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第三球 遅れてきた魔王たち
第24話 【九回ウラ】 ドラゴン討伐へ
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『さて、最終回となります九回のウラがやってまいりました。最初のバッターは、オランジェ選手です』
ここまでノーヒットながら、抜群のサポートを演じてきた。この回にて、いよいよ剛腕が火を吹くのか?
オランジェは、いつもの職人的な色合いはない。この回で最初に打つからだろうか。キツイ球にも食らいつき、ストライクを取られてしまう。力んでいるのでは?
とはいえ、パステークも警戒しているのか、ボールの判定をもらっている。
『ボールカウントは、ツーストライク・ワンボール。第、四球……ああーっと、レフト前!』
オランジェが、この回で初ヒットを飛ばした。勝ち越しにつながるツーベースヒットである。
ドラゴンのパステークは、息が上がっていた。
『おっと、サヨナラのランナーを残して、挑むはレザン選手。ここまで苦しい相手が続きます! バットを逆手に持って、第一球。ストライクです。送りバントの選択肢はない! 打ちに行く!』
そう。ここでバントは逃げだ。戦略としては正しいんだろうが、打ってさらに相手へプレッシャーをかけたい。
『第、二球目です! あっと、逆手に持った金属バットが、見事ボールをとらえました! ランナーは三塁へ!』
ムロンが続き、一塁三塁の場面である。
『やってまいりました、監督のイチゴーッ! 謎のバッターイチゴちゃんとして登録されておりますが、正体は中年の男性! 魔王ラバナーヌ選手の魔術によって、女性に姿を変えられているのです!』
オレは、バッターボックスに立つ。
もはやオレは、マスコットか珍獣を見るような視線を向けられている。
それは、相手チームも同じだった。
ただ一人、勇者パステークを除いて。彼女は、オレと真剣に向き合ってくれている。
だが、妙な光景になっていた。勇者の身体が、縮んでいるのだ。
「変身が、解けている?」
徐々に、勇者の身体から魔力が抜けているのがわかった。
まさかの場面で、魔王がタイムを出す。話す相手はシトロンだ。
「大丈夫なのかのう、お主のところの勇者は?」
「だから、ムリをするなといったのです!」
パステークは輪の中に入らず、マウンドで座り込んでいる。濡らしたタオルで顔を覆って、足を伸ばしていた。
「あんたら教会は、人間至上主義者だろ? どうしてドラゴンなんて?」
「教会の象徴的存在が、ドラゴンなのです」
ドラゴンと手を取り合って、今の平和を勝ち取ったと伝説があるという。
なるほど。たしかに、学院用の旗には、ドラゴンが描かれている。
「なので、パステークはドラゴンながら、我が校で選手になってもらっています」
パステークの加入は、学校の意向でもあると。
「でも、ヘバッてんな」
「体力はない方ですから、切り札は最後辺りまで取っておけと、あれほど申しましたのに!」
シトロンは悔しがっている。
「エリクサーは、持たせておろう?」
「それは、あなた方も同じでしょう? たいして効果はありません! 完全回復と言っても、メンタルまでは効果がないのです!」
パステークの消耗は、メンタルから来ているらしい。それに、勇者の竜化にはタイムリミットがあるという。この地で元のドラゴンでいるのは、それだけで体力を使い果たすのだ。
「ですが、あなた方を倒すくらいの体力は残っています。覚悟なさい」
「だったら、なにもいわん。身体に気をつけな」
シトロンから離れ、オレたちは全員が集まった。
パステークは、もう投げられるかどうかわからない。
とはいえ、オレの身体もあまり女体化に馴染んでいなかった。勝負は、五分五分といったところだろう。
「のう、主イチゴーよ。我々は、延長戦を提案する」
「なんだって?」
「お主の身体も、限界がきておる。女体化も、次の回が限界であろう」
この回は流し、次の回で抑えようという作戦を、魔王は提案してきた。
ここまでノーヒットながら、抜群のサポートを演じてきた。この回にて、いよいよ剛腕が火を吹くのか?
オランジェは、いつもの職人的な色合いはない。この回で最初に打つからだろうか。キツイ球にも食らいつき、ストライクを取られてしまう。力んでいるのでは?
とはいえ、パステークも警戒しているのか、ボールの判定をもらっている。
『ボールカウントは、ツーストライク・ワンボール。第、四球……ああーっと、レフト前!』
オランジェが、この回で初ヒットを飛ばした。勝ち越しにつながるツーベースヒットである。
ドラゴンのパステークは、息が上がっていた。
『おっと、サヨナラのランナーを残して、挑むはレザン選手。ここまで苦しい相手が続きます! バットを逆手に持って、第一球。ストライクです。送りバントの選択肢はない! 打ちに行く!』
そう。ここでバントは逃げだ。戦略としては正しいんだろうが、打ってさらに相手へプレッシャーをかけたい。
『第、二球目です! あっと、逆手に持った金属バットが、見事ボールをとらえました! ランナーは三塁へ!』
ムロンが続き、一塁三塁の場面である。
『やってまいりました、監督のイチゴーッ! 謎のバッターイチゴちゃんとして登録されておりますが、正体は中年の男性! 魔王ラバナーヌ選手の魔術によって、女性に姿を変えられているのです!』
オレは、バッターボックスに立つ。
もはやオレは、マスコットか珍獣を見るような視線を向けられている。
それは、相手チームも同じだった。
ただ一人、勇者パステークを除いて。彼女は、オレと真剣に向き合ってくれている。
だが、妙な光景になっていた。勇者の身体が、縮んでいるのだ。
「変身が、解けている?」
徐々に、勇者の身体から魔力が抜けているのがわかった。
まさかの場面で、魔王がタイムを出す。話す相手はシトロンだ。
「大丈夫なのかのう、お主のところの勇者は?」
「だから、ムリをするなといったのです!」
パステークは輪の中に入らず、マウンドで座り込んでいる。濡らしたタオルで顔を覆って、足を伸ばしていた。
「あんたら教会は、人間至上主義者だろ? どうしてドラゴンなんて?」
「教会の象徴的存在が、ドラゴンなのです」
ドラゴンと手を取り合って、今の平和を勝ち取ったと伝説があるという。
なるほど。たしかに、学院用の旗には、ドラゴンが描かれている。
「なので、パステークはドラゴンながら、我が校で選手になってもらっています」
パステークの加入は、学校の意向でもあると。
「でも、ヘバッてんな」
「体力はない方ですから、切り札は最後辺りまで取っておけと、あれほど申しましたのに!」
シトロンは悔しがっている。
「エリクサーは、持たせておろう?」
「それは、あなた方も同じでしょう? たいして効果はありません! 完全回復と言っても、メンタルまでは効果がないのです!」
パステークの消耗は、メンタルから来ているらしい。それに、勇者の竜化にはタイムリミットがあるという。この地で元のドラゴンでいるのは、それだけで体力を使い果たすのだ。
「ですが、あなた方を倒すくらいの体力は残っています。覚悟なさい」
「だったら、なにもいわん。身体に気をつけな」
シトロンから離れ、オレたちは全員が集まった。
パステークは、もう投げられるかどうかわからない。
とはいえ、オレの身体もあまり女体化に馴染んでいなかった。勝負は、五分五分といったところだろう。
「のう、主イチゴーよ。我々は、延長戦を提案する」
「なんだって?」
「お主の身体も、限界がきておる。女体化も、次の回が限界であろう」
この回は流し、次の回で抑えようという作戦を、魔王は提案してきた。
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