神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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オトナの女がお子様ランチを食べるのは、罪ですか? ~ファミレスのエビフライ定食~

ミックスフライは、罪の味

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 まずわたしは、ミックスフライの香りを堪能します。これだけで、ご飯が進みそうですね。

 食べなくても、この尊さはわかります。茶色は正義ですから。尊みがすごい。

 最初は、定番のエビフライから。大きいですねぇ。こんなエビが、我が国の海から穫れるんですか。

 このプリプリのたくましさ。タルタルをドロッと垂らして、いただきましょう。

「はい罪深うまい。もう罪深うまい。実に茶色とうとい」

 衣がサクサクで、エビの弾力がアゴを押し返してきます。口の中で、エビが弾んでますよ。

 タルタルの酸味と、エビの旨味が合わさって最強になりました。

 これは、奇跡的な味わいです。こんな世界があったとは。

「うまいっすか? ここのエビフライは、特にデカイエビを仕入れているそうなんすよ」
「すごいです。これだけで十分、この店のポテンシャルがわかりました」
「これが優勝ってやつなんすよ」

 ハシオさんが、ジョッキでビールをいただいています。これはビールに合うでしょう。

 サジーナさんもハシオさんをマネて、「かーっ」と、りんごジュースを一気に煽りました。

 わたしも、ジンジャーエールをいただきましょうかね。かーっと。

 三人とも、ドリンクをおかわりしました。

 お次は、アジフライです。

「はふはふっ。これも、茶色とうとい」

 サクッとした歯ごたえの後、柔らかい白身が続きました。
 こちらは弾力ではなく、ふわふわ感が押し寄せてきますね。
 見た目は脂身が少ないはずなのに、すごい味の濃さです。

 タルタルとの相性も抜群ですね。
 
 とはいえここは、おしょう油なんてどうでしょう?
 お魚と言えば、しょう油って感じですので。

「ああもう、大正解」

 実に罪深うまい。しょう油の濃さと、アジの濃厚さがマッチしています。

 フライだからソースも合ったでしょう。とはいえここは、魚を立てました。

 オニオンリングも、忘れてはいけません。こんなの、絶対おいしいでしょう。人にとってはサイドメニューでしょうが、わたしにとっては天使の輪ですよ。

「……これは、マジ天使ですね」

 天使を食べています。すばらしい。これは罪深うまさで昇天しちゃいますよ。シャクシャクで、ジューシーで。天使ってこんな味がするんですね。

 イカフライも、いただきます。ええ、罪深うまいですとも。引き締まったイカが、衣をまとってさらに味わいを増していますね。噛めば噛むほど、味が出てきます。

 はああ、幸せですね。こんな夕飯にありつけるなんて。

「シスターどうぞ」

 サジーナさんが、パスタをくださいました。オムライスも半分くれます。

「エビフライがほしい」

 二本あるうちの一本をいただけないかと、交渉を申し出てきました。

 そうですね。わたしの本来の目的は、お子様ランチでしたよ。これは、食べる機会に恵まれたとらえましょう。

「どうもありがとうございます、サジーナさん。では」

 エビフライを、サジーナさんのお皿に移します。タルタルもおつけしましょう。

「ありがとう」

 おかずとエビフライを、シェアします。

 パスタをいただきますね。

「おお、これは罪深うまい」

 甘い味です。
 こういったパスタは、酸味が先にくると思っていました。
 ところが、このパスタはなんでしょう?
 甘みが先に来ました。それでいて、ちっともクドさがないです。
 味に飽きが来ないというか。
 風味にケチャップ独特のパンチがない分、大量に入りそうですね。
 
 なるほど、こうやって味の工夫をしていると。ほほう。

 では、オムライスの方へ。これも罪深うまい。細かく切ったチキンの歯ごたえが、満点ですね。卵もフワッフワで、優しい味です。

 これで庶民の味と名乗るとは、ファミレスは侮れません。

「おまたせしました。デザートのプリンです」

 硬めのプリンの上には、生クリームが載っているではありませんか。

 これは、罪の予感がしますよ。
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