ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第七章 青い炎のドラゴン! レベッカ究極進化

第63話 キャル VS ゼゼリィ!?

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『さて、お前さんは準備完了だな? 俺はどうするか』


 わたしは、レベッカちゃんに身体を預けている。

 だが冥竜の肉体は、どうもドラゴンの方ではないらしい。

 自身という魔剣を振るうにふさわしい、身体を探しているようだ。
 
「冥界竜……いえ、魔剣とお呼びした方がよろしくて? ワタクシが、あなたを振るいますわ。お手をどうぞ!」

 意気揚々と、クレアさんが手を差し伸べる。

『よせよ。無理するんじゃねえ、お嬢様』

 プイと、冥界竜がクレアさんにそっぽを向いた。
 どうやらクレアさんは、ドラゴンにはお気に召さなかったらしい。

『お前さんが、いいな』

「え!?」

 なんと、物陰に隠れていたゼゼリィに、冥界竜が取り憑く。

 なすすべもなく、ゼゼリィは魔剣に取り込まれた。

「いっ……くぅううう!」

 青い魔剣を構えて、笑みを浮かべる。

「ゼゼリィ!? 大丈夫!?」
 
『話しかけてもムダだ、キャル! ゼゼリィのやつ。完全に、取り込まれてやがる!』

 わたしが声をかけても、ゼゼリィは笑っているだけ。こちらに気づきもしない。

『いいだろ? ずっと俺の美声を聞かされているみたいな状態だ。俺の命令しか聞かねえんだよ』

 だったら、早く解放してあげないと。

「クレアさんは、浄化魔法の用意をお願いします!」

「承知しました。キャルさん、お気をつけて!」

 クレアさんが、精神を浄化する魔法の準備を行う。

『ゼゼリィは、返してもらうよ!』

『やれるもんなら、やってみな!』

 わたしは、レベッカちゃんを振るった。
 ゼゼリィではなく、魔剣の方を狙う。

 青い炎が、ヘビのようにのたくった。
 ゼゼリィの足に巻き付いて、蹴りを打たせる。

『デュラ!』

 ゼゼリィのキックが、わたしの斬撃を受け止めた。

「今度は、こっちからいかせてもらおう! ドゥラ!」

 レベッカちゃんを踏み台にして、ゼゼリィが跳躍した。
 かかと落としを、叩き込んでくる。

『おらあ!』

 レベッカちゃんも、剣で相手のかかとを打ち上げた。

 火花が散る。

 わたしは思わず、顔をそむけてしまった。

『スキだらけだぜ!』

 ゼゼリィが、回し蹴りを叩き込んでくる。

 死角からの攻撃に、わたしはどうにか対処した。レベッカちゃんで、相手の軸足を払う。

『ドゥオラ!』

 アラレイムはゼゼリィの身体を、コマのように回転させる。

『そらよ!』

 青い炎の剣で、ゼゼリィがこちらをかち上げてきた。

 レベッカちゃんで防御するが、わずかながら後ろまで押される。

 力比べなら、向こうのほうが上らしい。
 さすが、ドラゴンと言ったところか。 

『格闘術系の、魔剣かい?』

『そのとおりだ。この嬢ちゃんのファイトスタイルは、俺とマッチしているらしい』

『だとしたら、なおさらクレアが適任者だったと思うがねえ?』

『あのお嬢ちゃんとは、波長が合わん。なんか、聖なる力が邪魔してやがる』

 アラレイムの話を聞いて、わたしも思うところが。
 たしかに、聖剣さえ抜けるクレアさんに、わたしは魔剣を打っていいのだろうかと。

『あれでは一生、魔剣なんて扱えねえだろうな。真の意味じゃあよぉ』

 
 
 

                                      *
 
 
「わざと、ゼゼリィを行かせた!?」

 ヤトは魔剣を作ってもらっている間、プリンテスから意外な話を聞かされた。
 素材だけを集めてくるなら、キャルとクレアだけでよかったらしい。
 だが、どうしてもゼゼリィを連れて行く必要があるという。

「あたしがあいつをおつかいに出したのは、半分は文字通り魔剣づくりのため。だが目的は、もうひとつあるの。あの子を、魔剣になじませるため」

「そうはいっても、あっちに魔剣はないんでヤンスよね?」

 リンタローは、プリンテスに質問をする。

「冥界竜アラレイム自体が、魔剣そのものなのよ。あいつは並の炎も飲み込む、青い魔剣なの」

 青い炎を放つ、この世界でも最強クラスの魔剣だとか。
 その力は、レーヴァテインと並ぶほどだという。

「どうしてゼゼリィと、その魔剣と引き合わせる必要が?」
 
「あの子は、いちいち臆病すぎるわ。実力は正直、あたしよりあるくらいなの。鍛冶も、戦闘も。だけどあの子は優しすぎて、相手を傷つけるのを嫌う。自分の武器で相手が傷つくのも、嫌っているのよ」

 そんな状態で作った魔剣が、人を斬れるはずがない。

「ゼゼリィは魔剣打ちとして、致命的な欠陥があるわ。それを、冥界竜に焼き尽くしてもらう。あの魔剣を振るって、レベッカと戦って、ようやく見えてくる世界があると思うのよ」
 
 さらなる壁を超えなければいけないのは、ゼゼリィの方だった。
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