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僕は映画館を訪れた。どの映画を見に来たかは覚えていないが、映画を見るために映画館に来たことは覚えている。
映画は上映された。どんなものだったのかはやはり覚えていなかった。エンドロールでそれは起こった。
椅子がなくなったのである。
僕は暗闇に落ち続け、耳に痛いほど響く声がした。
それは注意喚起だった。
太陽系の惑星が、一直線に並ぶ。
そんな、意味のわからない注意だったが、何者かにとっては危機だったのだろう。実際に、虚空に落ち続けた僕の目に、太陽系惑星たちが一直線に並ぶ光景を見せられた。月も並んでいたので、おそらく他惑星の衛星も一直線に並んでいただろうが、月だけが特に、僕の目に止まった。
これって日食だっけ? 月食だっけ?
そんなふうに思った。
月が完全に、太陽の光を遮っていた。今思えば日食だが、月のスケールで地球を太陽の光から遮らせるというのは不可能ではと、今だから思う。
とにかく僕は虚空に落ちながら、並ぶ惑星を見た感想として得たものは、「で?」の一言だった。はっきり言って何もない。それよりも落ちる感覚が不愉快だったので、それどころではなかったと思う。
惑星たちが遠ざかる。宇宙の法則に反した落下を続ける僕の体にとって当たり前の観測だったが、ここで少しだけ、「あれ? なんか星近くない? 月デカすぎない?」などと考えていた。
ともかく落下を続ける僕だが、最初こそどこに落下をしているのか謎であったが、僕の体は『太陽系の外』あるいは、『宇宙の外』に向かっていることを確信していた。
そうすると惑星から一気に遠ざかり、確信に至った場所へ到達する。
それが前者でも後者でも、とにかく『外』であることには違いなかった。
男の大きな顔が浮かんででた。星の比ではない大きさに、感嘆した。次の瞬間、凄まじい勢いで引っ張られる感覚がして、次は女の顔が、また同じような大きさで浮かんでいるのを見たが、女の顔だけは怒りに満ちていた。
何故、女の顔だけが怒っていたのかは知る由もない。
次の瞬間、映画館は点灯され、席についていた皆が劇場を出ていくのを、僕は座席に座りながら見ていた。戻ってきたのだ。だがスクリーンではまだ映像が続いている。
友達とともにやってきていたので、「早く出よう」と促されるが、スクリーンではユーチューバーが面白いことをして遊んでいる動画が流れていたので、それをしばらく見た。
友達の痺れが切れたあたりで、僕は座席を立ち、映画館を出た。
夜道を歩いていると、ある店の前で、友達が声をかけられていた。友達の知り合いのようだ。なにやら酒を注いで欲しいらしい。昔、友達は飲食店に勤めていたので、酒を注ぐのは得意だと、その依頼を受け取った。今思えば飲食店に勤めていたのとは関係のない気がするが、夢の中の僕は、「さすが○○!」と、誇らしげに思った。
そうすると、どうやらその店では結婚式をやっていたようだったが、僕はある特殊能力を持っていた。
死人が見える能力と、
化物が見える能力。
この二つだ。
死人は元人間。ただ、化物は人間でもなんでもない。
僕は新婦を見るやいなや、声を荒げた。「あなたは妊娠していますね?」新婦はそんな僕を怪しみながらも、頷いた。それもそうだ、その胎児を狙って化物が、新婦の腹を這っていたのだから。「まだ数ヶ月もしていないのに何故気づいたんですか?」と、問われた。僕は素直に能力を告げ、新婦に中絶を促した。場の空気は凍り、新婦は怒りを惜しみなく僕にぶつけた。ただ、僕は彼女のためにも、引くわけにはいかなかった。
僕は散々な目にあいながらも説明を続けたが、あとから男がやってきて、僕の話を信用してくれた。というか、彼もまた、僕と同じ能力を持っていた。
同時に化物の容姿を伝えることで信憑性を得ようという男の提案に僕は乗り、新婦は納得した。
そして絵に描いた化物の特徴は見事一致して。
目が覚めた。
一瞬だけど、死んだ爺ちゃんが出てきた。ただそれしか覚えていないが。
映画は上映された。どんなものだったのかはやはり覚えていなかった。エンドロールでそれは起こった。
椅子がなくなったのである。
僕は暗闇に落ち続け、耳に痛いほど響く声がした。
それは注意喚起だった。
太陽系の惑星が、一直線に並ぶ。
そんな、意味のわからない注意だったが、何者かにとっては危機だったのだろう。実際に、虚空に落ち続けた僕の目に、太陽系惑星たちが一直線に並ぶ光景を見せられた。月も並んでいたので、おそらく他惑星の衛星も一直線に並んでいただろうが、月だけが特に、僕の目に止まった。
これって日食だっけ? 月食だっけ?
