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フードテーマパークは、罪にあふれている ~フードテーマパークで食ざんまい~

焼きマシュマロは、罪の味

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 実は焼きマシュマロ、BBQのときも出たのです。が、全員がダメにしてしまいました。焦げ付くか、溶けてしまって。

 ソナエさんの提案で、「このたこ焼き器で焼いてみてはどうか」となりました。

「ひとまず先輩、食べてみてください」
「ええ。いただきましょう」

 こんがり、ちょうどいい焼き色が付いています。これは期待ができますね。

「いただきます」

 おっほ! 

「これは最高に罪深うまい!」

 フワフワのマシュマロが、こうもトロトロになりますか。焼くとこうなるんですね。甘みも増して、おいしくなっていました。焦げ目も、アメのように甘くなっています。もっと苦いかと思いましたが。

「あと、こういった食べ方もあるそうで」

 子どもたちが持っているのは、塩味のスナックです。わが教会での定番お菓子ですね。わたしも、なにも手持ちのお菓子がないときなどは食べます。

「これに挟んで食べると美味しいって」
「なるほど。試してみますね」

 おおおおおおおっ! 罪深うまい!

 サクッとした歯ごたえの後に、ふわっという食感が続きます。外の塩加減と、マシュマロの甘さが最高にマッチしていますよ。

 いつもは口さみしいときに食べる味気ないお茶のお供が、こうも豹変しますか。

 まるで、都会から垢抜けて帰ってきた田舎娘みたいですね。野暮ったさが消えて、セクシーさまで感じますよ。

「ああ、おいしいですね」
「チョコをかけても、さらにおいしくなりますよ」

 まあまあ。ただでさえおいしいのに、これ以上ぜいたくをしたら。

 うん、罪深うまいですね。

 チョコってだけで、もうおいしいとわかりますよ。こんな煩悩の塊なんてトロリとかけたら、そりゃあ美味に決まっています。

 たこ焼き器って万能ですね。こんなおいしいお菓子まで作れるなんて。

 タコ焼きも楽しかったですが、今日一番盛り上がったのはマシュマロでしょう。一等賞です。

 たこ焼き器に、新たな可能性を見出した一日でした。



「今日は、ありがとうございます」

 園児たちが帰った後、わたしは教会の食堂でシスター・エンシェントと二人きりになりました。いわゆる「サシ飲み」というやつです。

 わたしは成人していますが、身体がお酒を受け付けません。だから、グレープフルーツのジュースで付き合います。

「お酒をたしなみもしない辺りは、初代と同じですね。初代クリスも、グレープフルーツのジュースを飲んでいましたよ」

 東洋の地酒をグッとあおりながら、エンシェントは過去を振り返りました。

「何年前の話をなさっているのです? 千年以上前のお話でしょう?」
「過去からずっと、クレイマー一家を見てきましたが、あなたが一番初代と似ていますね」

 頬をわずかに染めながら、エンシェントはお酒を楽しんでいます。

 エンシェントのこんな顔は、初めて見ますねぇ。

「ほんとに、姿かたちがそっくりで。あなたを最初に見たときは、驚いてしまいましたよ」
「そんなに、わたしって初代とそっくりなんですね?」
「ええ。話し方はクレイマー卿にそっくりですが。初代クレイマー卿! あの人は昔からヘタレで、クリス・ターンブルと釣り合うのかしらとやきもきしたものですよ!」

 盃をカンとテーブルに置いて、エンシェントがクダを巻きます。ホント、どうしちゃったんですかねえ。

「最期まで、クリスは姉さん女房でした。かかあ天下というのですかね? あんな性格でよく子供を育てることができたなと、今でも不思議に思っていますよ」

 ニコニコと笑いながら、エンシェントはそのまま寝落ちしてしまいました。

「え、エンシェント?」

 珍しいですね。どこか悪いんですかね?
 もう千年以上は生きていますからね、この人は。

 ですが、なんだかすごく幸せそうな寝顔なのです。

 そういえば、こんなセリフがありましたね。

「ゆっくり休みな、イネス」

 そう告げて、わたしはそっとエンシェントに毛布をかけてあげました。

(フードテーマパーク編 完)
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