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22、クロード様の特別

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「ジョゼフィーヌ様、シャディ様こちらへどうぞ。」とクロード様が中庭へ案内して下さいました。

 シャディ伯爵令嬢はようやく落ち着いて来たのか自分のペースで歩き出しました。

 人気の無い池のそばにベンチを見つけるとシャディ伯爵令嬢をゆっくりと座らせました。

「初対面ながら失礼しました。私はトラフォード国から来ましたジョゼフィーヌと言う者です。シャディ様、喉など乾いてませんか?」と話すとシャディ様が小さな声で

「はい、恥ずかしながら実は乾いております。」と言いました。「今、何か持って来ますね。クロード様見てて下さいますか?」とクロード様に言うと「いや、私が持って来ますね。ジョゼフィーヌ様はここへいてあげて下さい。」と言うと会場へ戻り始めた。

「あっ、あの、ありがとうございました。」とシャディ様がこちらを見て話し出しました。

「いえ、あの場所はどうかと私が思ったので僭越ながら口を出させて頂きました。」と返すと

「以前は私たちとても仲が良かったんです。
小さな頃から兄妹のように遊んでいました。まさかこんな事になるなんて。」と俯いて手を握っています。

「そうだったんですね。それはお辛いですね。」と相槌を打った。

「どうしてこんな事になってしまったのか。
私はあの方を虐めたりなんてして居ないのに。」とポロポロと涙が出てきました。

 ジョゼフィーヌはハンカチを取り出してシャディ様に渡しました。

「お2人とも飲み物を持ってきましたよ。」とクロード様が戻って来られました。シャディ様は涙を拭くと飲み物を受け取り、ゆっくりと飲み始めました。

「とりあえず今日は馬車を手配して来ました。シャディ様を送っていきましょう。」とクロード様が言いました。

「ジョゼフィーヌ様もご一緒にお乗り下さい。」

 それから王宮の馬車乗り場まで移動してシャディ様お屋敷へ向かいました。割とお屋敷は近かったのですぐに降りる事になりました。

「ジョゼフィーヌ様、私はシャディ様のご両親に先ほどの件を説明して来ます。少しお時間かかると思いますがこの馬車でお待ち下さい。」とジョゼフィーヌに断るとシャディ様を連れて屋敷へと入って行きました。

 それから1時間近くは待ったと思います。

「お待たせしました。ジョゼフィーヌ様本日は寮の方へ戻りましょう。お疲れでしょう。」と御者に場所を伝え学園の方へ戻って行った。

「シャディ様のご両親はどうでしたか?」と聞くとクロード様は少し笑いながら
「ええ、かなりご立腹でしたよ。あれは王家とこの先揉めるでしょうね。」と話した。

 馬車が寮の前に着くとクロード様が
「ジョゼフィーヌ様、今日は貴女の勇気に感服しました。これからの留学生活がより良い物になりますよう祈願します。」とじっとジョゼフィーヌの目を見つめながら話しました。

「あと本来はこんな事はしないのですが、この件で何か有りましたからここへ連絡を入れて下さい。対処しますので。」と1枚の紙をくれた。

 寮へ戻ると一目散に自分の部屋へ入りドレスを脱いだ。髪飾りも外し着替えるとベッドへダイブした。「はぁ~。何あれ?あれがこの国の王子なの?あれで務まるの?」と独り言が出た。「シャディ様の心が1日も早く癒されます様に。」と呟いた。

 この日は胸がいっぱいで夕食を食べる気が起こらずカリナさんにその事を伝えて夕食を辞退した。

 シャワーを浴びて明日からの学校生活に備えると早々に就寝した。
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