222 / 285
鍋は罪の味 ~打ち上げのすき焼き~
おでんは、罪の味
しおりを挟む
野良犬が遠吠えする路地裏に、ハイエルフが一杯引っ掛けています。おでんを肴にして。
「えらいところにいますね、シスター・エンシェント」
「ちょうどいいところにいましたね。こちらに座りなさいな」
腰を浮かせて、わたしが座るスペースを作ります。
「わたし、お酒は飲めませんよ」
「いいじゃないですか。お説教がしたいわけじゃありませんから」
では遠慮せず、着席しました。
「ノンアルコールのものは?」
「炭酸ならあるよ。砂糖抜きの」
「では、彼女にはそれを。私にはお酒をくださいな」
金属製のグラスを、エンシェントは大将に差し出します。
大将は金属グラスにお酒を入れて、お湯の中へつけました。それで温めるのですね。
わたしには、炭酸がグラスに注がれて出てきました。
「好きなものをお頼みなさい。今日はごちそうしましょう」
それはありがたい。
「大根、たまご、じゃがいも、ひとつずつください」
店主のおじいさんが、オーダーしたものをくれます。
おお、もう大根からして味が染み込んでいました。これは期待できます。
「いただきます……罪深いっ」
アッツアツでホックホクですね。吸い込む息ですら、おダシが染みておいしいです。ここに、辛子をのっけて。ほら、また罪深くなりました。このピリッとしたアクセントが、平凡な大根をドレスアップしたヒロインに仕立てます。
お次は、たまごを。おおうう。罪深い。何かが生まれそうです。たまごに辛子がまたガツンときますよね。
ホクホクのじゃがいもも、たまりません。
お鍋を堪能した後なのに、どうしてこうも入るのでしょう?
「ありがとうございます。ここにはいつもお一人で?」
「パトロールのシメですよ。屋台が出ているときは、入ります」
なんだか、シスター・エンシェントが言うと「味の番人」まで努めていそうですね。ずっとおいしいものを提供しているか、チェックしに来ている感じです。
「まだまだたくさんありますから、お食べなさいな」
もちろん、遠慮はしません。
「こんにゃく、ちくわ、丸天をください」
ホッカホカのこんにゃくが、テーブルに置かれます。
さっそくひとくち。
「おくおく。罪深い!」
グニグニした食感が、最高です。ちゃんと切れ目が入っているのが、うれしいですね。
ちくわも、ダシが染みていて濃厚です。
で、なんといっても丸天ですよ。
「いやあ、罪深い」
ささやくように、言葉が漏れました。
同じ練り物なのに、ちくわとは食感がまったく違います。こちらは、ふわっとしていますよ。上げてある練り物だからでしょうか。多少は油っぽいのですが、スイスイ食べられちゃいます。
「スジ、がんも、ロールキャベツ、ソーセージをください」
またしても、お皿がおでんパーティになりました。
スジ肉ですよ。罪深いですね。おでんの肉と言ったら、スジといっていいでしょう。脂身のトロッとしたところも、繊維質バリバリな肉部分も、どこを食べてもおいしいんです。
続いて、がんもどきを。はい。これはすばらしい。お豆腐ベースだから、もっと淡白な味だろうと思っていました。それがどうですこの自己主張。辛子との相性もバツグンです。
変わり種の、ロールキャベツを行きましょう。
「んっ。罪深ぁい」
なんでしょう。野菜で巻いたシューマイを食べている気分です。これ、すごいおいしい。
最後は、ソーセージをいただきました。あああ、罪深い! おダシがソーセージの裂け目に溶け込んでいて、肉汁とベストマッチですね。
「ごちそうさまでした」
わたしもパトロールしましょうかね。こんなおいしいお料理がいただけるなら。
「あなたが外回りなんてしたら、国じゅうの屋台が店じまいしますよ。空になっちゃって」
心を読まないでくれますか?
「えらいところにいますね、シスター・エンシェント」
「ちょうどいいところにいましたね。こちらに座りなさいな」
腰を浮かせて、わたしが座るスペースを作ります。
「わたし、お酒は飲めませんよ」
「いいじゃないですか。お説教がしたいわけじゃありませんから」
では遠慮せず、着席しました。
「ノンアルコールのものは?」
「炭酸ならあるよ。砂糖抜きの」
「では、彼女にはそれを。私にはお酒をくださいな」
金属製のグラスを、エンシェントは大将に差し出します。
大将は金属グラスにお酒を入れて、お湯の中へつけました。それで温めるのですね。
わたしには、炭酸がグラスに注がれて出てきました。
「好きなものをお頼みなさい。今日はごちそうしましょう」
それはありがたい。
「大根、たまご、じゃがいも、ひとつずつください」
店主のおじいさんが、オーダーしたものをくれます。
おお、もう大根からして味が染み込んでいました。これは期待できます。
「いただきます……罪深いっ」
アッツアツでホックホクですね。吸い込む息ですら、おダシが染みておいしいです。ここに、辛子をのっけて。ほら、また罪深くなりました。このピリッとしたアクセントが、平凡な大根をドレスアップしたヒロインに仕立てます。
お次は、たまごを。おおうう。罪深い。何かが生まれそうです。たまごに辛子がまたガツンときますよね。
ホクホクのじゃがいもも、たまりません。
お鍋を堪能した後なのに、どうしてこうも入るのでしょう?
「ありがとうございます。ここにはいつもお一人で?」
「パトロールのシメですよ。屋台が出ているときは、入ります」
なんだか、シスター・エンシェントが言うと「味の番人」まで努めていそうですね。ずっとおいしいものを提供しているか、チェックしに来ている感じです。
「まだまだたくさんありますから、お食べなさいな」
もちろん、遠慮はしません。
「こんにゃく、ちくわ、丸天をください」
ホッカホカのこんにゃくが、テーブルに置かれます。
さっそくひとくち。
「おくおく。罪深い!」
グニグニした食感が、最高です。ちゃんと切れ目が入っているのが、うれしいですね。
ちくわも、ダシが染みていて濃厚です。
で、なんといっても丸天ですよ。
「いやあ、罪深い」
ささやくように、言葉が漏れました。
同じ練り物なのに、ちくわとは食感がまったく違います。こちらは、ふわっとしていますよ。上げてある練り物だからでしょうか。多少は油っぽいのですが、スイスイ食べられちゃいます。
「スジ、がんも、ロールキャベツ、ソーセージをください」
またしても、お皿がおでんパーティになりました。
スジ肉ですよ。罪深いですね。おでんの肉と言ったら、スジといっていいでしょう。脂身のトロッとしたところも、繊維質バリバリな肉部分も、どこを食べてもおいしいんです。
続いて、がんもどきを。はい。これはすばらしい。お豆腐ベースだから、もっと淡白な味だろうと思っていました。それがどうですこの自己主張。辛子との相性もバツグンです。
変わり種の、ロールキャベツを行きましょう。
「んっ。罪深ぁい」
なんでしょう。野菜で巻いたシューマイを食べている気分です。これ、すごいおいしい。
最後は、ソーセージをいただきました。あああ、罪深い! おダシがソーセージの裂け目に溶け込んでいて、肉汁とベストマッチですね。
「ごちそうさまでした」
わたしもパトロールしましょうかね。こんなおいしいお料理がいただけるなら。
「あなたが外回りなんてしたら、国じゅうの屋台が店じまいしますよ。空になっちゃって」
心を読まないでくれますか?
0
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。
棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。
これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。
それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ・21時更新・エブリスタ投
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
トレジャーキッズ
著:剣 恵真/絵・編集:猫宮 りぃ
ファンタジー
だらだらと自堕落な生活から抜け出すきっかけをどこかで望んでいた。
ただ、それだけだったのに……
自分の存在は何のため?
何のために生きているのか?
世界はどうしてこんなにも理不尽にあふれているのか?
苦悩する子どもと親の物語です。
非日常を体験した、命のやり取りをした、乗り越える困難の中で築かれてゆくのは友情と絆。
まだ見えない『何か』が大切なものだと気づけた。
※更新は週一・日曜日公開を目標
何かございましたら、Twitterにて問い合わせください。
【1】のみ自費出版販売をしております。
追加で修正しているため、全く同じではありません。
できるだけ剣恵真さんの原文と世界観を崩さないように直しておりますが、もう少しうまいやり方があるようでしたら教えていただけるとありがたいです。(担当:猫宮りぃ)

