神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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第四部 シスタークリスと夏    流しそうめんは罪の味

トコロテンとシャインマスカットは、罪の味

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「その。流すデザートとは?」
「まずは、トコロテンだ。流すって言っても、押し出すに近いかな?」

 ソナエさんが寒天を四角い型に入れて、グッと後ろから押し出しました。ガラスの器に、透明なそうめん状の寒天がデロっと載ります。

「ここに、黒蜜をかけるんだ」

 黒蜜とは、黒砂糖を溶かしたものだとか。

「おおお。蠱惑的な色合いですね」
「そうだな。酢じょう油で食ってもうまいが、デザートだから黒蜜にした」
「いただきますね」

 ズズっと食べるデザートなんて、これまた面妖ですね。

 では、トコロテンをすすります。

「あ~っ、これまた罪深うまい!」

 なんの味がしない寒天に、濃厚な黒蜜が合わさって。
 味はゼリーに近いでしょうか。ただ、食感はゼリーとはまた違いますね。
 すすって食べるためか、独特の風味になっています。
 糖分を吸うことによって、甘味の混ざった空気が鼻を抜けていくんでしょう。

「おいしい!」

 子どものサジーナさんには苦手かなと思いましたが、二杯目をいただいていました。これはこれは。好き嫌いがないのは、立派なことです。

「続いては、なにがあるのです?」
「ブドウだ。流しながら冷やす」

 マスカットが、竹から流れてきました。

「ホントはサジーナがトコロテンを食べられなかったら、先に流す予定だったんだよ。でも食えたから後でいいなって」
「こちらも風流ですね」

 コロコロと竹を駆け抜けるマスカットを、お箸でいただく。なんとも珍妙ではありませんか。

「いただきます……ん? 皮をめくれませんっ」
「それ、皮ごと食えるぞ」
「ホントですか? おお、ホントだ。これは罪深うまい」

 これ、ホントにおいしいです! 舌がしびれるほどすごく甘いのに、皮が一気にサッパリな風味へと変えてくれます。皮のシャキシャキした食感も、たまりませんね。

 こんな食べ物があったとは。

「シャインマスカットってんだ。あたしももらいものだから、原産はよく知らないんだが、食ってみたら超うまくてさ。甘いのに、酒に合うんだよ」

 わかります。サクサクした皮のサッパリ感は、お酒向きでしょうね。

 ごちそうさまでした。

「では、我々はいっぱい食べたので、ソナエさんとハシオさんが食べてください」
「おっ、流してくれるか?」
「ええ。おまかせを」

 今度は、わたしがそうめんのザルを持ちます。サジーナさんに、流してもらいましょうかね? ずっとやりたそうにしていましたし。

「あんたに頼んだら、上で全部食われちまうと思って、先に食ってもらったんだ」

 それはいい選択でした。

(流しそうめん編 完)
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