ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第七章 青い炎のドラゴン! レベッカ究極進化

第65話 究極のレベッカ、完成?

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 ドロドロのブヨブヨになったレベッカちゃんに、ゼゼリィが手を突っ込む。
 
『冥界竜アラレイム遺跡の魔工具』
『邪竜カトブレパスの瞳』
『低級ドラゴンゾンビの骨一式』

 これらのアイテムは、すべて揃った。

 レベッカちゃんが最強の魔剣になるかどうかは、最高の鍛冶屋であるゼゼリィに委ねられている。

 魔剣って、ああやって作られるのか。
 鍛冶や錬成とは、一線を画している。
 
 やはりわたしも、鍛冶師としての常識に囚われすぎていた。

 ヘルムースさんが、「魔剣だけは鍛えられない」と言ったわけだ。

 こんなのを最初の頃に見せられていたら、自信をなくしていただろう。

『おおう。あおうぅ! キャル、こいつは、やばすぎる!』

 レベッカちゃんは、これまで聞いたこともない嗚咽を漏らす。
 泣いているような、感じているような。

 わたしは女だけど、オンナの快感とかはよくわかっていない。
 くすぐったそうにしているようにしか、見えなかった。

「大丈夫ですの、レベッカさんは?」

 クレアさんも、不思議そうにレベッカちゃんが鍛えられていく様子を見ている。
 
「あのー。ゼゼリィに話しかけても大丈夫? もしくは、レベッカちゃんに」

 わたしは恐る恐る、アラレイムに問いかけた。

「ゼゼリィにはやめときな。お楽しみ中だ」

 完全にトランス状態なため、わたしの声は耳にも入らないとのこと。
 
「レベッカになら、いいぜ。まともに受け答えできるか、わかったもんじゃねえが」
 
 できることなら、レベッカちゃんの不安を取り除いてあげたい。
 わたしは、出産中の妊婦に声を掛けるような、面持ちになった。

「どう、レベッカちゃん? 痛い?」

  思い切って、わたしはレベッカちゃんに語りかける。
 
『痛くはありませんわ。ただ、少々柄の辺りが凝ってまして。もう少し、下のあたりを揉んでいただけると、練度が上がりそうですわ』

 なんか、キャラ変わってるー!

『ああ。脳が混乱していて、意識が混濁しているんだよ。製造が完了すれば、もとに戻るから安心しな』

 魔剣作りでは、よくあるパターンらしい。
 
「で、できたあああ!」

 ゼゼリィが、手を引っ込める。

 そこには、一回り大きくなったレベッカちゃんが。

 手に持ってみた。
 いつものように鋭い目のようなオーラが、刀身から湧き出てくる。
 まばたきをしながら、オーラがこちらを見た。
 
「レ、レベッカちゃん?」

 再度、声を掛ける。
 また別人になってなかったらいいけど。

『いやあ、生まれ変わった気分だったよ! 魔剣としてのアイデンティティが、戻ってきたみたいだ!』

 よかった。元のレベッカちゃんだ。

「なんだか、スッキリした感じだけど?」

『たしかにね。溜め込んでいた魔力もうまい具合に圧縮できて。自己強化能力も、復元できたようさね』

「自己強化?」

『魔剣ってのは本来、自分で進化していけるもんなのさ。だけどアタシ様は、実験体だったためにその部分がオミットされていた。あえて機能を止めていたっていうかさ』

 つまり、もっと強くなるはずだったのに、そうならなかったと。
 その部分を復元したことで、本来強化されるはずだった切れ味がアップしたと。

「これまででも、十分強くなったと思っていたけど?」

『あんなの、誤差レベルさね。今のアタシ様なら、一二〇%は強化されているよ』

 その証拠に、わたしに大量の力が流れ込んできた。
 今までの戦闘経験が、魔力となってわたしに吸収されていく。
 レベッカちゃんをどう扱っていいのかも、頭に刻み込まれた。

 あと、これから何が起きるのかも。
 何をすべきかさえも、わかってしまった。

『想像以上に、ヤバイ事態が起きているようさね。だから、プリンテスはあんたに剣を打たせたんだ』
 
「なにが起きるの?」

 まだゼゼリィは、コトの事態がわかっていないようだ。

「スルトが、動き出した。この世界に、向かってくる」

「キャルさん。スルトとは、まさか」

「レベッカちゃんの本来の持ち主である、魔王です」
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