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19、ゲイルとの邂逅

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 ーーーここは?どこ?

 真っ暗な世界。寒い。寒い。

 はっ、私は確か!!

 エリーが飛び起きるとそこは部屋の中だった。ゆっくりと周りを見ると上位貴族が暮らしているかの様な割と豪華な部屋だった。

 今、自分が寝かされているこのベッドもスプリングが良く効いていて寝心地も良い。使われているリネンや家具などの品質も悪いものでは無い。

 すっと起き上がり部屋の壁に備え付けの鏡を見てみると、灰色の髪に碧眼の元々のエリーの姿だった。

 元々着ていた制服は着替えさせられていて、パジャマの様な物だった。首元が開いていてよく見ると細いチョーカーみたいな物が嵌っていた。

 手で引っ張って見たが痛いだけでびくともしなかった。魔法を掛けてみたが更に縮まった様なので辞めた。どうも魔法を使えなくする魔道具の類いみたいだ。

「こりゃ困ったわね。」とゴチた。つまり物理的に破壊をするしか外す方法がないって事だ。よく見てみると繋ぎ目も無い。

 窓から外を覗き込んで見たが崖の上にあるらしく下は海だった。

「まだ死ぬには早いですよ、お嬢さん。」と背後から他の底から響く様な声がした。

 慌てて振り返ると痩せぎすの1人の男が立っていた。この人、全然気配を感じさせなかった。

「せっかくご招待したのですからもう少しお話しでもしませんか?」とニヤっと笑いながら話しかけて来た。

 パチンッとその男が指を鳴らすと部屋の中央のテーブルの上にお茶の用意が整っていた。美味しそうなお茶菓子付きだ。


「まぁ掛けて下さい。」と席を勧められた。仕方なくその指示に従うエリー。

 その男は慣れた手付きでさっさと自分とエリーの分のお茶を淹れると恭しくエリーに差し出した。

「毒などは入っていませんよ?何なら毒味しましょうか?」と言いながらエリーのカップで飲もうとしたので「毒味は結構です。頂きます。」とカップを貰った。

 その男はお茶をひと口飲むと「あぁ、美味しいですねぇ。芳しい香りが堪りません。」とうっとりとした表情をした。
どれだけこの男を見ていても何を考えているかさっぱりわからない。

 ただ自分に害を成す存在であると言うことだけはわかる。

「ふっ、私とした事が失礼しました。レディーを前に名乗りもしないとは。私の名前はオルソン。オルソン・カーマインと言う者です。この国では辺境伯を努めております。」

「まぁ、貴女にはと言った方がしっくり来るかもしれませんね。貴女が赤ん坊の時にこの国から出されてから、割と早くにこの体と身分を手に入れた物ですからね。」

と言いながらお茶を飲み始めた。エリーも覚悟を決めてお茶を飲んだ。認めたく無いがなかなか良い茶葉だ。コクもあり美味しい。

「お気に召して頂けた様で何より。良ければこちらのお菓子もどうぞ。」とプチフールの載ったトレイをこちらへ寄せて来た。
「こちらは結構です。」と断った。

「あら、残念です。家のパティシエは中々の腕前ですよ。」と笑っている。

「1つお聞きしたい事が。宜しいですか?」とエリーが口を開いた。

「えぇ、構いませんよ。想像は付いています。お父様、お母様の事ですね。違いますか?」

「はい。まず私の母親はどんな人だったのですか?」

「先ほど、あちらの鏡でご自分の顔を見てましたね。貴女はお母様にそっくりですよ。ただ目の色だけはお父様です。」

「シエンタ、あぁ貴女のお母様はシエンタと言いました。彼女はこの国1番の魔法陣の使い手でしたね。彼女には誰にも敵いませんでしたから。貴女をここへ飛ばしたのもシエンタの魔法陣の応用です。」

「さて、シエンタの父は偉大な人物でしたよ。なんせあのリツドウ元帥なのですから。」と初めての恋をした様なうっとりとした顔つきでエリーに話している。

「リツドウ元帥が私の祖父?」

「えぇ、そうです。シエンタはリツドウ元帥の5番目の娘でした。リツドウ元帥はたくさんの子持ちでしたからねぇ。確か。。。
8人は居たと思います。女の子はシエンタが1番下だったはずです。」と昔を思い出すかの様に遠くを見ながら話した。


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