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第三章 お泊りでも格ゲーかよ!?

第25話 ゲキ甘な感想会

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 その後、午後の勉強会を早々と打ち切って、おやつタイムに。

 ポモドーロ・テクニックが板についてきたのか、後半はすごくはかどった。この調子で中間も乗り切れればいいのだが。

 オレと実代みよは、図書館を出た。場所を、ハンバーガーショップに移す。

「お前、よく食えるな」
「勉強は、身体が資本っすから」

 チーズバーガーとポテトを食いながら、実代はシェイクとぶどう味炭酸を口へ流し込む。

「んじゃ、感想会にするか」
「待ってました!」

 オレは、タブレットを用意した。

 実代もポーチから、スマホを出す。

 今回の作品は、どちらもネットにアップした作品だからである。

「どっちから、やるんだ? オレからか、それとも」
「あたしからでいいっす」

 手を上げながら、実代は伝えてきた。手早くダメージを負っておきたいのだろう。

「お前が昨日アップした作品、読ませてもらった。正直言うが、いいな」
「ありがとうっす!」
「短編というより、ショートショートだな。お前に向いているんじゃないか?」
「そうっすかね? 作り込んだお話じゃなくて、フィーリングでババっと書いただけなんすよ」

 自信なさげに、実代は顔をそらした。

「オレとのデート体験が活きたと?」

 当時の体験記と似たようなシーンが満載で、もっとエッチになっていた。
 といっても、中高生向けの際どいものでとどまっているが。

「下品っすかね、やっぱり?」
「いや、自信を持っていい。小説ってのは、本人の好きと他人の好きがマッチしないことが多いんだ」

 これは小説に限らず、どのエンタメにも言えることである。

 エラそうに言うが、オレ自身もできているかどうかわからん。できていたら、とっくにデビューできているだろうし。

「お前の言うとおり、センシティブなシーンが目立って、ファンが付いただけかもしれない。それでも評価は評価だ。オレだってドキドキしたし、先が見えない展開は面白かった」
「ドキドキしたっすか、紺太こんたセンパイ?」
「し、した、ぞ」

 目をそらしながら、コーラを飲む。

「ありがとうっす。でも、ショートショートの醍醐味ってのは、切れ味なんすよね?」

 たしかに、ショートショートはコンパクトであるがゆえの意外性が求められたりする。

「でも、日常を切り取ったタイプのショートショートって、短編集として書籍化できそうな作品を募集していたりする。そっちを狙うのもありじゃねえか? その上で、長編も書けますってのは武器になる」
「そんなもんっすかねぇ?」

 まだ実代は、自分の価値に気がついていないようだ。

「これはこれ。ラブコメ長編は長編。頭切り替えていこうぜ」
「うっす。これは高評価として、受け止めるっす」
「それでいいんだよ」

 人間、何が求められているかわからない。他者からの評価自体が、自分で受け入れられるものかもわからないものだ。

「どの辺がっすか?」

 実代が、顔をじっくりと近づけてきた。ニヤニヤした顔がムカつく。

「それは、自分で考えろ!」

 オレはどうにか、話をはぐらかす。

「えー、教えてほしいっす。でないとわかんないっすよ」

 なおも、実代は駄々をこねた。

「自分で考えるんだ、実代。オレが全部教えたら、なんでも理解できた気になって、つまんないだろ?」
「たしかに言えてるっすねぇ」

 一度は、実代は引く。しかし、「でも」と、まだ食い下がってきた。

「おおかたのパターンを理解できたほうが、再現性も高まると思うんすよねぇ」
「そうやってなんでもかんでも教えてもらっていたら、そのうち自分で何も書けない作家になるぞ」

 腕を組んで、拒絶の態度を見せる。


 こいつには、オレと同じ経験を持ってほしくない。


「まるで、経験してきたみたいな言い草っすね?」
「経験したんだよ」

 中学当時、オレはありとあらゆる小説指南書やサイトを覗きまくっていた。


 いわゆる、「ノウハウコレクター」になり下がっていたのである。
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