ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第七章 青い炎のドラゴン! レベッカ究極進化

第60話 原始の雷、発動

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 ゾンビになったカトブレパスが、わたしたちに襲いかかってくる。

「気を付けてキャル! カトブレパスゾンビは、目が見えなくてもこちらを探知するよ! うわ!」

 どんくさいと思っていたカトブレパスが、俊敏な動きでゼゼリィに向かっていった。長い首を、ゼゼリィに向けて叩きつけようとする。

『おっと! アンタの相手はこっちだ、つってんだろーが!』

 レベッカちゃんが、ブチ切れ気味でカトブレパスを剣で殴った。

 だが、たいして効いていない。

『死体だからかねえ? 復活するんだよ!』

「いくら死体を倒しても、意味がないんだよ。沼の底にいるドラゴンゾンビが、常に死体を復活させてしまうんだ!」

 ゼゼリィが言うには、この沼の主を倒す必要があるという。

「ドラゴンゾンビなんて、見えないよ!」 

「任せて! 【邪眼】!」

 ゼゼリィが持つ金属製の瞳から、光芒が放たれた。
 どうやら、照明魔法のようだが。

「いた! 三〇メートル下に、敵の影!」

 ゼゼリィの邪眼は、魔物の居所をとらえることができるのか。
 
 だが、わたしの剣では届かない。

『そんな深さでは、ウェーブ・スラッシュも届かないねえ』

抹消砲ディスインテグレイト・レイ】も、この角度だと発射できないか。

 潜るしか、ないんだろう。
 だが、こんなドロドロの底なし沼で、息が続くかどうか。
 
「キャルさん……ここは、ワタクシに任せていただけませんこと?」

 おお、クレアさんがやる気だ。
 久々の強敵出現に、拳を鳴らしている。

「トートさん、二番を」

  使い魔のトートに指示を出す。

 トートは一〇徳ナイフ型の鞘から、槍を取り出した。
 クレアさんがキャッチして、槍を装備する。
 棒高跳びの要領で、空に舞い上がった。

「ゼゼリィさん、気配はわかりまして?」

「うん! 沼の底全体に、ドラゴンゾンビは拡がっているんだ!」

「沼の底全体が、ドラゴンゾンビですのね」

「そうだよ! コアとかはないから、打撃さえ与えればダメージは入るよ! 結構強力な一撃じゃないと、倒せないけど」

「なるほど! いい的ですわ!」

 クレアさんが、魔力で槍を更に伸ばす。

「なにそれ!?」

「これが、グミスリル鉱石の効果ですわ!」

 弾力のあるグミスリル鉱石なら、強度を維持しつつ伸縮が自在となる。

「お覚悟を」

 沼の底に、槍をぶっ刺した。

「ダメ押しの……【雷霆蹴りトニトルス】!」

 槍の石突に、クレアさんはかかと落としを繰り出す。

原始の雷ゲンシノイカヅチが、ドラゴンゾンビに叩き込まれた。

 結構強力な一撃過ぎるでしょ、クレアさん。

 とぷん、と、ドラゴンゾンビらしき物体が浮き上がってくる。

 同時に、他のゾンビたちが崩れ落ちた。

「この骨だらけのナマズが、ドラゴンゾンビですのね?」

「そうそう。でも普通は釣り上げてやっつけるんだよね」

 だったら、ヤトを連れてくるべきだったか。
 
『なるほど。そうやって倒せばいいのか』

 おや、レベッカちゃんが悪い顔になった。
 これは、変なことを考えているぞ。

『もう一箇所、沼地があるねえ』

 レベッカちゃんが、沼地の中心まで飛び上がる。

『おらあああ! 【ブレイズ・トラスト】!』

 ウェーブ・スラッシュを、真下に向けて発射した。

 ドン! と、小気味いい音が、沼地の底で鳴る。

 ドラゴンゾンビを、倒したようだ。

 しかし、いつまで経ってもドラゴンが浮かんでこない。
 逆に、わたしたちが沼に沈んでいく。

 違う。沼の水が減り始めているんだ。

「え、何が起きたの?」

 ドラゴンゾンビの頭が、見えてきた。

「キャルさん、沼が乾いていきますわ」

 ブクブクと泡立って、沼が沸騰しているのだ。
 やがて、完全な乾燥地帯に。
 
 なんこったい。沼を干上がらせてしまうとは。

原始の炎ゲンシノホノオ】、恐るべし……。
 火野取り扱いには、注意だね。

「まあ、結果オーライだから」

 ゼゼリィは言うが、なんのフォローにもなっていない。
 
 とはいえ、沼はまだまだたくさんある。

 ドラゴンゾンビの一体や二体、倒してもいいだろう。

「低級ドラゴンゾンビってのは?」

「さっき倒した、カトブレパスゾンビのことだよ」

 あああ。上級ドラゴンゾンビも倒してしまったと。

 わたしは頭を抱える。

 原始の炎、やりすぎたー。

「大丈夫。沼はまだ、あちこちで生きているからね」

 ひとまず、一体はレベッカちゃんに食べさせてもいいだろう。

『いただくよ……』

 ドラゴンゾンビの骨を、レベッカちゃんは刀身で溶かす。
 
『ふむ。魔物を食らうってのは、久々な感じがするねえ』

 最近は、金属ばかりを食べさせていたもんね。

『なるほど。魔物の骨の方が、魔剣としてはしっくりくるってのは、感覚でわかってきたよ』

 レベッカちゃんの柄が、骨の形に近づいてきた。

 なるほど。柄にも意識を向けろってのは、こういうことか。

「キャルさん。なにか、掴めそうですか?」

「うん。やっぱり、何事も実戦だね。魔剣を強くするには魔物を食わせろってことなのが、ようやく実体験でわかってきたよ」

 これならクレアさん向けの魔剣作りも、はかどりそう。


「あ、遺跡があった」

 干上がった沼地から、遺跡の入口が出てきた。

「あれが、冥界竜アラレイムのいる遺跡?」

「間違いないよ」

 邪眼で何度も、ゼゼリィが確認をする。

 どうやら、ここが遺跡の入口で間違いがないらしい。
 
『ガハハ! これこそ、ケガの功名ってやつさ』

 レベッカちゃん、絶対に狙っていなかったよね。
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