筋肉女子の弱点

椎名 富比路

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筋肉女子の死角

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「結構、力こぶ大きくなってきたんじゃない。マユ?」
「そうかな? フン!」

 わたしは腕に力を込める。

「すごいすごーい。よくがんばったねー」

 シノが脇の下をモミモミとした。
 
「でも、これが限界かもな」 

 固くはなっているが、細身なのでどうしても筋肉が乗らない。
 わたしでムキムキになろうとすると、やはりプロテインなどを取る必要があるかも。
 しかし、そこまで筋肉量を増やしたいワケじゃない。

 とにかくわたしは、ダイエットをしてギョーザをおごってもらいたいのだ。

「どうしてマユは、ギョーザにそこまで命をかけられるのかな?」
「だって、ギョーザ屋さんにいったら、ギョーザだけ頼むわけないじゃん」


 からあげにラーメン。ライスも必要だ。チャーハンも捨てがたい。
 デザートの杏仁豆腐は外せないよな。

 今からでも、飛びつきたいくらいである。

「マユったら、いつでもラーメンの海にダイブしそうだよね」
「おうさ。いつでも来いや。でも、ギョーザ屋さんの安いラーメンでいい」

 本格的なラーメン店のガッツリしたラーメンでなくていい。
 あのリーズナブルな味わいを、わたしは求めている。

「その辺は安上がりだからありがたいけどね」

 ガッチリと、わたしの腕をホールドした。
 
「え、なに?」
「いや、腕のチェックをちゃんとすませないと」
「ちゃんと痩せているだろ?」
「うん。だけどね。筋肉量を調べたくて」
「その手付きは、絶対に筋肉量なんてチェックしてねえだろ!」

  
 腕の筋肉をほぐしていると見せかけて、狙いはわかっていた。
 シノの手が辿り着く先は、わたしの脇の下であろう!

 
「待て待て待て、やめんかい!」

 腕を引き、わたしはシノの拘束から逃れようとする。
 
「やめないよ」

 シノも負けていない。わたしの脇を狙って、手を伸ばしてきた。
 
「待たんかい!」
「だから、待たないって」

 冗談抜きで、わたしは脇の下がダメだ。
 ここは学校である。
 しかし、脇の下なんて触られたら、変な声を出す。
 絶対に、触られるわけにはいかない。
 
「やめろっての! あふん!」

 シノの指先が、わたしの脇の下をツンツンする。
 
「ホントマジやめろ」
「ふっふっふ~。マユの反応かわいいんだもん」
「やめなさいって。ひう!?」
 
 わたしは、何度もシノの手を振りほどこうとした。

「あれ、どうして!?」

 シノの筋肉量は、わたしの半分以下だ。
 そのはずである。

 なのに、まったく腕を振りほどけない。
 
「鍛えているのが、マユだけだと思ってた?」

 そんな。
 まさか……。

「フウン!」


 シノの服が、弾け飛んだ。

 制服の下に隠れていたのは、ゴリマッチョと化したシノだったのである。
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