234 / 281
海の家は、罪な家
レンコンチップスは、罪の味
しおりを挟む
カロリーネさんはまず、包丁でレンコンを薄ーく切っていきます。
その後ろでは、油がだんだんと熱を持ち始めていました。
油の中に、さっきスライスしたレンコンを投入します。
カリカリカリという音が、実に食欲を掻き立てますねぇ。
おつまみ用として、レンコンチップスは編み出されたようです。
わたしはポテチはよく食べていますが、レンコンのチップスなんて聞いたことがありません。どういう味なのでしょうか。試してみましょう。
「どうぞ、レンコンのチップスです」
「いただきます」
最初は一枚だけ。
「うん! 罪深い!」
具がレンコンですから、てっきりヘルシーな食べ物だとばかり思っていました。ですが、これは油全開です。やはり油は、油なのですね。
熱した油でコーティングしただけで、こうも罪な味になるとは。味付けも、しおとコショウだけです。なのにこの深み。
ガリ勉優等生と夏休み明けに再会したら、不良になっていたって形容すればいいですかね。ああ、罪深い。
もしくは、クラスをまとめていた生徒会長が、性に奔放なギャルへと変貌を遂げたレベルの驚きですよ。この焦げ加減が、褐色に日焼けしたギャルを思わせます。ああ、罪深い。
油と塩コショウという情熱的な刺激を受けて、レンコンが不良になっちまったい。
「ヘルシーなもんか。こんなのカロリーの化け物だぜ」と、わたしがヤンキーなら言うでしょう。
夏休み明けにウル王女が、「チョリース」とかいいながら教室に入ってくる光景が目に浮かびます。
「ああ、性の悦びを覚えたのだな」と、クラスメイトたちは勘ぐるのですよ。
「なんです?」
ウル王女が、訝ってわたしを見つめます。
「別に何も」
王女の場合は、妄想だけで済むだけまだマシですね。
なんということでしょう。もうレンコンは、更生できません。どんな神々であっても。不良として、完成されています。
責任を取って、受け入れるしか。ああ罪深い。止まりません。この不良は、食べごたえがあります。
悪いことは、おいしいのですね。これが悪の味ですよ。罪深い。
「ごちそうさまでした。カロリーネさんは、このままこちらにお店を持つおつもりで?」
「いえ。これはプレオープンでして」
弟子を雇って、その方に任せるそうで。
「ただ、姫のガードを引退したら、こちらでお世話になろうかと」
「いいですね。応援しますよ」
「ありがとうございます」
カロリーネさんが、頭を下げました。
「ちょっと冗談ではありませんでしてよっ」
ああ、やはりウル王女は納得できませんか。
「そりゃあわたくしだって、魔法は多少使えます。ですが護衛はずっと欲しいですわ」
カロリーネさんに、ずっとそばにいてほしい、って言えばいいじゃないですか。
わたしは、その言葉を飲み込みます。
今日のわたしは、不良なので。
(海の家編 完)
その後ろでは、油がだんだんと熱を持ち始めていました。
油の中に、さっきスライスしたレンコンを投入します。
カリカリカリという音が、実に食欲を掻き立てますねぇ。
おつまみ用として、レンコンチップスは編み出されたようです。
わたしはポテチはよく食べていますが、レンコンのチップスなんて聞いたことがありません。どういう味なのでしょうか。試してみましょう。
「どうぞ、レンコンのチップスです」
「いただきます」
最初は一枚だけ。
「うん! 罪深い!」
具がレンコンですから、てっきりヘルシーな食べ物だとばかり思っていました。ですが、これは油全開です。やはり油は、油なのですね。
熱した油でコーティングしただけで、こうも罪な味になるとは。味付けも、しおとコショウだけです。なのにこの深み。
ガリ勉優等生と夏休み明けに再会したら、不良になっていたって形容すればいいですかね。ああ、罪深い。
もしくは、クラスをまとめていた生徒会長が、性に奔放なギャルへと変貌を遂げたレベルの驚きですよ。この焦げ加減が、褐色に日焼けしたギャルを思わせます。ああ、罪深い。
油と塩コショウという情熱的な刺激を受けて、レンコンが不良になっちまったい。
「ヘルシーなもんか。こんなのカロリーの化け物だぜ」と、わたしがヤンキーなら言うでしょう。
夏休み明けにウル王女が、「チョリース」とかいいながら教室に入ってくる光景が目に浮かびます。
「ああ、性の悦びを覚えたのだな」と、クラスメイトたちは勘ぐるのですよ。
「なんです?」
ウル王女が、訝ってわたしを見つめます。
「別に何も」
王女の場合は、妄想だけで済むだけまだマシですね。
なんということでしょう。もうレンコンは、更生できません。どんな神々であっても。不良として、完成されています。
責任を取って、受け入れるしか。ああ罪深い。止まりません。この不良は、食べごたえがあります。
悪いことは、おいしいのですね。これが悪の味ですよ。罪深い。
「ごちそうさまでした。カロリーネさんは、このままこちらにお店を持つおつもりで?」
「いえ。これはプレオープンでして」
弟子を雇って、その方に任せるそうで。
「ただ、姫のガードを引退したら、こちらでお世話になろうかと」
「いいですね。応援しますよ」
「ありがとうございます」
カロリーネさんが、頭を下げました。
「ちょっと冗談ではありませんでしてよっ」
ああ、やはりウル王女は納得できませんか。
「そりゃあわたくしだって、魔法は多少使えます。ですが護衛はずっと欲しいですわ」
カロリーネさんに、ずっとそばにいてほしい、って言えばいいじゃないですか。
わたしは、その言葉を飲み込みます。
今日のわたしは、不良なので。
(海の家編 完)
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
料理がしたいので、騎士団の任命を受けます!
ハルノ
ファンタジー
過労死した主人公が、異世界に飛ばされてしまいました
。ここは天国か、地獄か。メイド長・ジェミニが丁寧にもてなしてくれたけれども、どうも味覚に違いがあるようです。異世界に飛ばされたとわかり、屋敷の主、領主の元でこの世界のマナーを学びます。
令嬢はお菓子作りを趣味とすると知り、キッチンを借りた女性。元々好きだった料理のスキルを活用して、ジェミニも領主も、料理のおいしさに目覚めました。
そのスキルを生かしたいと、いろいろなことがあってから騎士団の料理係に就職。
ひとり暮らしではなかなか作ることのなかった料理も、大人数の料理を作ることと、満足そうに食べる青年たちの姿に生きがいを感じる日々を送る話。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」を使用しています。
はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる