場所あったぞ。」

「ほんと、何だろな?毎度の如くうちのお姫さん狙われてるの?うちにスパイでもいるのか?」

「さすがにそれはないだろう。うち、割とその辺の調査厳しいって聞くぜ?」
「だよなぁ~。」

アンソニーと目配せする。
小声で「アルフォンスに伝えておいた方がいいよね?」と話しかけると「そうだよな。穏やかじゃないな。」とアンソニーが食べ終えたプレートを片手にさりげなく席を立った。

私はそのまま食事を続けながら、話を聞いていた。

・・・お姫様が襲われ出したのは約半年前。

ふーん。そうなのか?

・・・実はアトランティスのお姫様、よその国の王に見染められてるらしい。

・・・その王もオーロラ王女と少しでも年齢が合えば、まだ話はわかるが、40過ぎで既に皇后も迎えられ愛人も何名か抱えているらしい。いわゆる好き者すきものってやつか。

まさかな?この国で一悶着やらないでしょうね?やめてよね?



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