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12、魔法付与

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 この日はフリッツ様に会えなかったので、ビアンカさんに頼んで次の日に時間を作ってもらった。

「おはようエリー。僕に相談があるんだって?」とフリッツ様が朝食後のお茶を飲みながら優雅に話しかけて来ました。

「おはようございます。フリッツ様。実はこのマリー先生にお借りしている眼鏡なんですが、これに魔法付与って出来ると思いますか?」と眼鏡を渡した。

「あぁ、あの時の眼鏡ね。どれどれ??」とエリーの手から眼鏡を取るとじっくりと眺め出した。いつもの明るいフリッツ様と違い目が真剣だ。

「うん、多分できる。でももう既に結構この眼鏡には色々何やら魔法が掛かってるよ。エリーこの眼鏡無くてもやっていけるかい?ひょっとして持たないかも。」

「やはり何をその眼鏡に付与したいかわかります?」

「あぁ、昨日ビアンカからひと通り聞いてるよ。恐らく精神魔法の使い手だね。えげつない魔法ってエリーに教えたのはクリスだね。」と笑っているが目が笑ってない。

「お見通しですね。」と微笑むと
「良い機会だ。やり方を教えてあげるからやって見て?」

「この眼鏡に付けたい魔法は真実の魔法だね?」

「はい、そうなんです。」
そう、幻影に惑わされない真実のみを映し出す魔法だ。

「以前クリスに魔法回路の使い方を教えて貰っただろ?まず自分の魔法回路を意識して?」と眼鏡をエリーに返しながら話した。

 それから少しの間フリッツ様に魔法付与の仕方を教えて貰った。


その日の午後からエリーの4試合目が始まった。今日ここで勝てれば後一つになる。
ここでいっそ負けようかな?とも思ったりしたが色々教えてくれたビアンカさんやフリッツ様の手間ちょっと。と考えてしまった。

このフィールドはケニー先生だ。

「おい、揃ってるか?」と声をかけて来た。
「行けますよ。私は。」と相手の選手が答えた。そう、えげつない魔法と言われているアルザス・ウィンターだ。お父様が魔術師団の副団長と言われている。見た目に眉目秀麗で観客の中にも黄色い声が多い。

「アルザス様~。そんな女やっちゃってください!!」と派手な声援が飛んでいる。

「はい、私も行けます。」とエリーも答えた。

「じゃあ2人とも中へ。」と言われたのでその通りにする。

 あぁ、今までと全然違う。そう肌で感じた。彼方も同じだったらしく「エリー嬢、手加減は辞めて下さいね。全力でお願いします。」と言って来た。

「防御壁展開」とケニー先生の声がする。

「じゃあ始めるか?アルザス・ウィンター並びにエリー・クリスティアン。始め!!」

「金色の蝶」とエリーが言った。初めてエリーから声を出した。エリーから無数に広がっていく蝶の群れ。

「これはこれは美しいね、エリー嬢。まるで君の様だ。」とアルザスが言った。

 その舌の根も乾かないうちにアルザスから出る黒いオーラが空間を侵食し始めた。

 お願いね。とエリーが呟くと眼鏡の色が変わった。「へぇ、誰に聞いたか知らないが対策済みって訳ね。」
そう、エリーの眼には今までと何ら変わらぬアルザスの姿が見えている。

 結界をすかさず2重、いや今回は3重に掛けた。「身柄の保護も万全だ。感心だね。」とアルザスが話す。

 ただじわり、じわりと黒魔術と呼ばれるアルザスの魔法が侵入して来ている。

「勝負はすぐ着きそうね。」とエリーが話した。

「どうしてそう思うんだい?」
「そうね。何故かしら?」とエリーが答えた。その間にもエリーの蝶を喰らいながらアルザスの黒魔術がエリーに向かっている。

「そう、もう決着が着いたの。」
「って何を根拠に?えっいつの間に?」
「ええ貴方は終わったの。」

その瞬間に胸を押さえて膝を着くアルザスの姿があった。アルザスの胸元に1羽のの蝶が止まっていた。観客席から聞こえる悲鳴。

「貴方は金色の蝶を見ていた。それだけだったの。」と話すと「ケニー先生、コールをお願いします。」と呼び掛けた。

「あっ、ああ分かった。」と防御壁を解き「勝者エリー・クリスティアン!!」とケニー先生が叫んだ瞬間「パリンッ!!」っとエリーの眼鏡が砕けた。

 そしてグレーの髪色から鮮やかに広がる赤い髪に変化した髪が風に吹かれていた。

「あっ、魔法を掛け忘れてたわね。」と思わず呟いたエリー。

 アルザスは胸を押さえながら起き上がり「その髪色、アンバーの瞳。貴女様はもしかして。」と話すと「いや今ここで言うのは無粋という物。この勝負お見事でした。僕の完敗です。ありがとうございました。ただ次の相手は貴方でも厳しいと思います。ですが応援しています。」と一礼し去って行った。

「エリー、それがお前の素顔か?」とケニー先生が聞いて来た。「ええ、そんな所です。では失礼します。」ともい一度髪をグレーに戻すとゆっくりとフィールドを去って行った。
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