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18、隣のクラスとの戦い

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 対抗戦の日は晴天で雲一つなかった。ブルックリン達のクラスは、おそろいのハチマキを締め、エドワードを中心に円陣を組んだ。

 対する相手は隣のクラスだった。元々隣のクラスとの折り合いは良くなくて、特に男子たちは公衆の面前で叩きのめしてやろうと、この日を楽しみにしていた生徒もいたぐらいだ。

 隣のクラスは火属性の生徒が多い。普段からブルックリン達のクラスの子に言いがかりをつけられることも多くて、ブルックリン達のクラスでも毛嫌いしている子も多い。

「ルールは単純だ。自分のクラスの陣地に置いてある旗を相手に取られると負け。ケガを負ってしまった場合は、治癒魔法が得意な先生が控えて下さっているから安心して欲しい。でも、できれば余りケガはしないで欲しいね。」と校長先生の話があった。


 お互いフィールドに一列に整列しお辞儀をすると、杖を掲げて、向かい合った相手の杖と交差させた。広範囲での魔法の使用が考えられるため、魔法学園の中にある広い対抗戦用のフィールドが使用される。

「試合開始!!」と校長先生の声がかかり、各生徒は全員一斉にフィールドに散らばった。ブルックリンは旗の傍の後方へ陣取った。

 相手はやはり多数で組んで、炎で押し込んで来る。でもブルックリンはそれがフェイクだと気が付いていた。

――――本当に注意しなければならないのは。旗を掴む手。緑属性だ。

 案の定、四方八方から蔦が伸びて来た。その蔦を守備陣はそれぞれの属性の力で断ち切る。そして状況を見定めたブルックリンはいきなり大声で支持を出し始めた。

「行くよ――――!!みんな構えて!!」とブルックリンが言った瞬間、ブルックリンのクラスの守備陣達の足元の土が急に盛り上がり、その体がピョンと後方へ退いた。これにはびっくりした隣のクラス。その隙を狙ってブルックリンの魔法が発動した。

「――――クッペルト・シュペリエル!!」土を無数の針山に変える魔法だ。これで隣のクラスの広範囲に散らばる攻撃陣を、1人残らず串刺しにした。この攻撃を現場で見ていた土魔法のマリアン先生は「きゃっ!やったわ。」と1人歓喜していた。

「えー!!そんな馬鹿な!!」と隣のクラス全員の注意が逸れた隙に、エドワードの指示でクラスの緑魔法の子が、蔦で相手の旗を奪い取った。

 ブルックリンの掛けた魔法の範囲は10メートル以上。まさかここまで魔法が及ぶとは相手クラスの誰も思わなかったのだろう。

 救護の先生が急いで治癒魔法をかけている。ブルックリンは「お願い!ケイトもリーナも手伝ってあげて。」と光魔法の持ち主である2人に素早く声を掛けた。「ええ、分かったわ。」と言いつつリーナも被害にあった生徒の傍に駆け寄り、ケイトも治癒を手伝い始めた。

 1人残らず回復が済むと校長先生より「この勝負はローガン先生のクラスの勝利だな。」と言い残して去って行った。

「やったな!!」とブルックリンに駆け寄るクラスメイト達。リアム王子が「しかし、ブルックリンさん大胆だね。そしてあの広域に掛けた魔法の力。さすが。」と感心していた。

 その日以降、隣のクラスの生徒がブルックリン達のクラスに、言いがかりを付けてくる事もなく、特にブルックリンが隣にクラスを通りかかると中から「ひいっ!!」と声がするようになった。

(どうしてかしら。私そんなに酷い事したかしら?)としばらく考えるブルックリンの姿が見られた。

 実はこの対抗戦は、毎年魔法省の人間も何名か見学しており、何の躊躇もなく同級生を串刺しにした女子生徒の事を魔法省の人間は「何と、今年は面白い生徒がいますね。」と笑っていたのだとか。
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