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32、ジョゼフィーヌの誕生日

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校長室をクロードとお暇し、「ジョゼフィーヌこれからもう少し時間は大丈夫ですか?」とクロードに確認された。

「ええ、これからは特に用事は無いですよ?どうしてですか?」と聞き返すと「先日のお礼です。これからラウールの名所にご案内しますね。」と話したかと思うと馬車を走らせてラウール観光になった。

 ラウールはどちらかと言うと乾燥しやすい気候だ。温暖で年中暖かいし人々は陽気だ。

 そのは海岸線に沿ってどこまでも続く砂浜だったり、そうかと思えば切り立った渓谷を見せてくれた。ラウールのトラフォードには決して負けないその壮大な自然に感銘を受けた。

 我々の町に帰る途中のスタンドで特産のサボテンを使ったジュースをご馳走になった。トゲトゲのあの実からどうしてこんなに甘くみずみずしい果汁が取れるのか?不思議だった。

 夜は素敵なレストランに連れて行って貰った。

 実はこの日はジョゼフィーヌの19歳の誕生日で、クロードからセレクトショップでドレスをプレゼントされて隣接する美容室でメイクとヘアを整えられた。

 髪は緩く巻かれアップスタイルに。メイクは割としっかり目だが決して厚化粧では無い。

 そして初めて黒いドレスを着た。ホルダーネックでマーメイドラインの美しいドレスだ。サイドのスリットが恥ずかしくて足元が少し落ち着かない。でも一度着て見てほしいと懇願されたあのクロードの目が思い浮かぶ。

 もちろんそのまま歩くには抵抗があったのでにオーガンジーのふわりとしたショールを掛けてもらった。ネイルも施され鏡を見た時は自分とは思えなかった。

 店のスタッフさんから鏡を見せられていたがふと気がつくとスタッフさんは消えていてクロードと2人きりになっていた。「綺麗だよジョゼフィーヌ。このまま僕の部屋へ誘いたいぐらいだ。」とクロードから後ろから抱きしめられて耳元で囁かれた。

 そして「手を出してジョゼフィーヌ。」と言うとジョゼフィーヌの手を取り左手の指先にキスをした。そしてそのままポケットから取り出したブレスレットを嵌めた。

 これはまさか逸品ものでは?と思わせる様な手の込んだ作りのブレスレットだった。

「クロード、こんな高価な物は頂けないです。」と外そうとするとその手を掴まれた。

「そのブレスレットは僕の心だ。本当ならなるべく外さないで欲しいぐらいなんだ。ぜひ受け取って欲しい。」と念を押された。そしてジョゼフィーヌを抱き寄せると軽く口づけをした。

「このまま2人きりで居たいけど。さぁ、行こう。」とクロードが腕を差し出して来たのでジョゼフィーヌも手を差し伸べた。

 レストランでクロードが名前を告げると奥の個室へ通された。エスコートされ席に座ると食事の提供が始まった。この店の食事はどれもとても美味しく惜しむ様によく噛んで食べた。

 クロードも仕事の苦労話を面白おかしく話すなどして会話を楽しませてくれた。

「実はジョゼフィーヌに大切な話がある。」と食後のコーヒーを飲んでいた時にクロードがジョゼフィーヌに目線を合わせながらゆっくりと話し出した。

「実は来年君たちが国に帰るタイミングで僕がそちらへお邪魔する事になりそうだ。」とコーヒーをひと口飲むとそう話した。

「もうその話は決定事項なんですか?」と聞くと「あぁ、年明け早々辞令が出るよ。本当なら今日は指輪を贈ってプロポーズしたかったんだがな。」とため息を付いた。

「確か騎士団にしばらく入るんですよね?」

「あぁ、僕を含めて3名がお世話になる。住む場所はトラフォードが提供してくれると言っている。ある程度希望が出せるようだから出来るだけ君の実家と近い所に希望を出すつもりでいる。」と言いながらデザートの皿をこちらへ寄こしてくれた。

「そうですか。じゃあ私も騎士団に入団しようかな?」と話した。これは単なる思いつきだったが何となく良いアイデアの様な気がした。確か王宮には騎士団と王政を連結させる部署があった筈。

「でも婚約者同士が騎士団に居るのは良くないですよね。なので違う部署にしようかな?」と話した。

「本当なら男ばかりの騎士団に君が入るのは絶対に反対だ。だけど僕が居ない所で君が働いたり男共と過ごしたりしているのはもっと嫌だ。」とムスっとしている。この人のこう言う所は可愛いと最近思う。

「私は別の部署のコネを当たって見るわ。」と答えると残りのデザートを食べた。

 しばらく食事を楽しんだがそろそろお開きの時間だ。クロードはジョゼフィーヌを馬車までエスコートして寮の前まで送って行った。そして馬車の中でもう一度ジョゼフィーヌに口づけると「お休み、良い夢を。」と声をかけて馬車の中で別れた。

 去って行く馬車を見送るジョゼフィーヌ。部屋に戻ると着替えてシャワーを浴びた。興奮して中々寝付けそうにないのでスカーレットに手紙を書いた。

 来年早々にトラフォードに戻るが騎士団関連の仕事を探していて何か心当たりを当たってみてほしい。と手紙に書いておいた。
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