そんなふうに思った。
月が完全に、太陽の光を遮っていた。今思えば日食だが、月のスケールで地球を太陽の光から遮らせるというのは不可能ではと、今だから思う。
とにかく僕は虚空に落ちながら、並ぶ惑星を見た感想として得たものは、「で?」の一言だった。はっきり言って何もない。それよりも落ちる感覚が不愉快だったので、それどころではなかったと思う。
惑星たちが遠ざかる。宇宙の法則に反した落下を続ける僕の体にとって当たり前の観測だったが、ここで少しだけ、「あれ? なんか星近くない? 月デカすぎない?」などと考えていた。
ともかく落下を続ける僕だが、最初こそどこに落下をしているのか謎であったが、僕の体は『太陽系の外』あるいは、『宇宙の外』に向かっていることを確信していた。
そうすると惑星から一気に遠ざかり、確信に至った場所へ到達する。
それが前者でも後者でも、とにかく『外』であることには違いなかった。
男の大きな顔が浮かんででた。星の比ではない大きさに、感嘆した。次の瞬間、凄まじい勢いで引っ張られる感覚がして、次は女の顔が、また同じような大きさで浮かんでいるのを見たが、女の顔だけは怒りに満ちていた。
何故、女の顔だけが怒っていたのかは知る由もない。
次の瞬間、映画館は点灯され、席についていた皆が劇場を出ていくのを、僕は座席に座りながら見ていた。戻ってきたのだ。だがスクリーンではまだ映像が続いている。
友達とともにやってきていたので、「早く出よう」と促されるが、スクリーンではユーチューバーが面白いことをして遊んでいる動画が流れていたので、それをしばらく見た。
友達の痺れが切れたあたりで、僕は座席を立ち、映画館を出た。
夜道を歩いていると、ある店の前で、友達が声をかけられていた。友達の知り合いのようだ。なにやら酒を注いで欲しいらしい。昔、友達は飲食店に勤めていたので、酒を注ぐのは得意だと、その依頼を受け取った。今思えば飲食店に勤めていたのとは関係のない気がするが、夢の中の僕は、「さすが○○!」と、誇らしげに思った。
そうすると、どうやらその店では結婚式をやっていたようだったが、僕はある特殊能力を持っていた。
死人が見える能力と、
化物が見える能力。
この二つだ。
死人は元人間。ただ、化物は人間でもなんでもない。
僕は新婦を見るやいなや、声を荒げた。「あなたは妊娠していますね?」新婦はそんな僕を怪しみながらも、頷いた。それもそうだ、その胎児を狙って化物が、新婦の腹を這っていたのだから。「まだ数ヶ月もしていないのに何故気づいたんですか?」と、問われた。僕は素直に能力を告げ、新婦に中絶を促した。場の空気は凍り、新婦は怒りを惜しみなく僕にぶつけた。ただ、僕は彼女のためにも、引くわけにはいかなかった。
僕は散々な目にあいながらも説明を続けたが、あとから男がやってきて、僕の話を信用してくれた。というか、彼もまた、僕と同じ能力を持っていた。
同時に化物の容姿を伝えることで信憑性を得ようという男の提案に僕は乗り、新婦は納得した。
そして絵に描いた化物の特徴は見事一致して。
目が覚めた。
一瞬だけど、死んだ爺ちゃんが出てきた。ただそれしか覚えていないが。
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