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第一章 美人社長とゲームを一緒に遊ぶのは辞令ですか?
幻想神話 攻略
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「でさイーさん、一つ聞きたいんだけど」
「どうした?」
「ゲーミングPC使ってるじゃん。でもさ、一人称の3Dゲームとかが少ないんだけど?」
ゲームのアイコンなどを調べてみたのだが、VR流行の一人称ゲームなどは見当たらない。
「収録スタジオには、ちゃんとあるんだ。まったく持ってないわけじゃないぞ」
「うん。知ってる。トレーニングゲームとかあったし」
ファンタジー世界を筋トレしながら回るゲームは、棚に置いてあった。
「そうなんだ。本当にこのゲームは、一人でもサクサク行けるな」
「仲間への接待プレイを嫌った開発者が、作ったゲームだからな」
ある一定のレベルまで行くと、オンラインゲームはどうしても協力プレイを「強要」される。プレイヤーに役割が割り振られていくように。
となると、そのうち「遊びではなくなって」しまい、パーティの関係がギスギスしていく。
『幻想神話』の開発者はそれを嫌って、ソロ狩りでもプレイ可能な環境を作った。よって、二人以上は強力プレイできない。
月額課金三〇〇円という、海外のゲーム方式を採用している点も、「アンチを始めからシャットアウトする」ことに貢献している。
「いやいや、はぐらかさないで。どうしてプレイしないのかって聞いてるんだけど?」
「酔うんだよ……」
ああ、三半規管が弱いと。
「だから『幻想神話』を選んだのか。見下ろし型のゲームだし」
「そういうわけだ。笑うだろ?」
「いや、助かった。オレも酔うんだ」
社長との共通点を、見つけた気がした。
「よし、ゲームを再開しようっ」
食器を洗い、再び机に座る。
始まりの村とは別のエリアへ行く。
一番大きなダンジョンに、所の島全体の怪物を牛耳るボスがいる。
「ここからは、敵の勢力も増すので注意して」
「心得ている」
イーさんが切り込む中、オレはイーさんの死角をガードしつつ前へ。
「ところでイーさん、オレと遊ぶゲームってのは『幻想神話』だけか?」
「当面は、そのつもりだ。ほっ。やっ」
会話しながら、イーさんがゴブリン亜種を切る捨てた。
「そもそも、私が個人的に遊びたかったから、配信一発目はこのゲームを選んだ。えい」
人が聞いたら、ワンマン経営者のそれだな。
「我が社の配信者にファンが付けば、都度視聴者の声に応えていけばいいかと」
じゃあ、一通り触っておけばいいか。
「キミの家にあるゲームを、当分は遊んでもらうつもりだ」
「オレたちの役割は?」
「テストプレイヤーだな。とりゃ!」
残るは、ボス部屋だけ。
足を止めてブックマークをした。回復剤などのチェックを済ませる。
「推奨レベルは満たしてる。安心してぶつかっておいで。小太刀から大太刀に変えるのも忘れずに」
「わかった」
ダンジョンを仕切る敵は、ミノタウロスだ。牛の頭で、斧を構えている亜人種である。このゲームの絵柄的に見た目はキュートだ。とはいえ、強さは波の冒険者などひねり潰す。
「おおう! ごっそりダメージが!」
ミノタウロスの斧がイーサンを捕らえた。HPバーが半減する。タイミングを見誤り、イーさんが深手を負う。
「落ち着いて回復!」
下がって、イーさんがオレの側まで逃げる。
オレは急いで回復魔法を施した。
「大丈夫。殴り続けたら相手も弱っていくから」
「うむ。もう一回」
三連続コンボを叩き込み、後一撃まで迫る。
惜しい! それと危険だ。
「深追いするな! 一旦下がって」
「でも、一撃だぞ」
「凶暴化してるんだ!」
