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8、魔法を使うのも大変だ!
しおりを挟むビアンカさんが校長室のドアを開けるとマリー先生が居た。
「おぉビアンカ、久しいな。」とマリー先生が笑った。
「ええ、マリー先生もお変わりなく。本日から家の子をこちらでお願いしたいと思いまして。ご挨拶に寄せさせて頂きました。」とビアンカさんが話すと
「まぁ、ご丁寧に。分かっておる。」とマリー先生がそう答えていた。
◇◇◇◇◇◇
フリッツ様の家でお世話になるようになってから約1ヶ月経った。
フリッツ様のお屋敷で悠々自適で学校生活始まって順調で。。。
そんな幻想どこで感じたんだろう?
そんな自分を責めてやりたい。
「おい!そんな事も出来ないのか!?」と先生の怒号が聞こえる。クスクスと耳に入る女子生徒達の笑い声。
「エリー・クリスティアン、今日はこの実験が出来るまで居残りだ。このりんごが30センチ以上かつ1分間浮かぶのを私が確認出来るまでは帰ってはならぬ。わかったか。」とエリーを立たせてお説教しているのは、物理担当のケニー先生だ。
授業後の黒板の前で話している。もちろんクラス全員の前でだ。
「ーーーーはい、分かりました。」とエリーは頷いた。
ちなみにクリスティアンの名前はフリッツ様の実家の名前を頂いた。
あー、また帰るのが遅くなる。ビアンカさん心配するだろうな。と心の中でぼやきつつ教室では練習したくないので中庭に移動するべく帰り支度を始めた。
「ふりーむ、ふりーむアップル。」と呪文を唱え目の前のりんごに集中する。
この場合のふりーむとは我が心のままにと言った所か。心の赴くままりんごよ浮かべ。
と念じている。
フワッと一瞬浮かぶのだがストンっと落ちる。
「はぁ~。難しいな。」と夕焼けを見ながら思っていた。うーん、私本当にアレクサンドラおばあちゃんの力を受け継いだんだろうか?あれは何もかも夢だったのでは?とすら思えてくる。
「ははっ、なんて下手くそな魔力の使い方だ。大した魔力量なのに勿体無いね。」と近くから笑い声が聞こえた。
「誰ですか?」と声のする方へ向くと上品な出立ちの男性がこちらを見ていた。服装からここの学校の生徒なのはわかる。
「久しぶりに取り巻きの女性から逃れられて一服してるのに何だと思って来てみたら、まあ下手くそだね。」とエリーを見てニヤリと笑って言われた。
言い返す言葉も無い。
「お邪魔しました。私は失礼します。」とこの場を去ろうとした時、つかつかとその男がエリーの側までやって来て、さっとエリーの手を取った。
「なっ、何ですか!」と手を振り払おうとするが凄い力でなかなか振り解けない。
「君、最近ここへ入った?付き合ってる男とか家族は居なかったの?」と不躾な質問をしてくる。
「えっ、どうして?そんな事聞くの?」
「内緒。僕が力を貸してあげるよ。貸し一つね。」とイタズラっぽく笑うとエリーの両手を掴んで「目をつぶって?いいから僕のいう通りにしてごらん。」と話すとエリーの手のひらに温かい気の流れを感じた。
「僕の気が入っていくのがわかるだろ?わかったらさっさと目を閉じて?僕も暇ではない。」
「ーーーー分かりました。」と答えるとエリーは目を閉じた。
「僕の気が君の中にどういう形で感じる?」
「ーーーー赤、赤い水が流れているみたい。」
「へぇ、君、面白いね。」
「じゃあその水はどこに行ってる?」
「私の、私の心です。」
「そうそう。じゃあ君の心はどうなってる?」
「今は貴方の気が入ってぐるぐるしています。」
「じゃあその僕の気を君の心の中へ閉じ込めてみよう。どう出来たか?」
「はい、出来ました。」
「今感じた僕の気を心から引っ張り出して使ってみて。」
「ああ上手いね。じゃあ手を放すよ。ほらりんご。」とりんごを手渡された。渡されたりんごをしげしげと眺めると
「ーーーふりーむ、ふりーむアップル。」と呪文を唱えた。
先ほどの気が自分の手のひらから出て来た。その時、りんごがふわりと浮き上がり空中でピタリ止まった。
「わぁ、止まった。」
「では自分の手のひらにりんごが落ちてくるイメージでりんごを見つめてみて。」
「はい。」言われるがまま自分の手のひらにりんごが落ちて来るイメージで見つめる。
「ポトッ。」とエリーの掌に落ちた。
「でっ、出来た?」とその男を見つめた。
「簡単な事だ。ただ単に魔力回路を意識せずに魔法を使おうとするからだ。今のイメージを忘れずにな。」と言うと「じゃあな。」と手を振りながらその場を去っていった。
そのまま職員室に向かうとケニー先生を探した。先生は自分の机の所に居られたのでそのままやってみせた。
「そうだ。やっと気が付いたね。魔力回路を使っての魔法はそうやってやるんだ。明日からもそうするんだぞ。今日は帰っていいぞ。」と穏やかに微笑みながらケニー先生が見送ってくれた。
その夜に早速ビアンカさんに見せた。
「エリー、中々上手だけど、凄い人の気が入ってるわね。フリッツ様が気を悪くするかもね。」と意味ありげにビアンカさんが笑っていた。
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