社畜は助けた隣のお姉さんに、ベランダで餌付けされる

椎名 富比路

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第四章 お隣さんと、おうちデート

第27話 一緒に焼肉

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 俺と寿々花すずかさんは、ホットプレートを外へ出した。

 正確には、こたつテーブルを窓際まで持っていくだけだが。

「よいしょよいしょ」
「ここでいいですよ」

 テーブルを窓際に置いた。

 ああちくしょう。俺はなんで外用のテーブルを買わなかったのか。一応それっぽいものがあるのだが、皿を二、三枚置いたら埋まってしまう。とても、ホットプレートまで置くスペースはない。
 とはいえ必要はないか。こんなことたまにだろうし。

 延長コードを出して、プレートの配線を伸ばす。延長コードなら、腐るほどある。風呂に入りながらノートPCで動画を見たくて、配線を何本ものコードでつなぐのだ。目が良くないから、スマホだと見えないのである。

「いつでもいけます」
「タン塩から行くね」

 寿々花さんが、熱したプレートにタンを置いていく。

 肉を焼いている間に、俺は皿とタレ、レモンと塩を用意する。そそう、酒とライスも忘れない。

「ドリンクはお茶でいいです? 無糖の炭酸もありますけど」
「お茶をいただきまーす」
「はいどうぞ」

 二リットルのお茶を寿々花さんの隣に置く。

「ヒデくん焼けた! お先にどうぞ」

 ここはレディファーストだろうが、寿々花さんはフェアを望む。

「では、お言葉に甘えて」

 焦がしてしまっては、せっかくの譲り合いもムダになる。

 それに、寿々花さんの分も焼けているしな。

「いただきます。塩レモンいいっすね」
「ホントだねえ」

 専門店と比較しても、実に薄い肉だ。実際は物足りないはずなのに、こんなにも満たされている。

「手頃な値段でも、幸せって買えるんですね」
「うん。実感してる」

 二人でタン塩を楽しんだ。

 続いて、カルビをいただく。こちらも、見た目こそ安っぽい。しかし、一度口に入れたら……。

「はああ。はああ」

 言葉が出ない。肉を焼きコメをかき込むだけの、マシーンになってしまった。なんの生産性もない、堕落したおっさんになる。これは、人をダメにする味だ。頭からつま先まで、機能停止をさせる。

「キャンプでお肉を焼いたじゃん。ぜったいアレ以上の経験って、なかなか得られないって思ったの」
「俺もです。とんでもないですね」

 家で肉を焼いて、こんなに幸せになれるとは。

「やっぱりさ、一緒に食べる人がいるとぜんぜん味変わるんだね」
「ですよね。それ焼けてますよ」
「おっとっと」

 ロース肉を山盛りご飯の上に載せた寿々花さんの、実にうれしそうな顔よ。

 これを見るためなら、家じゅうが臭くなっても構わない。

 ライスをロースに巻いて食いながら、俺は喜びを噛み締めた。

 メイストームのせいか、風は少し強い。だが、そのおかげで臭みはすべて吹き飛ばしてくれた。ありがたい。

 ホットプレートを洗った後、外でくつろぐ。俺は缶ビールで、寿々花さんはオレンジジュースで。

「お酒が飲めたら、よかったんだけど」
「体質の問題ですからね。こればっかりは」

 冷えたビールが、油まみれのノドを潤してくれる。こんなウマい酒って、いつ以来だろう。

「このジュースおいしいねぇ。ひっく」

 なんだか、寿々花さんの様子がおかしい。目がうつろになり、千鳥足になっている。気分も心なしか陽気な感じに。

「あっ、それジュースじゃないですよ。ノンアルです」

 俺は、寿々花さんの持っている缶を確認した。

 健康診断が近いので、ノンアルの酒を買っておいたのだ。
 ノンアルコールと言っても、微量のアルコールは入っている。
 そんな量でさえ、寿々花さんはこんなになってしまうのか。

「ヒデくん、風が気持ちいいねぇ」

 寿々花さんが、柵から身を乗り出す。

「危ないですよ」
「だいじょーぶ」

 そのとき、五月特有の強い風が拭いた。

 ブラウンのロングスカートが持ち上がる。白い太ももがさらけ出された。

「ひゃああああ!?」

 スカートを抑えようとして、寿々花さんは手を柵から放してしまう。あやうく、おっこちそうになった。

「寿々花さん!」

 俺は、寿々花さんの腰を抱きしめる。

 どうにか、落下は免れた。

 しかし、ムリに引き寄せたので、家の中へダイブしてしまった。

 俺は、寿々花さんを押し倒す形に。
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