今までにないパターンの攻撃が飛んできた。角によるタックルを受けて、イーさんの体力が残りわずかとなる。
初見殺しが来た。オレも一度、暴走モードのミノタウロスにこの攻撃を食らった経験がある。当時は持ちこたえて倒したが、それはオレが防御を固めていたからだ。
『幻想神話』は、オーソドックスな魔物しか出ない。その分、攻撃のバリエーションなどで見応えのあるバトルを演出してくれる。
「うわーやばい!」
イーさんが、目の前の光景に絶望していた。
牛人間が画面を縦横無尽に暴れて、手が付けられなくなっている。早く倒さないと、どんどんスピードが上がっていく。
「オレが囮になるから、急いで回復して!」
タックルを防ぐだけで、オレは攻撃側に参加しない。経験値が割り振られてしまうからだ。あくまでも、イーさんにはソロで倒してもらう。
「いや。回復はしない!」
「イーさん!」
「サムライには、こういう戦いもある!」
捨て身の一閃で、イーさんは飛びかかる。そのスピードは、暴走して画面上を暴れ回るミノタウロスの眉間を、見事に貫いた。完璧なタイミングで。
「すっげ」
確かに、サムライは「起死回生」というスキルがある。体力が一〇%を切っていると、攻撃力とスピードが飛躍的にアップするのだ。その代わり、自分も振り回されて扱いが難しい。
まして、彼女は動きのクセが強い魔族だ。起死回生の速度は二倍になる。コントロールの悪さも。
「この土壇場で、逆転とか」
なんていう勝負感の強さだろう。
「やったぞ! アイテムも大量だ!」
ドロップアイテムが、ザクザクと出てくる。
「よかったな。次の街に進めるぞ」
「うむ。世界平和に一歩近づいたな」
街へ戻ってアイテムを換金した頃には、夕方を迎えていた。
夕飯を食べないかと言われたが、丁重に断る。さすがに図々しいからな。
「今日はありがとう。ハナちゃん」
「もう勤務外です。花咲ですよ」
「そうだったな。引っ越しの手伝いが必要なら、呼んでくれ」
「はい。ではまた明日」
手を振って、社長と別れた。
「どうした?」
「ゲーミングPC使ってるじゃん。でもさ、一人称の3Dゲームとかが少ないんだけど?」
ゲームのアイコンなどを調べてみたのだが、VR流行の一人称ゲームなどは見当たらない。
「収録スタジオには、ちゃんとあるんだ。まったく持ってないわけじゃないぞ」
「うん。知ってる。トレーニングゲームとかあったし」
ファンタジー世界を筋トレしながら回るゲームは、棚に置いてあった。
「そうなんだ。本当にこのゲームは、一人でもサクサク行けるな」
「仲間への接待プレイを嫌った開発者が、作ったゲームだからな」
ある一定のレベルまで行くと、オンラインゲームはどうしても協力プレイを「強要」される。プレイヤーに役割が割り振られていくように。
となると、そのうち「遊びではなくなって」しまい、パーティの関係がギスギスしていく。
『幻想神話』の開発者はそれを嫌って、ソロ狩りでもプレイ可能な環境を作った。よって、二人以上は強力プレイできない。
月額課金三〇〇円という、海外のゲーム方式を採用している点も、「アンチを始めからシャットアウトする」ことに貢献している。
「いやいや、はぐらかさないで。どうしてプレイしないのかって聞いてるんだけど?」
「酔うんだよ……」
ああ、三半規管が弱いと。
「だから『幻想神話』を選んだのか。見下ろし型のゲームだし」
「そういうわけだ。笑うだろ?」
「いや、助かった。オレも酔うんだ」
社長との共通点を、見つけた気がした。
「よし、ゲームを再開しようっ」
食器を洗い、再び机に座る。
始まりの村とは別のエリアへ行く。
一番大きなダンジョンに、所の島全体の怪物を牛耳るボスがいる。
「ここからは、敵の勢力も増すので注意して」
「心得ている」
