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第二章 デートじゃねえから!

第22話 二人の両親の話

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 外へ出ると、もうすっかり暗くなっていた。

「今日は楽しかったっすね」
「おう。そうだな。いい取材になったか?」
「はいっす。センパイの弱点もわかったので」
「それは忘れろ」

 まあ、オレのウィークポイントは隅においておくとして。

 実代みよの家につくと、まだ灯りがついていなかった。

「両親は、まだ帰ってこないみたいっすね? 紺太こんたセンパイ、お茶どうぞ」
「おお。すまん」

 オレは、温かいお茶をいただく。 

「お前さ、GWずっとこんな感じか?」
「はいっす。後二日くらいは」

 二日間、実代の両親は仕事が入っているという。

 マジか。

「親御さんと、どっか行くとかは?」
「ずっと仕事っす。ウチの両親って、人混みが大っ嫌いなんで。レストランの行列もダメで」

 なので、渋滞に左右されないテレワーク主体の仕事を選んだとか。

「周囲と休みを合わせないんすよね。両親は二人共、平日インドア派なんすよ。『みんなが働いている中で酒を飲むのって最高』ってのが、両親の口癖でして」

 休日に外出する仕事を選び、平日に休みを取るくらいである。人混みが苦手なのだろう。

「なんか変わってんな。いわゆる、『FIRE』でも目指しているとか?」

 アーリーリタイア、つまりずっと働かないことを選んだ新しい生き方である。

「そこまで稼ぐ気はないっすね」

 目指していた時期はあった。が、「それを目指すと余計にがんばる必要が出てきた」と悟ったそうで。

「セミリタイアは、したいそうっす。若い頃から、インデックスファンドとかいう世界各国の経済に投資はしているらしいっす」

 二人共怠け者体質で、欲しいものは「不労所得」だった。なので、セミリタは考えていたらしい。

「異文化交流コンパで気があって、交際が始まったんすよ」

 どっちも結婚には消極的だったそうだが、運命を感じたという。

「で、あたしが産まれたってわけっす」

 満面の笑みを浮かべて、実代は語った。

「あと、あたしが産まれたので、あたしに投資したいみたいっす。でも、あたし自身はそこまで豊かな生活環境ってほしくなくて。ただ、家族を優先してくれている生活には満足してるっす」

 バリバリ仕事するより、家族との時間を大切にしたいらしい。

 とはいえ、どこかへ遠出する感覚はないという。

「センパイの家ってどうっすか? 遅くまで遊んでいると怒る系っすか?」
「ウチは、人並みだなぁ。さっきも、メシいらねえって連絡しといた。その程度の付き合いだな」

 子どもの頃は、家族一緒に旅行に行ったりはした。
 が、最近は「行こう」と言ってこない。
 オレが家でゲームをしたがっていると、わかってきたんだろう。
 遠出はせいぜい、法事くらいになってきた。

「寂しくないのか?」
「いえ。全然」

 実代の顔を見ると、本心からそう思っているらしい。

「うちの両親、あたしの自由な時間も大事だって、最近わかったっぽくて」

 それは、実代の部屋を見てわかった。

「あたし、昔から友達作りがヘタで、あんまり距離感とかわかんないんすよねぇ。両親も似たような感じで、あまり強く友だち作りに対してとやかく言わない質っすね」

 オタである実代は、家族よりもインドア派である。
 一人の時間が長いせいか、娯楽が一人で完結していた。

「でも最近、センパイと知り合って気持ちは変わってきたっすね。人との関わりってのも、悪くないかと」
「そっか。でもムリすんなよ。特に学生のうちは、トラブるからな」
「はいっす。分別はわきまえているつもりなんすけどね」
「おう。そうしておけ。明日はどうするんだ?」
「小説の感想会と、あと、勉強を教えてほしいっす」

 ん? こいつ、そんなに成績悪かったっけ?

「赤点でも取ったか?」
「違うっす。センパイと一緒に勉強したいんすよ。センパイ、容量いいんで」
「そっか。じゃあ図書館前で待ち合わせな。小説感想会は、昼メシの後で」
「はいっす!」
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