神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

文字の大きさ
上 下
237 / 285
深夜の牛丼は、罪の味

土下座の国王様

しおりを挟む
 ウル王女のお城では、王の間で国王が王妃に土下座していました。

 王妃の横に用意された椅子には、ブスッとした表情のソナエさんが。

 わたしも呼ばれましたが、暴れたら殴っていいと言われていました。

「禁酒中に出歩くなんて、バカじゃないですか! 健康診断で何を言われたのか、今ここでお話してあげましょうか!?」

 そりゃあ、怒りますね。健康のためでしたら。

「だって、ハシオが運営する海の家だぜ? 旨い酒があるに決まってんじゃん! 夏は今しかねえんだ! 旨い酒とつまみなんてあった日には」

 記事によると、『深夜に海の家で、国王らしき人物が巫女と密会!』とすっぱ抜かれてしました。

「それであなたは、黙ってお城を出ていったのですね?」

「うんうん。そのとおり」

 国王は、そう弁解します。

「で、不貞を働こうとしたと」

「とんでもねえ!」

「ですが、こちらの方と、フレンの妹を作ろうと想像したこともないと?」

「当たり前だ! オレが殺されちまう!」

 わたしと牛丼を食べに行ったときと同じことを、国王は言いました。

 どんだけ怖がられてるんですかね、わたしたちは。

「ソナエさま、主人はああ言っていますが、本当にそれ以上のご関係ではないのですね?」

「そうだよ。タダで酒が飲めるって言われたから、ついてきただけだって」

「飲んだお酒のメニューは?」

「たいてい、カクテルだな。あたしはキツイ酒がスキだから、めったにカクテルみたいな甘いのはやらないんだ。スクリュードライバーでさえ、あたしにしたらスポドリだね」

「はい、ありがとうございます」

 ソナエさんに礼を言い、王妃は王に向き直ります。

「あなた、ギルティよ」

 王妃に指摘され、国王がまた土下座をやり直しに。

「女にスクリュードライバーを飲ませるなんて。ヤリチンの手口じゃありませんか」

 仮にも一国のお妃様が、ヤリチンて……。

「誤解だっての! 断じてオレは、やましい理由でソナエを連れ出していない!」

「許してやんなよ。ウルも王妃様も飲めねえっていうから、あたしが呼ばれたんじゃねえか」

「フレンは飲めるじゃないですかっ。行くならフレンと行きなさいよっ。娘なんですから」

 また国王に、王妃は説教をします。たしかに、フレンはシスター・エマに鍛えられてめちゃ飲みます。冷えたエールだけですが。

「オレなんかが誘っても……」

 どんだけ嫌われているんですか、お父さん……。

「そういう不謹慎な行動を取るから、叩かれるのです」

「はい。ごもっともで!」

 王妃の説教に、国王はひれふします。

「それで、深夜に出歩いたのは、ソナエさんとだけではありませんよね?」

「う、それは」

 わたしたちとの牛丼食べ歩きも、バレてるみたいですね……。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

処理中です...