ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第五章 魔術師のダンジョンと、伝説のガイコツ剣士

第41話 ガイコツ剣士

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 どうやら、トラブルが発生したみたいだ。

 こんなときに。

『まあ、アイツらなら大丈夫さ。キャルは万全の状態で、戦えばいい』
 
「うん。それと、もう一つ。この盾には、もう一つオマケがあるのだ」

『何だってんだい?』

「実はね。ジャジャーンと」

 わたしは、とある杖をレベッカちゃんに見せた。

 一見すると、サンゴの寄せ集めにしか見えない。

 だが、その正体は禍々しいマジックアイテムである。
 
『【抹消ディス・レイ】かい。いいね~っ!』

 さすがレベッカちゃんだ。この杖の本質を、一発で見抜くとは。

 ディス・レイは正式名称を、【ディスインテグレイト・レイ】と呼ぶ。

 この杖を掲げると、高純度な無属性破壊光線を直線上に照射する。

『無属性攻撃か。いかにも【原始の炎】が活かせそうな、凶悪装備じゃないか』

 これは魔王が落とした中でも、最高級品である。

 それを、わたしはみんなから譲ってもらったのだ。

 わたしはこの杖とレーヴァ―テインとを、錬成しようかと考えた。
 
「ただねー。魔剣との相性が最悪なんだよね……」

 魔剣の先から照射するくらいなら、杖から撃つ方がいいだろう。

 かといって魔剣レーヴァテインの力がなければ、【原始の炎】が活かせない。

『それこそ、クレアの【魔剣 一〇番】の素材にするしか、考えつかないよ』

 わたしも、そう思っていた。

「だけど、断られたんだよ。制御できるかわからないし、『撃つときは棒立ちですわー』って」

 なにより今のクレアさんは、【電撃スパーク 格闘術アーツ】使いだ。
 電撃格闘術を取ったことにより、ファイトスタイルがより【魔法拳士】に近くなっている。
 本格的に、魔法は肉体強化に注ぎ込むだろう。

 そこにいくら無属性とはいえ、棒立ちビームなんて必要かと。

『で、棒立ちでビーム発射なら、アンタだろと』
 
「そういうこと」

 てなわけで、わたしにお鉢が回ってきたわけよ。

 
『けどアタシ様だって、戦闘になったら割と動くよ。棒立ちってわけじゃない』

 ご安心を。 
 
「そこで、この【第三の腕】くんが、がんばってくれるわけよ」
 
『ほほう。どうなるか楽しみだ』

「まあ、先に出発しよう。実践で試せばいいじゃん」

『ぶっつけ本番でお披露目ってわけだね? ワクワクするねえ!』

 こんなときに「ちゃんと準備しなよ」と言わない辺り、レベッカちゃんらしい。
 わたしを信頼してくれているんだな。
 
 

『キャル。ようやくメイドアーマーが、できあがったみたいだよ』

 五分後、ようやくメイド服が完成した。

「え、思っているよりいいかも?」

 姿見で、見た目を確認してみる。
 かなり、完成度が高い。
 露出は、思っていたより控えめだ。
 
 これなら、ダメ出しも食らうまい。
 
「さて、行きますか!」

 仙狸のテンちゃんに乗って、出発をする。


                                      *


 廃墟の村は、死霊系の魔物で溢れかえっていた。
 すべてのガイコツが、武装している。

 キャラメ・Fフランベ・ルージュの扱うスパルトイのように、統率されているわけじゃない。
 それぞれが独立した思考を持ち、無差別に攻撃を行っている。

 どこかの騎士団だったのか、装備もそれなりだ。腕も立つ。

 並の冒険者たちが、敵う相手ではなかった。
 先発隊が、逃げ惑う。
 
「みなのもの、下がれ! ぬおおお!」
 
 ヒゲをたずさえたドワーフの戦士が、斧を振り回す。
 自身をコマのように旋回させ、両手斧の勢いを上げていった。

 スケルトン兵団が、面白いように砕けていく。

 回転する度に、老人のヒゲが風になびいているのが勇ましかった。
 
 ベテランの戦士なのか、彼の目に油断の色はない。
 正確に戦局を見極め、冒険者の退避を促している。

「あとは、引き受けたでヤンスよ。【サモン・グリズリー】でヤンス!」

 リンタローが、灰色のクマを召喚した。
 冒険者を追ってきたスケルトンを、クマが通せんぼする。

 続いてリンタローは、負傷した冒険者たちを一箇所に集めた。

「いいでヤンスね? いくでヤンス。【キュア・ウーンズ】でヤンス」

 冒険者たちの傷が、徐々に回復していく。

「リンタローさん、あなた、回復役でしたの?」

「いい忘れていたでヤンスが、ソレガシは【ドルイド】なんでヤンス。格闘はオマケでヤンして、主にヒーラーなんでヤンスよ」

 それで、純粋魔法使いのヤトが安心して戦えるのか。
 いざとなったら、クマに壁役をしてもらうと。

「お見事な、作戦だと思いますわ」

「といっても、クマは最近召喚できるようになったばかりでヤンス」

 自分が戦ったほうが早いので、クマ召喚を取っていなかっただけらしい。

「これで、ラストじゃ!」

 最後の一匹に向けて、ドワーフの老戦士は回転速度を上げる。
 
 だが、たった一体のスケルトンが、ドワーフの戦士を止めた。

 そのスケルトンが所持しているのは、魔剣である。
 ガイコツ剣士の得物は、両手持ちの剣だ。
 なんと、無骨な剣か。剣というより、鈍器に近い。

「退散するでヤンス! それは、あなたが勝てる相手じゃないでヤンスよ!」
 
「ならん! 強い相手なら、なおさら売られたケンカは買わねばのう!」

 この老人、戦闘を楽しんでいた。
 
「リンタローさん、止めないでおきましょう」

 今は敵の数が減っている。周囲を警戒しつつ、このガイコツ剣士の戦闘力を見ておいた方がいい。

「ぬん!」

 ドワーフ戦士が、両手斧でガイコツ剣士に斬りかかる。
 
 まるで熟練した、ダンスのような動きだ。

 だが、剣士は魔剣を片手だけでふるい、ドワーフの腕力を受け流した。

 軌道を変えた両手斧が、岩をチーズのように切り裂く。

「なんと! 我が自慢の斧を流すとは! では、おかわりといこうかのう!」

 ドワーフ戦士が、スコップのように両手斧で土をえぐる。

 石や岩が、ガイコツ剣士の身体や顔面に突き刺さった。
 怯んだ様子は見られないが。

 ドワーフ戦士が、いつの間にか消えていた。

 かと思えば、剣士の足元から斧を振り上げてきたではないか。

「取った!」

 ドワーフ戦士が、勝利を確信する。

 なのにガイコツは、片手だけでドワーフの斧を受け止めてしまった。
 下から盛り上がってきたドワーフを、また剣で押し戻す。

「くう! 無念!」

 さらに追い打ちをかけようと、ガイコツ剣士が剣を振り上げた。
 
雷霆蹴りトニトルス!」

 クレアが、魔剣を飛び蹴りで薙ぎ払う。
 ここからは自分の出番だ。

「リンタローさん、彼の治療を」

 クレアは、一番のショートソードに剣を持ち直す。

 ヤトも、リンタローの周りを氷の結界で覆った。

「バフが欲しかったら、言って」

「ありがとうございます」

「【エンチャント:氷】!」

 クレアの剣に、氷属性の魔法が付与される。

「【電撃格闘術スパーク・アーツ】!」

 足に雷属性の肉体強化魔法を施し、クレアはショートソードでガイコツに切りかかった。
 
 まずは、魔剣の属性を調べるか。

 以前ヒクイドリと戦ったときは、炎属性の魔剣を飲み込んでいた。

 この剣士はどうか。

 クレアの速度に対処するためか、あちらも両手に持ち替えた。
 必要最小限のさばき方で、クレアの攻撃を流す。
 あんな大きな剣を振り回しているのに、どこまで器用なのか。

 クレアの速度に、追いつけるとは。
 
「あちらも、スパーク・アーツ使いですわね?」

 となると、魔剣も雷撃属性か。

 どうにか、ガイコツ剣士の動きを止める。
 
「くっ!」

 だが同時に、クレアの剣も弾かれた。

「トートさん、二番を!」

 クレアが、トートにヤリをリクエストする。

 しかしヤリを受け取ろうとしたとき、横っ腹を蹴られて位置をずらされた。
  
  そのスキを狙って、ガイコツ剣士がクレアに対して距離を詰めてくる。

『おらああ!』

 ガイコツ剣士に、何かが衝突した。

「キャルさん!」

『またせたね。キャラメ・ルージュのお出ましだよ!』
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