ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
15 / 80
第二章 姫に頼まれ、魔剣を作る

第15話 火山地帯へ

しおりを挟む
「クレアさん、あそこですかね?」

 わたしたちは、火山地帯に到着する。

「酷い有様ですね」

 そこは、見事に土砂崩れが起きていた。自然現象ではない。明らかに、魔物などの強い外部の力が働いている。

「キャルさん、岩を壊しましょう」

「待ってください。クレアさん。スパルトイのオウルベア軍団、来て!」

 わたしはスパルトイの中から、オウルベアのガイコツを呼んだ。あと探索用にウルフのガイコツも。

「オウルベア、ガレキをどけて!」

 指示を出すと、オウルベアはよいしょと岩石をどけ始める。

「そうそう。その調子……うわ!」

 モンスターが、押し寄せてきた。

「なんて数ですの!」

 赤いワニ、黄色い巨大クモ、炎の弾を吐くてんとう虫が。中央には、イノシシ頭の亜人種がいる。トサカが燃え盛っていますが、平気なの?

「火山に適応した、オークまでいますわ!」

 わたしの知っているオークとは、かなり違うけど。

 これは……いいスパルトイの材料になりそう!

 とはいえ、やっつけないと仲間にならないよね。 

「ええい、負けるかっての」

『残りのスパルトイも、出てきやがれ!』

 わたしより早く、レベッカちゃんが指示を出した。

 数には、数で勝負だ。やってやれないことはないっ!

 オウルベアには引き続き道を作ってもらいつつ、岩で遠投をしてもらう。

 炎のワニが、岩に叩き潰された。

 だが、炎のてんとう虫が岩を溶かしてしまう。

「あーっ、オウルベアがーっ!」

 オウルベアが、溶岩をかぶって溶けちゃった。後で治してやるから、待っとれい。

『ゴブリン・毒弓部隊! 出番だよ!』

 ならば、弓矢で撃ち落としてやる。

『仕込んだ特製の毒弓で、混乱しちまいな!』

 矢に貫かれたてんとう虫が、敵味方問わず火の玉を乱射する。

「うわ、結構被害がデカい! レベッカちゃん、やっぱ普通に仕留めて!」

『あいよ。聞いての通りさ。通常の矢を浴びせな!』

 結局ノーマル弾で、てんとう虫砲台を撃ち落とす。

 オウルベアが、オークに岩を投げつけた。

 片手に持った蕃刀を振り下ろし、オークが岩を切り裂く。並のモンスターではないようだ。火山の魔力を吸って強くなったのか、あるいは、なんらかの作用が働いているのか。

「オークは、ワタクシが仕留めますわ!」

 蕃刀を持ったイノシシ頭が、クレアさんを見てニヤリと笑った。うええ。

「メスをエサにしようとなさって? おあいにくさま」

 クレアさんは、レイピアを所持している。わたしが作った剣の中で、どうにか雷属性に合いそうな品だ。柄のガードに魔法石を埋め込んであり、魔法増幅装置として働く……ハズ!

「サンプルの魔剣、試させていただきます」

 わたし作のレイピアを構え、クレアさんが魔物と向き合う。

 オークは油断しているみたいだ。「そんな細い剣で何ができるのか」という、顔をしている。

 だが、彼はすぐに肉塊となった。何をされたのか、想像もつかなかっただろう。クレアさんが動いた瞬間に、ボロボロの炭になったから。

 とはいえ、魔剣も壊れちゃったんだよなあ。

「調節を間違えました。すいません」

 クレアさんの力を、甘く見積もっていた。魔力に耐えきれない剣なんて、作っちゃダメだよね。

「いいえ。ワタクシの魔力調節に、問題がありました。全力を出しすぎて、せっかくの武器が。所持者として、情けないですわ」

「とんでもない! もっと頑丈な武器を作りますんで」

「お願いしますわ」

 オークが落とした蕃刀を、手に取る。

「これを、錬成できれば」

 わたしは、壊れた魔剣と蕃刀を錬成し、かけ合わせた。

「蕃刀の頑丈さと、レイピアのきめ細やかさを両立させてみました。今度は、耐久力も上がるかと」

「ありがとうございます。先へ進みましょう」

 わたしたちは、先を急ぐ。

「見えてきましたわ」

 壊れた馬車が、視界に入った。

 以前、店に来てくれた冒険者たちも、馬車の周りを守っている。

「来てくれたのか。ありがとう!」

 リーダーの男性が、わたしたちに礼を言った。

「応援は我々だけですわ。申し訳ありません」

「来てくれただけでも、感謝するよ! 本当にありがとう」

 冒険者だけではない。行商人さんも、何度も頭を下げている。

「しかし、積み荷が」

「そんなの、置いていけ! 逃げるぞ!」

「積み荷のほうが、大事なんだ!」

 冒険者リーダーが、行商人を馬車から離そうとした。たしかにウマは逃げちゃったから、もう馬車は意味をなしていない。

「アイテムは、こちらで預かります」

 わたしのアイテムボックスは、ドロップアイテムである【龍の眼:極小】のおかげで、無限だ。何でも入り、腐らない。

「何から何まで、助かるよ」

「それはいいですから、逃げてください。早くしないと……」

 何者かが、空からこちらを見ている。デカい。一五メートルくらい、体長があるな。全身が黒く、頭部から首にかけて青い。虹色のトサカを持っている。

「ヒクイドリだ!」

 とうとう、ヒクイドリに見つかってしまった。派手に暴れたもんな、わたしたち。いくら、街道を修復しようとしていたとはいえ。

「みなさんは、逃げてください!」

 冒険者たちが、駆け出した瞬間だった。

 巨大ヒクイドリが急降下し、蹴りを放つ。獲物をとらえるかのように、オウルベアごと岩石を掴んだ。再度宙を舞い、空中でオウルベアと岩を粉々に砕く。

「ひいいい!」

 行商人が、恐怖で駆け出していった。

 声に反応したのか、ヒクイドリが行商人を視認する。

 いけない。魔物が彼をターゲットにした。

 わたしは、即座に【ファイアボール】を放つ。

 ヒクイドリが行商人さんに蹴りを繰り出した。

 そのタイミングで、火の玉が魔物の足にクリーンヒットする。威力は低いが属性を無効化する、【原始の炎】を込めた火の玉で。

 射撃ダメージしかないものの、ヒクイドリから行商人を守ることだけはできた。

「逃げて! 応援を呼んできて!」

 もう一度冒険者たちに叫び、わたしはヒクイドリをこちらへ引き付ける。

『さあ、どうしたよ。アタシ様はここだよ、このコケコッコー野郎!』

 魔剣を振り回して、レベッカちゃんにヒクイドリを挑発してもらった。

 相手は、わたしがディスったと思っているんだろうなあ。 

「キャルさん。今度もワタクシがいただきますわ」

「どうぞ」

 わたしが言った瞬間、クレアさんが足元に【雷霆蹴りトニトルス】を繰り出した。ヒクイドリより、高く跳躍するためである。

 空中戦なら負けないと、ヒクイドリも高く舞い上がった。

「キック対決など、無粋なマネはいたしませんわ」

 なんと、クレアさんが空中を蹴る。上空でナイフを足場にして静電気を発生させ、空中から急降下したのだ。

 攻撃モーションに移っていたヒクイドリが、あっけにとられた顔になる。

「もう、遅いですわ」

 ヒクイドリの首をハネて、クレアさんが急降下した。

 魔物の身体が、空中で炭化する。

「ヒクイドリのクチバシと、トサカ。肉もゲットしましたわ」

「すごいです、クレアさん」

「本当にすごいのは、キャルさんの魔剣ですわ。今度は、壊れておりません。ワタクシ、本気で全力の雷光を注ぎ込みましたのに」

 勝ったというのに、クレアさんは少しむくれていた。

『……キャル! もう一匹くるよ!』

 とっさに、わたしはクレアさんを突き飛ばす。

 同時に、背中に強烈な打撃が入った。

「キャルさん!」

「平気です!」

 わたしは、レベッカちゃんで攻撃を防ぐ。レベッカちゃんが気を遣って、わたしに憑依してくれたおかげだ。とはいえクリスさんの避難を優先したので、結構なダメージが入ったけど。

「クレアさんは逃げてください! コイツは、わたしが仕留めます!」

「でも!」

「まだコイツらには、仲間がいるかも知れません!」

 わたしがそう言うと、クレアさんは自分のすべきことを悟ったらしい。すぐにわたしを置いて、行商人さんの元へ。

 それでいい。

『さて、遊んでやるよ。クソコケコッコーが!』
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

処理中です...