ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第六章 敵はレーヴァテイン!? 魔女イザボーラの居城を叩け!

第53話 レーヴァテイン VS レプリカ

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 レーヴァテインが、ゴーレムを勝手に動かして、魔女イザボーラを刺したではないか。
 そんなことも可能なのか。

「拾い主の恩を、仇で返すの!?」

『オレサマは最初から、自立して動けるのだ。このように』

 ミスリルゴーレムが、イザボーラの指示なしでひとりでに動き出す。

『一人で勝手に、手足がなければ魔剣は動かぬと誤解していたに過ぎん。オレサマはレーヴァテインぞ。それくらいできずにどうするか?』
 
 たしかにレベッカちゃんは、わたしに憑依できるが。
 無機物まで操作するとは。

「このアタシを殺して、あなたが魔剣を維持できると思っているの!? ヘパイストスがなければ、あなたはただのデクノボウなのよ!?」

『心配をすることはない。この機動兵器の扱い方は、お前より知っている。安心して死ね』

 ミスリルゴーレムが、より深々と魔剣をイザボーラに突き刺した。

 イザボーラの肉体が、みるみるしぼんでいく。

『フン。大した魔力を持たぬくせに、支配者ぶるとは』

 ゴーレムが、イザボーラだったものから剣を引き抜く。
 亡骸をつまんで、ポイと外へ放り出した。
 
 自分を拾った相手すら、手にかけるとは。
 レーヴァテインの性格を見るからに、かなり危険な相手と見た。

「なんでヤツでヤンス」

「……あのさ、みんな」

 わたしは、みんなに提案をする。


「この魔剣とは、わたしとレベッカちゃんだけで戦いたい」

「なにを言っているのか、わかってる? キャル?」

 ヤトが猛反発した。

「相手は【原始の炎】を標準装備した、凶悪な魔剣。こちらは【原始の氷】魔法も持っている。束になってかかれば」

「それは、わかってる」

 おそらく集団で戦ったほうが、勝率は高い。

 しかし、どうしてもこの魔剣とは、二人だけで戦わなければならない気がした。

「フルーレンツさんも、いいかな?」

「我は、あなたに従うまで」

 まず、フルーレンツさんの承諾を得る。

「クレアさんは、どうですか?」

「キャルさんの行動で、間違っていたことは一度もありませんでしたわ」

 あれだけ好戦的だったクレアさんが、引き下がった。

「悔しいですわ。ワタクシでは、あの魔剣レーヴァテインに、傷一つ付けられないでしょう。それは、重々承知していますわ」

 クレアさんは、唇を噛む。よほど、悔しいのだろう。

「ソレガシは、あまり気が進まないでヤンス。合理的に戦うなら、少しでも勝率を上げたほうがいいでヤンスよ」
 
「私も、同意見。無謀な行為は避けるべき。あなたが負けたら、魔剣は外に出て、すべてを破壊していく。誰にも止められなくなる」

 外に危険が及ぶことを、ヤトとリンタローは懸念していた。
 一度妖刀に憑依されたことのあるヤトは、なおさらだろう。

「だからこそ、あのレーヴァテインとは一対一で戦わなきゃならない」

「キャル!」

「みんなの力を借りてばかりだったら、この先レーヴァテインがまた現れたとき、まともに戦えない!」

 ただでさえレベッカちゃんという、サンプル品のレーヴァテインを持っているのだ。
 なのに、戦闘になると周りに頼り切りなんて。

 これではレベッカちゃんの全力を、いつまでも測れない。

 この戦いは、レベッカちゃんの腕試しでもあるのだ。

『アタシ様がどこまでやれるのか、キャルの錬金術がどこまで通用しているのか、試すなら、まだレーヴァテインが欠片のうちしかないのさ』
 
 欠片の状態でも、レベッカちゃんの方が弱いとわかったら、すぐに応援してもらう。

 だが、手応えがありそうなら!


「これは、わたしたちのプライドの問題だよ。もしなにかあったら、お願い」

「わかった。好きにしたらいい」

 ヤトとリンタローは、同室にある【セーフエリア】まで下がっていった。

 ダンジョンには、セーフエリアという回復施設が自然発生する。
 闇の力が溢れる場所には、必然的に光の力も微量に集まるのだ。
 そうやって、ダンジョンの秩序は保たれている。
 たとえ魔剣でさえも、手は出せない。

『話し合いは、済んだか?』

「うん。あんたは、わたしとレベッカちゃんだけで相手をする」
 
『フン。試作品ふぜいが、オレサマにケンカを売るとは』
 
 ゴーレムが、イザボーラの使っていた魔剣にレーヴァテインを埋め込む。

『こおおおお!』

 魔剣から炎が吹き出し、質量のある炎へと変わった。

『これが、レーヴァテインの真の力だ! テメエのようなサンプル品とは、できが違うんだよ!』

『それは、アタシ様に傷をつけられてから言うんだね!』

『ほざけ、不良品がぁ!』

 ミスリルゴーレムが、剣を振り下ろした。叩き落とすというべきか。

 その剣を、わたしは片手でレベッカちゃんを構えて防ぐ。
 
 バシュッと、魔剣同士が炎を吹く。

『なんだと!?』

『質量を持った大剣なんてのは、こっちだって出せるんだよ! アンタだけの専売特許じゃないのさ!』
 

 この技術は、クレアさんの魔剣を作ったときにできた副産物だ。

 レベッカちゃんの刀身を主軸にして、炎に質量を持たせて巨大な刃にしたのである。

『ならば、どちらの炎が強いか試させてもらう』

『おうさ!』

 わたしとゴーレムで、炎の剣を打ち合う。

 いくら質量があるとはいえ、グニャグニャと曲がりながら叩きつけあった。

『なぜだ!? なぜゴーレム相手に、ここまで追随できるのだ!?』

『あんたのヨロイは強固な分、すっからかんなんだよ! がらんどうなのは、扱ってみたらわかるだろうが!』

 ミスリルゴーレムは、ほぼハリボテだった。中に魔物の骨を埋め込んではいるが。
 純粋に鉄の塊だったら、わたしも押し負けていたかもしれない。
 だが完全なミスリル銀ばかりでは、扱うにしても相当な魔力量が必要である。
 極力、薄手にしたほうが使いやすかったのだろう。

『ならば!』

 ゴーレムが肩から、二本の大砲を撃ち出す。

『おっと!』

 レベッカちゃんが、砲撃を側転で回避する。

 続いてゴーレムは、指から無数の炎の弾丸を撃ち出した。

 魔剣を回転させて、攻撃を弾き返す。
 
「この攻撃は……レベッカちゃん!」

『わかってるよ。キャル。あのヤロウ、「この世界にない武器」を使ってやがるね!』

 明らかに、この世界では追いつかない文明を利用している。

 わたしが適応できているのは、シューくんの発明を見ていたからだ。「シューくんなら、あんな武器は編み出せるだろう」と。
 
 とはいえ、しっかりとテストしていないのだろう。雑な攻撃ばかりが続く。

『そっちが邪道で攻めるなら、こちらも道を踏み外すよ!』

 レベッカちゃんが、地面に剣を突き刺した。
 ダメージ床を、形成する気だ。

『ちいい!』
 
 だが、ミスリルゴーレムは下半身を犠牲にして、飛行した。
 これも、わたしが見たこともない技術である。

『くらえ。【マジックミサイル】!』

 ゴーレムの下半身が砕け、破片が誘導弾となって襲ってきた。

 これは、レベッカちゃんでも防ぎきれない。

『とどめ!』 
 

 上空から、レーヴァテインの炎が振り下ろされた。

「わあ!」

 わたしの身体が、ふっとばされる。

「レベッカちゃん!」

 魔剣を手放してしまったため、わたしの意識が身体に戻ってきてしまう。

『手間を掛けさせやがって。だが、これでお前も、オレサマのモノだ!』

 ゴーレムが、レベッカちゃんをつまみ上げた。

 レーヴァテインの刀身へと、近づけていく。

 融合する気か。

……なんて、無謀な。
  
『ケケケ! 食えるもんなら、喰らってみな!』

 レベッカちゃんに、レーヴァテインが侵食していく。

『負け惜しみを……うっ! グヘエエエエエッ!』

 即座に、魔剣レーヴァテインはレベッカちゃんを手放す。
 その刀身は、ナイフより小さくなってしまっていた。
 
 やはり、食あたりを起こしたか。
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