夫が不良債権のようです〜愛して尽して失った。わたしの末路〜
帆々
恋愛
リゼは王都で工房を経営する若き経営者だ。日々忙しく過ごしている。
売り上げ以上に気にかかるのは、夫キッドの健康だった。病弱な彼には主夫業を頼むが、無理はさせられない。その分リゼが頑張って生活をカバーしてきた。二人の暮らしでそれが彼女の幸せだった。
「ご主人を甘やかせ過ぎでは?」
周囲の声もある。でも何がいけないのか? キッドのことはもちろん自分が一番わかっている。彼の家蔵の問題もあるが、大丈夫。それが結婚というものだから。リゼは信じている。
彼が体調を崩したことがきっかけで、キッドの世話を頼む看護人を雇い入れことにした。フランという女性で、キッドとは話も合い和気藹々とした様子だ。気の利く彼女にリゼも負担が減りほっと安堵していた。
しかし、自宅の上の階に住む老婦人が忠告する。キッドとフランの仲が普通ではないようだ、と。更に疑いのない真実を突きつけられてしまう。衝撃を受けてうろたえるリゼに老婦人が親切に諭す。
「お別れなさい。あなたのお父様も結婚に反対だった。あなたに相応しくない人よ」
そこへ偶然、老婦人の甥という紳士が現れた。
「エル、リゼを助けてあげて頂戴」
リゼはエルと共にキッドとフランに対峙することになる。そこでは夫の信じられない企みが発覚して———————。
『愛して尽して、失って。ゼロから始めるしあわせ探し』から改題しました。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です
詳細説明
生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。
そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。
そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。
しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。
赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。
色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。
家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。
※小説家になろう様でも投稿しております

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

異世界母さん〜母は最強(つよし)!肝っ玉母さんの異世界で世直し無双する〜
トンコツマンビックボディ
ファンタジー
馬場香澄49歳 専業主婦
ある日、香澄は買い物をしようと町まで出向いたんだが
突然現れた暴走トラック(高齢者ドライバー)から子供を助けようとして
子供の身代わりに車にはねられてしまう

人間だった竜人の番は、生まれ変わってエルフになったので、大好きなお父さんと暮らします
吉野屋
ファンタジー
竜人国の皇太子の番として預言者に予言され妃になるため城に入った人間のシロアナだが、皇太子は人間の番と言う事実が受け入れられず、超塩対応だった。シロアナはそれならば人間の国へ帰りたいと思っていたが、イラつく皇太子の不手際のせいであっさり死んでしまった(人は竜人に比べてとても脆い存在)。
魂に傷を負った娘は、エルフの娘に生まれ変わる。
次の身体の父親はエルフの最高位の大魔術師を退き、妻が命と引き換えに生んだ娘と森で暮らす事を選んだ男だった。
【完結したお話を現在改稿中です。改稿しだい順次お話しをUPして行きます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる