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15、魔法師団長アーチャー・ミラーとは?
しおりを挟む新学期が順調に進んで行き、ようやくブルックリン達も上級生らしく見える様になった頃、初めての進路調査が行われる事になった。
これから何度か進路調査は行われるそうだが、家庭の事情なども考慮されるので、じっくりと時間をかけて進路相談を進めて行くらしい。
特にこの国の貴族たちは、魔力を使った仕事に従事している人達も少なからずいて、実際に魔法使い達が所属する、魔法師団の最高権威である師団長も、貴族出身の男で名をアーチャーと言った。
アーチャーは貴族の中でも特に変わり者と言われているが、魔法師団始まって以来の天才と呼ばれている。
ブルックリン達が今通っている「国立カーティス魔法学園」に置いては全ての教科に置いてスペシャルAと言う前代未聞の成績を成し遂げただけではなく、在学中からその実力を国に買われ、勉強の傍ら魔法師団の仕事もこなしていた二刀流の男である。
家も侯爵家とご立派な貴族なので縁談も絶えないが、その全てを「めんどくさい!!勘弁してくれ。」と断り続けている。もちろんブルックリンが目指している「テスタメンター」もこの男が管轄している部署だ。
「くー!!なんてこった!!マジかよー。」と魔法師団の拠点である魔法塔の最上階から、1人の男のうなり声がする。机に乗った本を、頭を掻きむしりながら何度も目を通す。
この部屋でまともなスペースがあるのは、この机の上だけで後は見事な汚部屋である。いや本人が一向に気にしていないので、彼にとっては汚部屋ではないのかもしれない。
「こりゃヤバイな。僕自身は楽しいが、ちょっと調べを進めておくか。」そう呟くと持っていた本を閉じた。この男こそ魔法師団師団長である「アーチャー・ミラー」その人であった。
瓶底眼鏡を押し上げ、にやにや笑いながら自室を出て、直属の部下でありテスタメンターでもある、ガブリエラ・ノッカートの所へと足を運んだ。
「あ~、まだ春だと言うのに暑いわね~。」とブルックリン達の教室の傍の廊下で、フェアリーがノートをうちわに見立ててバタバタと自分の顔を仰いでいる。
「もう~、フェアリーったらお行儀悪いわよ。」とケイトが苦笑いしていた。今は進路相談の順番待ちである。廊下に幾つか椅子が出されていて、その椅子に座っているのだ。
もうフェアリーは終わっているのだが、ブルックリンとケイトがまだなので、喋りながら一緒に待っていてくれている。
「ケイト・キンバリー、次行くわよ~。」と前の生徒を見送りながら、ローガン先生がドアから顔を出し手招きしてケイトを呼んだ。
「はい!」と返事をするとケイトは「じゃあ行ってくる。」と教室へ入って行った。
「ブルックリンが終わったらさ~、ちょっとおやつでも買いに行かない?売店に何種類か新しいおやつが入ったんだって。」とフェアリーが言っている。「そうね、私が終わったら買いに行こうか?」とブルックリンも笑いながら答えていた。
フェアリーと話しているとケイトがドアの所から「次、ブルックリンだって!!」と言いながらこちらへ戻って来た。
「うん、分かったよ。」と微笑むと、ブルックリンはローガン先生が待つ教室へ入って行った。先生はブルックリンが席に着くなり、
「う~ん、ブルックリンは成績もいいし、属性の授業も頑張っているけど、将来は一体何になりたいの?魔法塔へ行きたいのなら、それはそれで構わないけど、魔法塔のあいつは偏屈よ?あっ、これ先生が言ったって内緒よ?」とローガン先生は可愛く人差し指で口を閉じるジェスチャーをしたが、はっきり言って、いかつい先生がやっても微妙である。この考えは私の内緒である。
「――――ローガン先生、私はテスタメンターになりたいと思っています。」とはっきり言った。
「えっ、テスタメンター!!また思い切ったわね。あれは結構な難関よ?まあ、ブルックリンなら狙えない事は無いだろうけど、貴女がそう話すって事は、少しはどういった仕事か知っているのね?」と先生も気になるのか尋ねて来た。ブルックリンはローガン先生に実家へ帰省中の出来事を先生に話して聞かせた。
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