イーさんが切り込む中、オレはイーさんの死角をガードしつつ前へ。
「ところでイーさん、オレと遊ぶゲームってのは『幻想神話』だけか?」
「当面は、そのつもりだ。ほっ。やっ」
会話しながら、イーさんがゴブリン亜種を切る捨てた。
「そもそも、私が個人的に遊びたかったから、配信一発目はこのゲームを選んだ。えい」
人が聞いたら、ワンマン経営者のそれだな。
「我が社の配信者にファンが付けば、都度視聴者の声に応えていけばいいかと」
じゃあ、一通り触っておけばいいか。
「キミの家にあるゲームを、当分は遊んでもらうつもりだ」
「オレたちの役割は?」
「テストプレイヤーだな。とりゃ!」
残るは、ボス部屋だけ。
足を止めてブックマークをした。回復剤などのチェックを済ませる。
「推奨レベルは満たしてる。安心してぶつかっておいで。小太刀から大太刀に変えるのも忘れずに」
「わかった」
ダンジョンを仕切る敵は、ミノタウロスだ。牛の頭で、斧を構えている亜人種である。このゲームの絵柄的に見た目はキュートだ。とはいえ、強さは波の冒険者などひねり潰す。
「おおう! ごっそりダメージが!」
ミノタウロスの斧がイーサンを捕らえた。HPバーが半減する。タイミングを見誤り、イーさんが深手を負う。
「落ち着いて回復!」
下がって、イーさんがオレの側まで逃げる。
オレは急いで回復魔法を施した。
「大丈夫。殴り続けたら相手も弱っていくから」
「うむ。もう一回」
三連続コンボを叩き込み、後一撃まで迫る。
惜しい! それと危険だ。
「深追いするな! 一旦下がって」
「でも、一撃だぞ」
「凶暴化してるんだ!」
今までにないパターンの攻撃が飛んできた。角によるタックルを受けて、イーさんの体力が残りわずかとなる。
初見殺しが来た。オレも一度、暴走モードのミノタウロスにこの攻撃を食らった経験がある。当時は持ちこたえて倒したが、それはオレが防御を固めていたからだ。
『幻想神話』は、オーソドックスな魔物しか出ない。その分、攻撃のバリエーションなどで見応えのあるバトルを演出してくれる。
「うわーやばい!」
イーさんが、目の前の光景に絶望していた。
牛人間が画面を縦横無尽に暴れて、手が付けられなくなっている。早く倒さないと、どんどんスピードが上がっていく。
「オレが囮になるから、急いで回復して!」
タックルを防ぐだけで、オレは攻撃側に参加しない。経験値が割り振られてしまうからだ。あくまでも、イーさんにはソロで倒してもらう。
「いや。回復はしない!」
「イーさん!」
「サムライには、こういう戦いもある!」
捨て身の一閃で、イーさんは飛びかかる。そのスピードは、暴走して画面上を暴れ回るミノタウロスの眉間を、見事に貫いた。完璧なタイミングで。
「すっげ」
確かに、サムライは「起死回生」というスキルがある。体力が一〇%を切っていると、攻撃力とスピードが飛躍的にアップするのだ。その代わり、自分も振り回されて扱いが難しい。
まして、彼女は動きのクセが強い魔族だ。起死回生の速度は二倍になる。コントロールの悪さも。
「この土壇場で、逆転とか」
なんていう勝負感の強さだろう。
「やったぞ! アイテムも大量だ!」
ドロップアイテムが、ザクザクと出てくる。
「よかったな。次の街に進めるぞ」
「うむ。世界平和に一歩近づいたな」
街へ戻ってアイテムを換金した頃には、夕方を迎えていた。
夕飯を食べないかと言われたが、丁重に断る。さすがに図々しいからな。
「今日はありがとう。ハナちゃん」
「もう勤務外です。花咲ですよ」
「そうだったな。引っ越しの手伝いが必要なら、呼んでくれ」
「はい。ではまた明日」
手を振って、社長と別れた。
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