ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第八章 大魔王スルト襲来! オリジナル対レプリカ!

第75話 魔剣調整 完了!

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『踏ん張りな、キャル! アタシ様がついてるよ!』

 炉の中で、レベッカちゃんがわたしを応援してくれる。本当は、レベッカちゃんが一番大変な思いをしているはずなのに。

『アタシ様のことなんて、気にしなくていいさ!』

「レベッカちゃん、わたしの考えが読めるの?」

『今更!? これまでもいっしょに、キツイ状況を乗り越えてきただろうが! どれだけアタシ様が、アンタの身体を借りたと思ってるんだい?』
 
 たしかに、そうか。

『キャル! アタシ様は本来、実験用の影打ちさ。どんな衝撃にも耐えられるように、頑丈にできてるんだ。だから、ぶっ壊れる寸前まで人思いにぶっ千切っちまいな!』

 レベッカちゃんは、破壊されても構わないと告げる。
 それは、わたしを信頼しているから。

 わたしに足りなかったのは、レベッカちゃんの常識さえも壊す覚悟だった。

 ここまでレベッカちゃんは、わたしを信頼してくれている。

 なのに、わたしは日和って。

「もうちょっとだから、がんばって」

 わたしの手から、迷いが消えた。指の震えがなくなり、調節も順調に進む。

 ダメで元々なんだ。ならば、こっちだってぶっ壊れてやる。

『わかるよ! キャルの指がアタシ様の中で暴れまわっているのがさ!』

「最強の武器にしてあげるから!」

 ついに、完成した!

「できた! できたよレベッカちゃん!」

 最終調整が、ようやく完了する。
 
「はあ、はあ……」

 やった。すっごい剣が仕上がった気がする。

「刀身が、炎そのものになってる」

「マグマがそのまま、刃でヤンス。固くもなるし、柔らかくもなるでヤンス。伸び縮みも自在でヤンスね」

 ヤトとリンタローが、新生したレベッカちゃんを改めた。

「これはキャル専用っていっても、おかしくない」

「おそらく盗難にあっても、すぐ帰って来るでヤンスよ」

 試しに、クレアさんが柄を持ってみた。

 だが、不思議な力で反発を食らう。

「レベッカさんは、わたくしに持たれては、あまり効果は発揮できない感じですか?」

『誰に対しても、同じだねえ』
 
 レベッカちゃんを持たせてわかったのだが、クレアさんとレベッカちゃんでは、魔力が反発し合うのだ。
 当人同士の仲が、決して悪いわけじゃない。
 他のメンバーにレベッカちゃんを持たせても、同じ反応だった。
 
 やはりレベッカちゃんは、わたし専用の魔剣なのだろう。

「うーん、オイラが扱っても、レベッカは本来の力を出せないみたいだ。やっぱり、キャルちゃんが持っていないと」

 魔剣作りの専門家であるゼゼリィでも、振るってみた結果は同様である。
 
『それだけ、アタシ様とキャルの絆は深いってワケかい?』

「というか、魔剣は一人に対して、ひと振りなんだよね。専門的になるっていうか」

『つまり、アタシ様がスルトのレーヴァテインに嫁なんかにされたら』

 わたしも、スルトのお嫁さんになってしまうわけか。
 考えただけで、吐き気がしそうだ。なんとしてでも、阻止しないと。 

「じゃあ、クレアさんの武器、さっそく作っちゃうね」
 
「キャルさん。手の方は大丈夫なのですか? 高温の炉に手を入れているようなものなのに」

「それは、心配ないよ。ドラゴンの手袋があるから」

 冥界に住むドラゴンの力を得て、わたしは魔剣を作る秘奥義を会得した。
 トリップして、気分が高揚しすぎてしまうデメリットもあるが。 

 ゼゼリィが用意した炉の中に、クレアさんの魔剣である【地獄極楽右衛門ヘル・アンド・ヘブン】を投下した。

「仕組みは、出来上がってからのお楽しみってことで。じゃあ、【錬成】!」

 今度は、クレアさんの剣を打つ。
 
 わたしは、炉の中に手を突っ込んだ。
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