33 / 53
32、ジョゼフィーヌの誕生日
しおりを挟む校長室をクロードとお暇し、「ジョゼフィーヌこれからもう少し時間は大丈夫ですか?」とクロードに確認された。
「ええ、これからは特に用事は無いですよ?どうしてですか?」と聞き返すと「先日のお礼です。これからラウールの名所にご案内しますね。」と話したかと思うと馬車を走らせてラウール観光になった。
ラウールはどちらかと言うと乾燥しやすい気候だ。温暖で年中暖かいし人々は陽気だ。
その名ガイドは海岸線に沿ってどこまでも続く砂浜だったり、そうかと思えば切り立った渓谷を見せてくれた。ラウールのトラフォードには決して負けないその壮大な自然に感銘を受けた。
我々の町に帰る途中のスタンドで特産のサボテンを使ったジュースをご馳走になった。トゲトゲのあの実からどうしてこんなに甘くみずみずしい果汁が取れるのか?不思議だった。
夜は素敵なレストランに連れて行って貰った。
実はこの日はジョゼフィーヌの19歳の誕生日で、クロードからセレクトショップでドレスをプレゼントされて隣接する美容室でメイクとヘアを整えられた。
髪は緩く巻かれアップスタイルに。メイクは割としっかり目だが決して厚化粧では無い。
そして初めて黒いドレスを着た。ホルダーネックでマーメイドラインの美しいドレスだ。サイドのスリットが恥ずかしくて足元が少し落ち着かない。でも一度着て見てほしいと懇願されたあのクロードの目が思い浮かぶ。
もちろんそのまま歩くには抵抗があったのでにオーガンジーのふわりとしたショールを掛けてもらった。ネイルも施され鏡を見た時は自分とは思えなかった。
店のスタッフさんから鏡を見せられていたがふと気がつくとスタッフさんは消えていてクロードと2人きりになっていた。「綺麗だよジョゼフィーヌ。このまま僕の部屋へ誘いたいぐらいだ。」とクロードから後ろから抱きしめられて耳元で囁かれた。
そして「手を出してジョゼフィーヌ。」と言うとジョゼフィーヌの手を取り左手の指先にキスをした。そしてそのままポケットから取り出したブレスレットを嵌めた。
これはまさか逸品ものでは?と思わせる様な手の込んだ作りのブレスレットだった。
「クロード、こんな高価な物は頂けないです。」と外そうとするとその手を掴まれた。
「そのブレスレットは僕の心だ。本当ならなるべく外さないで欲しいぐらいなんだ。ぜひ受け取って欲しい。」と念を押された。そしてジョゼフィーヌを抱き寄せると軽く口づけをした。
「このまま2人きりで居たいけど。さぁ、行こう。」とクロードが腕を差し出して来たのでジョゼフィーヌも手を差し伸べた。
レストランでクロードが名前を告げると奥の個室へ通された。エスコートされ席に座ると食事の提供が始まった。この店の食事はどれもとても美味しく惜しむ様によく噛んで食べた。
クロードも仕事の苦労話を面白おかしく話すなどして会話を楽しませてくれた。
「実はジョゼフィーヌに大切な話がある。」と食後のコーヒーを飲んでいた時にクロードがジョゼフィーヌに目線を合わせながらゆっくりと話し出した。
「実は来年君たちが国に帰るタイミングで僕がそちらへお邪魔する事になりそうだ。」とコーヒーをひと口飲むとそう話した。
「もうその話は決定事項なんですか?」と聞くと「あぁ、年明け早々辞令が出るよ。本当なら今日は指輪を贈ってプロポーズしたかったんだがな。」とため息を付いた。
「確か騎士団にしばらく入るんですよね?」
「あぁ、僕を含めて3名がお世話になる。住む場所はトラフォードが提供してくれると言っている。ある程度希望が出せるようだから出来るだけ君の実家と近い所に希望を出すつもりでいる。」と言いながらデザートの皿をこちらへ寄こしてくれた。
「そうですか。じゃあ私も騎士団に入団しようかな?」と話した。これは単なる思いつきだったが何となく良いアイデアの様な気がした。確か王宮には騎士団と王政を連結させる部署があった筈。
「でも婚約者同士が騎士団に居るのは良くないですよね。なので違う部署にしようかな?」と話した。
「本当なら男ばかりの騎士団に君が入るのは絶対に反対だ。だけど僕が居ない所で君が働いたり男共と過ごしたりしているのはもっと嫌だ。」とムスっとしている。この人のこう言う所は可愛いと最近思う。
「私は別の部署のコネを当たって見るわ。」と答えると残りのデザートを食べた。
しばらく食事を楽しんだがそろそろお開きの時間だ。クロードはジョゼフィーヌを馬車までエスコートして寮の前まで送って行った。そして馬車の中でもう一度ジョゼフィーヌに口づけると「お休み、良い夢を。」と声をかけて馬車の中で別れた。
去って行く馬車を見送るジョゼフィーヌ。部屋に戻ると着替えてシャワーを浴びた。興奮して中々寝付けそうにないのでスカーレットに手紙を書いた。
来年早々にトラフォードに戻るが騎士団関連の仕事を探していて何か心当たりを当たってみてほしい。と手紙に書いておいた。
0
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【R-18】逃げた転生ヒロインは辺境伯に溺愛される
吉川一巳
恋愛
気が付いたら男性向けエロゲ『王宮淫虐物語~鬼畜王子の後宮ハーレム~』のヒロインに転生していた。このままでは山賊に輪姦された後に、主人公のハーレム皇太子の寵姫にされてしまう。自分に散々な未来が待っていることを知った男爵令嬢レスリーは、どうにかシナリオから逃げ出すことに成功する。しかし、逃げ出した先で次期辺境伯のお兄さんに捕まってしまい……、というお話。ヒーローは白い結婚ですがお話の中で一度別の女性と結婚しますのでご注意下さい。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる