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秋編 ネクロマンサーと、罪なハロウィン

ドクロ執事 迫害された王《ライカーガス》のライスガスキー

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「お嬢、ここは我にお任せを」

 踊り場に、もう一体のスケルトンが現れました。上半身裸に武闘着を身にまとった、格闘家風のガイコツです。

「え、ライスガスキーッ!あなたが?」

 大きなガイコツを、ジターニャさんは消しました。

「はっ。ガシャドクロが手に負えぬ手練。相手にとって不足なし。執事であるこの我が、かの者を追い払って差し上げましょうぞ」

 随分、意気込んでいますね。

「さて、御婦人。我が名はヤムキン家にアンデッドながら仕えてきた執事、ライスガスキー。かつて迫害されし王ライカーガスという、名の知れた不死の武芸者でした。逃げるなら、今のうちですぞ」

 スキのない、武人らしい構えです。

「ほほう。見事なまでの自然体。隙だらけのようでいて、まったく入り込む余地がない」

「いつでもどうぞ」

「では……参る!」

 飛び込んできたライスガスキーさんの前に、わたしは手をかざしました。

 わたしの手が、青白く光ります。

「ターンアンデッド」

「んひい!?」

 突進してきたライスガスキーさんが、急ブレーキをかけました。

 わたしが、浄化魔法を展開したからです。

「ぬ、侮ったわい。出で立ちからダークプリーストと思わせて、本物の聖職者とは。しかも、我を一瞬で消しされるほどの!」

「あなたたちと遊んでいるヒマは、ないのですよ」

 浄化魔法を消し、またわたしは自然体に戻りました。

「降参致そう。我らを追い出そうという気は、ないようですので」

「ライスガスキーッ! 最後まで戦いなさい!」

「お嬢、彼女たちは敵ではありませんよ」

「どうしてわかるのよ!?」

「あのターンアンデッドの魔法は、単なる脅しだからです」

 やはり、見抜いていましたか。

「もし本当に、お嬢を問答無用で追い出すなら、初手でガシャドクロが浄化魔法で消滅していたはず」

 はい。おっしゃるとおりで。

「我らと話すために、こちらの方は戦闘をとりやめたのです。誠意にこたえるべきです」

 闘志むき出しのジターニャさんに対し、ライスガスキーさんは冷静ですね。

「ひとまず、話をしません? この娘では話にならないので」

 ライスガスキーさんなら、話せそうです。

 最初から、こうすべきでした。

「ピザも冷めちゃってますね。お電話をお借りしても? 代金はお支払いしますので」

「どうぞ」

 もう五枚、ピザを頼みます。大人数でおしかけますから、これくらいで十分でしょう。

 王女、ソナエさん、出前に来てくれたゴロンさんも交えて、ピザを囲みます。

 ジターニャさんが最初に頼んだピザは、冷えてしまいました。なので、王女に炎魔法で温め直してもらいます。

 食事を必要としないライスガスキーさんが、お茶を淹れてくれました。さすが執事さん、見事なお点前ですね。

「最初に申し上げておきますが、退去指示は確定です」

 ウル王女は、少し悲しげに話しました。

「どうして!? あたしは出ていかないわよ! 不法退去が問題なら、正式に買い取りの手続きを――」

「あなたたちの違法滞在が、問題なのではありません。強制退去理由は、屋敷の老朽化です」
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